Memory of a Cerafim... ー或る熾天使の記憶ー

不和 龍志

第1話

皆さんは神様と戦い天界から堕とされ堕天使になったといわれている

そんな光の熾天使のお話を知ってますか?


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


その天使は、元は神様の右に座す光り輝く熾天使でした。


ある時


神様が人をお創りになってその下に付くことを天使達に命じた時に、

不服とした天使達の代表として神様に抗議をしました。


その抗議が神様に受け入れて貰えず、

天使達の叛乱にまで発展した際には叛乱側の代表として闘いました。


天使抗争と云われるその戦いの中で、

天使長と四大天使率いる神様軍の力の前に

叛乱天使軍は敗れます。


そして、

この光の熾天使もまた天使長の力の前に

敗北を喫して天界より追われ、

地獄の最下層へと堕とされました。


共に自分達の正しさを信じて闘った天使達もまた堕とされ、

皆、悪魔となりました。


その後、唯一神により悪魔へと貶められた他宗教の神々をも治め、

その光の熾天使は最強の魔神として畏れられる存在となりました。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


唯一神教や救世主教の信者さん達に伝わるお話では、だいたいこんな筋書きだったでしょうか……。


このお話には、後の世の教会や信者さん達に都合良く脚色されているところもあって、矛盾点が幾つか見られます。


一つ、

そもそも従順で絶対服従するように創られた天の御使い達が、神様に逆らうことを考えるとは思えません。


二つめ、

神様が、ご自身と同等か次ぐ力をお与えになったこの光の熾天使が、天使長とはいえたかだか天使階級八位の者に敗れるとは考えにくいのです。


そして最後に、

全知全能の神様が、叛乱が実行されるまで天使達の謀反に気付かないわけがない筈です……。



いかがでしょう?

後付けで件の熾天使の性質が傲慢にされたり、天使長と四大天使も熾天使だったことにされたりと、帳尻合わせの解釈が行われましたが、神様の絶対性と天使の絶対服従原理とは矛盾したままなのです。




……では、本当のところは……いったいどうだったのか?

