十. エピローグ
割れんばかりの拍手に迎えられて、王冠を被ったエルドラフとカトリーヌが城から現れた。
ニコラスも2人の腕を取って嬉しそうに笑みを浮かべている。
3人が橋を渡って城門の前にやってくると、群衆から再び歓声が起こり、花や紙吹雪などが舞った。
群衆の中にはドレークと、その孫ケイナも居た。
2人寄り添って嬉しそうに顔を見合わせている。
水の長ラルフは砂の村の長と並んで立っていた。
ラルフが手を振り、それに気づいたニコラスも満面の笑みで手を振り返した。
手を振り返しながらも目線は落ち着かなく群衆の間を彷徨っていた。
「ニコラス!」
自分を呼ぶ声にニコラスは嬉しそうに走り出した。
「コリン!」
ニコラスは黒髪の少年に駆け寄った。
コリンに肘で小突かれたニコラスは照れ臭そうに頭を掻いて笑い声を上げた。
スラウは城のバルコニーからその様子を見下ろしていた。
肘をついて身を乗り出していた彼女にライオネルが静かに近づいた。
「……やっぱり、すっかり忘れられると寂しいね」
言葉とは裏腹にスラウの顔には穏やかな笑顔が浮かんでいる。
「でも私たちは単に忘れられるんじゃない。契約主が私たちの助けを必要としなくなったから、記憶が自ずと消えていく。そういうことなんでしょ?」
返事が無いので心配になって振り返るとライオネルは目を細めてこちらを見つめていた。
「……ライオネル?」
彼はふと我に返ると首を振りスラウの隣に立って、お祭り騒ぎの人々を見下ろした。
「いや、何でもない」
「……?」
スラウが首を傾げた時、フォセがバルコニーに走り込んできた。手には通信機が握られている。
「スラウ、連絡塔から! 任務完了の報告をお願いしますって」
「うん……」
スラウは名残惜しそうに群衆を見下ろしていたが、くるりと背を向けた。
「こちら光の天上人スラウです。任務完了しました」
『了解。これより、契約主エルドラフ・ロイナード及びカトリーヌ・ロイナードとの契約期間を終了します』
返ってきた声にスラウは静かに頷いた。
「……はい」
その時、下からの風がバルコニーの上にも小さな桃色や黄色の花びらを運んできた。
それを見たスラウは微笑むと指を振った。
「さ、帰ろうか!」
誰も居ないバルコニーで淡い橙色の光に包まれた花びらがゆっくりと舞っていた。
天上人 第二章 昇格試験 @oniki-alpha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます