KAC感想文

石束

「KAC」カクヨム3周年記念選手権~Kakuyomu 3rd Anniversary Championship~個人的振り返り

「カクヨム3周年記念選手権~Kakuyomu 3rd Anniversary Championship~」

 KACを振り返るエッセイです。


 ほかの方にならって、自作を語ろうかと思ったのですが、拙作は再建中のためとてもお見せできるものではなく。それでも何か語りたいなと思ったところ、カクヨムに投稿活動中の先輩諸兄諸姉の作品を読ませていただいて、あちこちに応援メッセージやレビューを残してきたことを思い出しました。なんだか、感想を書く喜びに突然目覚めてしまったのか、後半はもうほとんどレビューを書いていた気すらします。メッセージやレビューを書くのが、本当に楽しかったのです。


 ……イベント終わって、一時の熱狂とか発狂から醒めた後、家出していた羞恥心が土産を持って帰ってきたため、しばらく悶えておりましたが。

 

 石束の奇行はともかく、読ませていただいた作品はそれぞれ本当におもしろかったので、特に印象に残った作品の感想を残しておきたいと考えました。

 ご縁あって、お立ち寄りくださった皆様。よければ、リンクを辿ってそれぞれのページを訪れてみてください。好みは違うものですから絶対とは言いえませんが、少なくとも石束はとても楽しめた作品ばかりです。


 イベント以外の短編やエッセイ、長編についてはまた別に機会を設けたいと思います。


 作家様方には、勝手にお名前を拝借することになります。通知の範囲、紹介の対象を相互フォローの方に限定させていただき、投稿通知をもってお知らせに代えさせていただきます。不都合不利益があると感じられた記事つきましては、メッセージにてお知らせいただければ可能な限り速やかに、当該紹介項目を削除いたします。削除結果についてご納得いただけたなら、メッセージを削除ください。


以下、順不同にて、失礼いたします。


 ◇◇◇


2番までしか結果が出せない人の末路/ ひぐらし@小説書くセミ 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888779875


 機能の使い方もわからないまま、初めて応援コメントを書かせていただいた作品。


 刺激的な、あるいはネガティブなタイトルに、かなり用心、あるいは覚悟をしてページを開いた記憶がありますが、完全に予想を裏切られました。読後、いろんな感慨が残りましたが、もちろん不快なものはひとつもなく。

 ちゃんと、幸せな読後感でした。末恐ろしい。


「もっと他のお話も読んでみよう」と思ったきっかけ。「はじまりの一篇」です。



ママ/ 陽向心音 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888900251


「ああ! そーゆーことかあ」とモニターの前で声を漏らしてしまいました(笑

 ほっこりかと思いきや、わずかに感じる違和感。サスペンスともホラーとも言い難いラスト。振り回された感が心地よい一篇でした。


 やさしく温かな言い回しにほっこりしていたら、罠にはまりまして。他のお話を読むときも少し構えてたりしましたが(笑、このお話だけイベント限定のアサシンスタイルだったらしく、他は温かいお話が多かったです。



走れメロス 短距離走編/ 和希 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888913803


「あーもう。天才。こんなん笑うわー」と、モニタの前で素に戻りました……って、またかよ、自分。もう人のいるところでカクヨムのページめくれません(笑 

 物凄く密度の濃い「三分間」。三分という時間を表現する方法はほかにもあると思いますが、これは「三分間にこんなに詰め込みました!」タイプでした。であると同時に「息継ぎなどゆるさぬ。全力疾走でついてこい」という話でもありました。

 もう、5秒に一度笑うポイントがあるんです。止まらないわ。


 和希さんの作品はKACでも沢山楽しませていただきましたが、どれか一つを選ぶとしたら、石束の一番はこれです。素材選びから料理の仕方まで、スキがない。文章を目にした瞬間に映像を結ばせて作品世界へ引き込んでくる。

 そして、なにより描き出された、その『世界』がすばらしい。読者に「こんな学校なら、もう一度、学生をやってもいい」と思わせる。いや、いまリアルで学生をやっている人がうっかり読んだら、「俺が知ってる学校と違う」などとダメージを受けるんじゃないかと心配したくなるくらいの楽しさです。

 さすが学園物の名手。

 ほんと、こんなお話を書いてみたい。



ヒューマノイドは、お花畑の夢を見る/ 犬井縫 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888909366


「犬井さんの素直にまっすぐくる話が好きです」

「直球は難しいけど、ストライク入ったのならよかった」


という会話をコメント欄でしたのは、どの話だったか……野球脳で恐縮ですが、「まっすぐ」は素直や単純とイコールではありません。どんなテーマよりも読み手が結末を予想しうるお話だからこそ、まっすぐでストライクを取るなら相応の技術がいる。でもこの人はまっすな話を書く時はいっそう「技術」を感じさせない。この話も「うまいなあ」じゃなく「いい話だなあ」という素直で明るい感興だけが、残る。

 思わず、イベント期間中に書いた中で、一二を争うくらい恥ずかしいレビューを残してしまって、あとで羞恥に悶えました。


 ……いえ、恥ずかしいレビューは他にも、いっぱいあるのですが。



おめでとうございます、あなたは……/ 水沢ながる 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889020257


 SFという言葉は意外に定義があやふやです。「サイエンス・フィクション」ではなく、「すこし、ふしぎ」なノリで、人の常識や思考をダイレクトに揺さぶってくる小説も多い。星新一のあと日本SFをけん引した小松左京、筒井康隆、眉村卓といった黎明期の大家たちは、長編の傑作を残す一方で短編の名手でもありました。今あらためて、この人たちの短編を読むと

「さあて、どうやって読者を引きずり回してくれようか」

なんて、挑戦的な緊張感が漂っているのを感じます。

 今回のイベントでカクヨムにはたくさん短編の名手がいると知りました。その中で、恐らくは計画的に周到に丁寧に読者の視線や思考を操ろうとしていると感じたのが、水沢ながるさんのこの一篇でした。

 まずストイックな作風がSF・ミステリー・ホラーと相性がいい。

 無駄を削り落とした構成と文章。いくつか作品を読んだ後は「だ、だまされるもんか」と身構えて読みに行くようになったり(笑 でも、行くたびにもてあそばれるんです。あれです。眠狂四郎が刀を回し始めて、突っ込んだらだめだとわかってるのに、吸い込まれるように切り掛かってしまう感じ(チャンバラ脳)

 すごい書き手というのは、いるものだと感じました。



クトゥルフへの掛け声 (The Karate of Cthulhu)/ 梧桐 彰 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884589197


 さて。水沢ながるさんが「眠狂四郎」なら、梧桐 彰さんは「対人間用のナタもって爆笑しながら走ってくる前田慶次」です(怖いわ) 骨太で漢で筋肉で剛腕、なのに器用で繊細。これが矛盾してない。そして、本作はパロディですが「妖神グルメ」(菊池秀行作/The Cthulhu Mythos Files2)のように、クトゥルフのパロディは登場人物が真剣であればあるほど面白い。勿論この話の登場人物も全部もう変なレベルで真剣なんです。そこをわかってくれる人がこの世に他にもいたとわかっただけで、石束がどんなうれしかったか(笑 あまつさえそれで短編を書いてくれるとかもう! とりあえずラヴクラフト原理主義者かダーレス以降許容派かを確かめておかねばと、思いました。

 なお、石束のレビューはドイツの思想家、フリードリヒ・ニーチェの名言の本歌取りであって、本来クトゥルフとは関係ないのです。ただ死ぬほど相性がいいのでクトゥルフ出典みたいな扱いをされて、いわば「ネット・ミーム」化してしまった一文です。そういう意味ではまた誤解を広めてしまったことになりますが、空手がテーマだ気づいた時点で書きたい気持ちが名状しがたく。じゃなくて止み難く。……その内、裾がほつれた空手道着をまとい色の抜けた黒帯を締めた筋骨隆々たる体躯かつ白髭の、「ニーチェ館長」が枕元に立ちそうな気がします。ごめんなさい。押忍。



【完結】猛禽類にまつわるエトセトラ/ 宝希☆/無空★ 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888743308


