◇4.アメール・ピコン・ハイボール


 平日の〇時前ぎ、それも世間の大半の人間が仕事始まりである今日は、都会のお洒落タウンと言えど穏やかな時間が流れる。“Barバー Takerテイカー”の店内には、真也しんやとマスターの他に、カウンター席にたったひとりの女性客。


「いやー、まじびっくりしたんだけど。結構なアルコール入りなんだぜ、あたし」

「そうとは思えないほど勇ましいバトルっぷりだったけどねー、途中までは」

「褒めてんの? けなしてんの?」

「褒めてるー」

「はい棒読みー。さっ、あたしへの祝杯サービスもう一杯、決定!」

「えー、もう今日はお水にしたらー?」

「やだ、ここにあたしはどうしてきましたか? はい、酒をたっぷり飲みにきたんです」

「もー、本当にあと一杯だけだからねっ」


 真也は上の戸棚からシェイカーを取り出した。先程勃発したバトルの直前に梨紗りさが飲み干していたのは、彼女のお気入りのドリンクであるサイドカー七杯。強引なおねだりではあるが、折角の祝杯だし何かそれとは違うものをと、真也はずらりと並んでいる種類豊富なリキュールに目を走らせる。


 ――ワタル……たすけて……


 ――もう……ころして……


 真也がちらりと振り返ると、梨紗は水を口に含みながら首を傾げて笑んできた。真也は微笑み返してから再び彼女に背を向けたが、直後、眉を潜めてしまった。


 たった今、真也の頭の中に浮かんだ言葉は、第二の物語のボス戦時に、梨紗が漏らしたSOS。この言葉の真意を探りたい。同じチームのMemberメンバーとして、梨紗とわたるへの正しい手の差し伸べかたを知るためのキーワードであるように思うから。


 考えた末、真也はシェイカーを戸棚に戻した。替わって手にしたのはタンブラーグラス。決定したリキュールを調合しながら、先程のバトルの情景を思い返し始めた。




 ■Recollection回想



 真也と梨紗の元で展開したグレーのバトルフィールド。Barから飛び出て階段を駆け上がった途端に出現したフォロワー達が手にしている槍を見て、が回ってきたのだと、瞬時に感じ取った。だが、その中に真也は含まれていない。そう断定してしまえるのはCrystalクリスタルが覚醒済であるから。第三の物語をメインで闘い抜くことになるのは航と梨紗だ。


 酔いが回り変に愉しくなっているのか、へらへらしている梨紗が先陣を切り、三つに枝分かれしている鋭い槍の先端で黒色の兵を薙ぎ倒し始めた背後で、真也が飛ばしたS応援要請に応答してくれたのはつばさ杏鈴あんずだった。


 杏鈴――梨紗と交わした会話の中にあった明らかな違和感。梨紗と杏鈴との間には見えない分厚い壁がはだかっている。Memberが少人数であるが故、二人が接近する確率は普段より高くなっているはず。これはチャンスだ。


 酒の力を借りている梨紗の攻撃はすごぶる快調だが、兵の数は多い。敵の目につかぬよう曲がり角の先へと杏鈴を誘導してから、ACアダプトクロックに刻まれているAdaptアダプト Nameネームに触れた翼がブルーの銃口から噴かせたのは、通常の銃弾ではなく、巨人が繰り出す鉄拳のように勇ましい氷だった。翼が第二の物語で覚醒させた“冷静な心”の意に沿うクールな強化攻撃だ。


 氷のビームは目的へ一直線。纏めて凍らされた数十体のフォロワーは、数秒後には跡形もなく弾け飛んだ。二・三度、翼が連続でその攻撃を繰り返すと、兵の数は一気に減少した。


「ヨクの覚醒付随能力やばかっこいいじゃん! いいなー! 俺のおっちょこちょいフラーッシュと交換してほしーっ」

「……出来ることならな」


 覚醒付随能力の欠点は通常の攻撃より体力を多く消耗してしまうことだ。息が大きく上がっている翼にフォロワーが飛びかかる。翼がしゃがみ込むと同時に、真也は左手を突き動かし、その闇の腹にぶちかました。噴き上がった黒の血飛沫を避けながら身体を翻し、攻めてきたフォロワーと槍を交える。体勢を整え直した翼のアシストは抜群だ。向かってくるフォロワー達に銃弾を命中させ、真也の元へと辿りつかないようにしてくれる。


