能力があるなら活用しなきゃ

「さ、てと」

方針が決まったらまずは腹ごしらえである。幸いにして、食べ物には困りそうにない。何しろ360°全てが食べ物の山なのだから。

「食い溜め様様。食べまくるとしますかねー」

自身の降り立った地面に口をつけ、無心にかじり取っては飲み込む。

機械的なまでにただただその作業を繰り返す。

「それにしたって、落ち葉がこんなに旨いなんてな…」

熟成された、芳醇な森の香りが全身を包み込むような風味。

シャリシャリと心地のいい硬さと食感。表面の水気が涼やかさを感じさせつつも、

喉を通り腹に入ると仄かな温もりを与えてくれるようで、食えば食うほどに心身を満たしてくれるのだ。

「次 人に転生でもして金に困ったら、落ち葉を食うのもありな気がするな」

むろん味覚は違うだろうが、この記憶があればおいしく食べられるのではないだろうか。

「まだ食えるな…これは…」

しかし、である。土壌生物界。それは魔窟。一説によると、筆箱一個分ほどの面積の土の中には数百の小生物が居るともいわれる世界。平和な時間は長続きしないのである。

「うぉ!?」

全身がピリッと痺れ、害意を感知する。まず間違いなく捕食者であろう。認識と共に足元を強く蹴り、宙に浮きつつ、飛び出てきた相手を同定してみる。

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ケカニムシ:全身に長い毛の生えたカニムシ。その毛によって微細な振動から獲物を感知、察知し、俊敏な動きで狩る。また、フットワークも軽いため、優秀なハンターといえる。牙には弱い神経毒が含まれる上に その毛にも僅かだが麻痺毒が含まれる。その為、その毛を罠などに利用する生物も存在する。

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強くないだろうか。いや、こいつ自体はまだいい。問題なのは、最後の一文である。

罠はまずい。何がまずいって、虫の知らせに頼れないのだ。

そこに、ただあるだけ。気づかず触れて、痺れて、そこで初めて敵意がやってくる。

これでは、運次第で生きることになってしまう。運者生存なんて、当人からすれば知ったことではない。

「まてよ? 運者生存… 進化で麻痺から逃れる術があるんじゃないか?」

ここに捕食者がいるのだから、当然被食者だっているはずだ。

というか、実際ここに被食者がいるわけだし。 そして、食うものがいるなら、食われるものもいる。それは、いたちごっこながらも対抗策を練り上げたものがいることを意味していた。

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土の中で、俺は跳ぶ 竹海 伸空 @nm0809

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