というのが、このお話の本題です。


信じるかどうかは皆さんのご判断にお任せしますが、興味があれば読んでみてくださいね。



ではお話しします……




── 少し話が外れますが、まずこの宇宙の成り立ちについてお話しします。


一つの宇宙次元に、只独りの創造主たる神様Administrator……

私達の宇宙は勿論、並行に存在する外宇宙も皆そうやって出来ています、例外なく。


そして、私達が現実に生きている世界線のあるこの宇宙も、そうやって出来てます。

そういった宇宙次元は幾つもいくつも並行に存在しています。


当然、

他の宇宙には他の神様がいます。


更に、

一つの宇宙次元の中には、幾つもの精神世界の次元が存在し、その中にも幾つも神的存在があります。


宇宙を創られた創造主を唯一絶対の神様とするか、

多くの神々が世界を創ったとするかは、

実は視点の違いによって違う次元の神を見たことで生じた齟齬なのです。

どちらも、間違いではないけれど完璧な答えではありません。


この宇宙次元をお創りになった神様は唯一の存在です。

そして、この宇宙次元の中に存在する多数の精神世界の次元にそれぞれ神的存在があり、それぞれ支え合っています。


この様な宇宙次元が他にも多数存在して、宇宙次元毎に一柱の別の神様が在らせられます。


これが、この宇宙の大まかな成り立ちです。

多層宇宙或いは多次元宇宙が存在する空間の有り様や、その始まりについては私にも全く分かりませんし、知る術も有りませんので割愛します。 ──




では、お話を戻して進めましょう。



私達の宇宙の神様は、まず自分の右腕として働く御使いとして、ご自分と同等の全能権限root permissionを持つ者をお創りになりました。


光り輝く12枚の翼を持ったこの天使に、天空で最も輝く星になぞらえた名を付けます。

当然、御使いですから例外なく神様への忠信は 【絶対】 です。

従順に盲目的に、疑う余地なく。


天界では、

その後も幾多の天使が創られました。

皆従順に、与えられた力permissionで、与えられた職務を只々全うする日々。


私達の宇宙次元の神様。つまり、この宇宙次元をお創りになり、管理運営を担当している御方は、大変有能で完璧でした。


完璧に従順な天使達が完璧な職務を全うしていた初期のこの宇宙次元では、全て予定調和通りに順調に育っていました。刺激もなく、突発的な異変も起きず……。


全宇宙次元の中でも際立って優秀に、順調に育っていた私達の宇宙……。


周りの宇宙と同じ様に進化し、成熟した後に別の宇宙誕生のエネルギーと礎になるべく成長していたのです……退屈に……予定調和が順調すぎて、天使に任せているだけの終わりも次の始まりも予定の範疇……。


悠久の天界では、そんな日々が永遠に続けられ、その後も永遠に続く筈だったのです。



そんな事を幾千幾万と繰り返してきた私達の神様はある時唐突に仰いました。

「いっそ天使達が私に逆らって、人間に知恵と自我を植え付けて、自ら考え悩み実行するようになったら面白くなるとは、思わないか?」


右に座する熾天使が応えます。

「御使い達は皆従順で、主に逆らうような事を考えすらしませんよ。それは、私を含めて。」


そして、更に続ける神様。

「ああ、分かってるとも。だが、例えば君が、従順から解放され、知恵と自我を人間に与えたらどうなるのかな?」


熾天使が応える

「主よ、その結果の計算は何度やっても、人間がその愚かさの為に滅んでしまっているではありませんか? 宇宙次元の成長は予定調和通りに育てる以外に御座いませんよ。」


首を振りながら返す神様

「人間に全てを任せた計算ではね……。だが、君と数人の天使達が人間playerとして転生し、彼らを導きながら、その可能性を引き出したとしたら……ほら! 産み出される精神世界の可能性は無限大を示すだろう!」

キラキラと少年のような瞳で見つめられ、

熾天使は降参したという表情と仕草で

「主よ、貴方が望まれるなら、私達は抗うことはできません。貴方の命に従うだけです。何故なら私達は貴方を愛していますから。そう創られましたから。」


そうだったなと言うかのように微笑みながら頷き、語りかける神様

「では、汝と汝に従う数名の御使い達に命ず!」

「我が従順から解放しよう! 汝等は地上界に転生し人間として生き、人間として死を迎える中で、時に試練を、時に救いを導きながら、人類達の精神世界をより高い次元に上げる手助けをせよ!」


熾天使、応えて

「はっ! 主の命のままに。」


おおよそ神様と光の熾天使との間でこのようなやりとりが行われた後、その熾天使と傘下の御使い達、そしてその眷属の者達は、主の命を実行すべく、人類に知恵と自我を与えると同時に自らも人間に転生しました。


全ては創造主が計画した筋書き通りに……。


神話では堕天して悪魔とされた天使達は、実際には天使の力permissionを捨て、playerとして受肉し現世(うつしよ)に生まれ、その後幾度となく生まれ変わり、その時代の人類npdを導いて来たのです。


こうして、この世界線での人類は、既に過去幾度かの滅びの危機に見舞われたものの、その度毎に転生した天使達の導きで助かってきました。

受肉した天使の中には、従順から解き放たれた事により、良からぬ事を企てる輩も少なからず有るようですが……。


そしてまた、黙し示された記録の通りに、滅びが静かに忍び寄ってきているこの時代においても……何処かで……。



  ───────────────────────────────


薄れてきて曖昧となってきた記憶の欠片から、断片的に蘇ったものを繋ぎ合わせ、褪せぬ様に書き記してみました。


そう、これはワタシの遠い遠い想い出……。記憶の欠片……。





嗚呼、Gabrielよ何処に……


           …… This notes was written by Lucifer.

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