「ギャッ!」


 ハスキーな叫び声に、真也と翼はギョッとした。バシャリと黒の血だまりに倒れ込んだ梨紗。アルコールは徐々によくないほうへと彼女を導いていたようだ。地に両肘をついて上半身を起こしているものの、なかなかそれ以上に起き上がろうとしない。オレンジブラウンのストレートロングヘアの先から黒の雫が滴り落ちる中、二体のフォロワーが彼女に迫る。


「やばい!」


 目で合図しこの場を翼に任せ、真也は駆け出した。スピードは賢成まさなり同様Member達の中でトップクラスを誇っているが、梨紗までの距離は思いの外遠い。


 真也はダッシュの勢いを糧に高くジャンプした。宙で槍を振り回し、二体のフォロワーの間に切り込む。ブシャッと音を上げて黒い血液は噴き出したが、右の一体からだけ。真也はすぐさま両手で槍の柄を強く握り、左のもう一体の身体に貫通させた。


「……シン!」


 怯えたような顔つきで身体を微動させている梨紗の負傷を確認する前に、翼が自身を呼ぶ声にはっとした。左肩に乗った気味の悪い黒色の手。感覚だけで突き動かした槍の切っ先は、そのフォロワーの額に食い込んだ。返り血を多少受けはしたが、攻撃回避は成功。


 今度こそ梨紗の元へ、と視線を動かした真也は光景に小さく肩を揺らす。梨紗の姿を遮るように入り込んできたのは華奢な杏鈴の背中だった。


「……よく分からんが、どうやら特別に褒美が与えられたらしい」


 最後の一体のフォロワーを葬り近寄ってきた翼の説明によると、第二の物語でCrystalが未覚醒であるにも関わらず、覚醒付随能力のひとつとされている“浄化”と同等の力が杏鈴に与えられた。翼の“特別な褒美”と言う表現に納得してしまった。チャンスゲームと言う名にちなんだデッドからの気まぐれな贈りもの。あまりにも不憫な彼女を見かねたOrganaizerオーガナイザーが交渉した結果なのだろうか。


 真也は背伸びをし、梨紗の視線を辿った。左の足元、そこに杏鈴が、ハートクォーツを模ったネックレストップをかざしている。その中に浮かんでいる二種類の青色の花びらが控えめに溢れさせている細氷のような光のお陰で、梨紗が負ったケガの治癒と、破られてしまったBバトルクローズの修復は完了した。


「アンちゃん凄いね! 最強の救急隊員じゃんっ。いいのかな、こんな能力デッド様与えちゃってさ。これ使える限り、こっち無敵にならない?」

「……さあ、ヤツの考えてることないし、この水晶因果gameゲームのルールはいまいち掴めんところが多いからな」

「確かにっ。でもよかった、梨紗ちゃんに傷が残らなくて。うわっ」


 フィールドの分解が始まった。ぐにゃりぐにゃりと歪む視界に、少しずつ色が舞い戻り始めた。



 ■Recollection END■




 真也はAdaptから解放されるその直前まで、梨紗と杏鈴から目を離さなかった。二人の間にある鉛のように重たい空気は、色彩が戻り始めた周囲に一切溶け込まなかった。


 杏鈴は自らの意思で梨紗を庇いに動いたはずであるのに、彼女に対して「大丈夫」の一言さえもかけなかった。行動と矛盾し、彼女を治癒するその工程は業務的で、淡々としていた。


 対する梨紗も、助けてもらっているにも関わらず、杏鈴へ礼の言葉すらかける気配がなかった。それどころか眉間に皺を寄せ、彼女に対して嫌悪感を露わにしているようにさえ思えたのだ。


 臭ってきた二人の関係性は、あまりにも普通とかけ離れていた。だからこそ今、間違いないと心に刻んだ。梨紗が漏らしたSOSの闇には杏鈴が絡んでいる。それらを踏まえて彼女に本日最後の最高の一杯を、と満たしたプレーン・ソーダのステアは切れよくきまった。


 真也は仕上がったダークパープルカラーのカクテルを、いつの間にやらスマートフォンに夢中になっていた梨紗の前に差し出した。


「わ、何、新しいの?」

「そう、アメ」


 真也がカクテル名を述べかけたその時、梨紗のスマートフォンがうるさく震えた。電話にでた彼女が今宵の約束の相手を話すのを聞きながら、終わりのタイミングを待つ。


「わり、急に取っちゃって」

「俺さ、見たんだよねー」

「ん?」

「梨紗ちゃんのそっくりさんの絵画」


 脈絡なく切り出したほうが、受け手の警戒心は軽減したりする。真也のその理論は、梨紗にとっては効果的であったようだ。唐突な発言に不思議そうにしている反面、彼女の瞳の色は興味を語っている。