 フクロウをマスコットとか「梟雄」などの比喩と捉えていた時に「そうだ。コイツは猛禽類でいきものだ」と思い出せてくれたエッセイ。

 エッセイは現実ばかりとはかぎりませんが、たとえネットや二次元の話であろうと、自分を削って出汁とってつくった味噌汁のような感じなのは同じ。自分がいやおうなしにあふれるエッセイはしんどいジャンルです。わたしなんかは、そのしんどさから逃げて当たり障りのない文章になったりします。

 もちろんその一方で、自分の中にあふれかえる気持ちを吐き出したいこともあるし、だからこそ共感を呼べたりもする。それだけに架空の物語を書くよりもずっと、自らを厳しくコントロールしなくてはならない。そんな中でこの人のお話は、生々しさも辛さも逃げずに伝えて、しかも芯がブレないように抑制してる。


 よいエッセイを読ませていただきました。



ありがとう禁止令、おめでとう爆弾/ 龍輪龍 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889014700


『紙神の集い』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054888859283)とも、一部設定を共有するシリーズものの一つです。まずその「設定」のアイディアが「よくぞ思いついた!」というしかないくらいに、とにかく悪魔的に万能。これを使用して、目の前にある「当たり前の風景から得た着想」を、きっちりエンターテイメントに昇華する方程式を確立。その結果、生み出される話がどれもこれも安定して面白いということになった、驚異のオムニバス『紙神シリーズ』(勝手に命名)。「ルール」「3分間」「三周年」そしてはじまりの「紙ペン」。メッセージ性、短編としての完成度、オチの強烈さでこれを例に挙げましたがほんとにこのシリーズは全部面白かった。登場する女の子がどれもかっこかわいく場合よってエロい。もう、全部このアイディアで攻めてもいいだろうに、紙神を封印して書いた他のお題でも面白いのだから手が付けられません(笑)特に最後の「カタリ&バーグ」は、面白いばかりか泣かせてくるし。

 おかげさまで楽しいイベントでした。ありがとうございました。

 ああ、この「ありがとう」は、たとえペナルティがあるとしても伝えたい「ありがとう」……って、ああ、3回もいってしまった。天罰こわい(笑 



翼には心を乗せて/ マスケッター 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889038585


 こちらのお話に書かせていただいたレビューこそ、自分史上もっとも恥ずかしいレビューの一つ。(恥ずかしいといえば、それはもう書いたレビュー全部恥ずかしいのですが)

 ロアーリング・トゥウェンティーズ――『轟音の1920年代』を駆け抜けたある英雄の終わり。(日本語訳だと「狂乱の20年代」「狂騒の――」と書かれたりするコレですが、直訳だと意外に飛行機関係と相性が良くなるから不思議)

「リンドバーグ」という言葉から、誰もが夢想するかの『英雄』。その『彼』とカクヨムの看板娘、支援AIバーグさんとのつかの間の逢瀬を描いた一篇。

 わたしはカクヨム復帰一か月ですし、イベント中に書かれたお話で読めなかったものの方が多いですから、同じテーマのお話も探せば、他に見つかるかもしれませんが、それでも。

 これをカクヨムというフロンティアを誰よりも駆け回っているマスケッターさんが

「こういうのもアリじゃないかな?」「やっぱりこの二人は逢わせておかないとね」

という感じで書いてくれたことには、意味があるんじゃないかと思います。

 書いてくれたことで「こんな世界を自分も書いてみたい」と、思う人がいっぱい生まれたと思うのです。

 かくいう、私だってその一人。そして他にもいると信じてる。


 これがきっかけで、飛行機野郎の時代がカクヨムにも訪れるといいのに(祈願



魔法使いの羽ペンは奇跡を綴る(KAC1~10まとめ)/ 水城しほ 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889037843


 わたしは1日目の「フクロウ」で遅刻しまして、2日目から10日目までのお題で続きものにして、最終的に完結させたい、と目論んでいました。が、それは並大抵ではなく、結局胴体着陸することになりまして、今、撃墜されたポルコロッソよろしく応急修理しているわけです。

 いったい――同じキャラと世界観で各48時間、計10日分のお題を書ききって物語を完結させることは、可能なのか不可能なのか?

 イベントの評価には全く関係しないこの試みに挑んだマゾ……じゃなくて冒険者は私の他にも大勢いらっしゃいまして。

 花カナウ(ただふみ)様(https://kakuyomu.jp/users/tadafumi)主催の

「カクヨム3周年記念選手権の参加作品を短編連作(オムニバス)にしようと考えている人の集い」(https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054888836173

なる自主企画が立ち上がっていました。で、そこで、とある作品を見て、さらにそれを1話目までさかのぼった時、またしてもモニターに向かって私は、


「何故この時点で【ペン】があるううううっ!」


などと、主人公に料理バトルで負けたかませ料理人っぽい叫びを上げました(時に平成31年4月3日20時40分頃)

 まあ、第1話目に4日目のお題である「紙ペン」を消化しているのは、百歩譲って偶然としてもいい。しかし「二話目までに提示された基本設定が、関連するお題が出るたびに伏線として回収される」のをみてさすがに鳥肌が立ちました。計算か予測か、あるいはその両方が必要ないほどの準備、あるいは強運か。「カクヨムにはとんでもないことをやる人がいる」と呆然としました。

 あれです。「雀荘でぼやきながら哭きの竜ごっこをしていたら、対面(トイメン)に座ったのが坊や哲だった」みたいな感じ(2020まだ見に行ってない)——ふっ。オレ、背中がすすけてるぜ。

 結局、水城しほさんの連作短編『魔法使いの羽ペンは奇跡を綴る』は、全十話できっちり完結しました。全部読み終わったら、上中下全三冊のシリーズを読んだくらいの満足感。最後に学校や都市を巻き込んだ陰謀や戦いがあったら、本気でそれくらいになりそうなシリーズでした。ほんとに……ほんとに、ああ……


 カクヨム、こわい。



湖/永人れいこ 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889007453


この小説を人に薦める時に

「読み終えた後にやってくるこの感覚を、わかってもらえる人がいるだろうか?」

と、まず考えます。

 湖のほとりに佇む時に感じる、あの巨大な水の塊がどこまでもどこまでも続いているという、冷たい存在感。

 とある湖の側に住んでいる私には身近なものですが、万人に共有してもらえる感覚とは思えません。海の側に住んでいる人にも、山の側に住んでいる人にも、もしかしたらわかってもらえないんじゃないか、とそんなことを考えました。

 それで、ふと気づくわけです。

 みんなにわかってもらえないかもしれないけれど、作者さんも意図してないけれど、自分だけには確かに響くお話が、この世には存在している――。

 そんなことを思った一篇でした。



 魔剣の勇者/ ユメしばい 様

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889027763


 作品の世界観がいい……と、伝えるのは簡単です。

 それが応援メッセージでも、レビューでも。

 でも、どんな風にいいのかを伝えるのは難しい。なにせ「居心地がいい」というのは感覚であって、理論ではありません。説明なんてできないのです。

 冬のコタツが尊いのは、暖かいからでも、ミカンがあるからでも、外が寒いからでもありません。それがコタツだからです!(なんのこっちゃ)

 それでも、ユメしばいさんの作品世界のどこが好きなのかと問われたなら、それはもう「開放感」と答えます。

 どこまでもどこまでも続く草原と青空の世界に、窓から飛び出すような世界です。

 読むたびに「遊びに行こうぜ!」と誘われている気がします。日常を放り出して、剣とか槍をもって一緒に冒険に行きたくなる。作品世界に飛び込みたくなる。そんな楽しいお話ばかりです。


 ともあれ。ユメしばいさんの「魔剣の勇者」を石束がどれだけ好きかについては、応援メッセージとレビューでくどいまでに伝えきってしまったので、今のところ私の中には何も残っていません。

 でも、あえて、ただ、ひとこと。


 続きを、ください(吐血)



 ◇◇◇


 また、書き足すことがあるかもしれませんが、とりあえずここまで。


 本当にたのしかった。ありがとうございました。

 また、イベントがあったら、読みに回りたいと思います。


 ……今回みたいに、はっちゃけないように注意して。

 

おわり

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