 第二の物語で、梨紗が意識を失っている中、何かヒントはないかと真也はあの殺風景な部屋を捜索した。モップとバケツが仕舞われている掃除用具庫の中から、彼女の過去の所有者と見られる女性が描かれている小さなサイズの絵画を発見した。


 ただ、描かれていたのは、彼女ひとりだけではなかった。


「ひとりじゃないって?」

「そう、でもそれが分かんない人でさ。かっこよくない男の人と一緒に描かれてたの」

「ふーん、どんぐらいブス?」


 毒を含んだ梨紗の言いかたに、真也は息を漏らすように笑った。


「ブスって……んー、ちょっとおデブって感じ。でも服はちゃんとしたスーツっぽいやつ着てたよ」

「なるほど、デブな」

「ちょっとだよ、ちょっとね! ここ重要テストに出ますからねっ、如月きさらぎさんっ」

椿つばきせんせーあたし暗記苦手でーす。つか、太ってる男の知り合いいねえから、そいつが誰か、あたしには見当つかないわ。一緒に描かれてたんなら、あたしの過去の所有者と関わりがあったのは確かだろうけど」


 タンブラーグラスの縁にぷっくりとした唇を寄せ、真也が出したとっておきを口に含んだ梨紗は、ぱちぱちと長い睫毛を上下させた。


「うまっ! 何これ、超好みの味なんだけど」

「よかったー。それね」


“アメール・ピコン・ハイボール”。真也が梨紗へ送った祝杯は、オレンジの香りとハーブのほろ苦く爽やかな飲み口が特徴の大人向けのカクテルだ。


「しかしねー、梨紗ちゃんくらい美人さんだとさ、イケメンしか寄ってこないんだね」


 話の軸を真也は曲げない。贈ったこのカクテルには、彼女に今伝えたい言葉がこもっている。


「あー、確かに、そうだな」

「さすがですねー、否定しないとは思ってたけどさ」

「寄ってくるっつーか、言っとくけどあたし、誰かれ構わずヤってるわけじゃねーぞ。ブサメンは断固拒否だし、身体だけなら顔面よくないと。ある程度は選んでんだよ」


 ビターカクテルの美味しさは梨紗の心に生えている棘の先を一時的に丸くしてくれている。


しんだって、ヤるだけだったらブスな女は選ばないだろ?」

「うん、選ばないね」

「だろ? 男だろうが女だろうが、そんな大差ねーんだよゲスい本心は」

「じゃあさ、梨紗ちゃんが夜だけ会う何人かの男の人達ってさ、顔面偏差値も高くて、身体の相性だっていい人なわけじゃん。何度か会ってるうちにさ、ちゃんと誰かと付き合おうかなって気持ちにはならないの? 今までひとりくらいあるでしょ? 付き合わないかって言われたこと」


 ダンッと空にしたタンブラーグラスの底をテーブルに叩きつけ、しゃくり上げるように梨紗は笑い始めた。傍から見れば何がそんなにおもしろいのやら、となるところだが、酔っ払っい慣れしているバーテンダーは全く動じない。


「真も可愛い顔してやっぱただの男だよな。なるわけないじゃん。身体から入って恋愛感情を持つなんて掟違反だ」

「えー、そこから生まれる恋だってあるよ。付き合ったあとに身体の相性が合わなかったら嫌だから、毎回身体から入るって女性、知り合いにいるよ」

「そんな上手くいってんの極めて稀なパターンだよ。真のその知り合いの女は余程前世の行いがよかったんじゃん? 基本男はさ、本気で落としたい女には安易に手は出さないの。健全な時間に待ち合わせして健全な時間にディナーして健全な時間に家に帰すの。そうやって何回か慎重にデートを重ねてから告白フィニッシュ! このパターン、違う?」

「うんうん、よーく分かった。つまり梨紗ちゃんが夜の逢瀬を重ねているかたがたは、しょっぱなから深夜に呼び出してきて会った瞬間いこうぜホテル族ってことね」

「そー言うこと。あたしを正しい意味で大事にする気はゼロな男どもってことよ。んで、あたしもちゃーんと割り切ってる女だから、“円満気楽”な関係って感じ」

「ねえー、その四字熟語さ、あなたのセンスの塊だと思うけどさー」


 真也は梨紗に冷やをついでやりながら一言放った。


「寂しくない?」


 ピクリと動いた梨紗の眉。ある程度苛立たれると予想していた真也だったが、彼女は目元を妖艶に輝かせた。


「仮に“寂しいよ~”って、言ったら何かくれんの?」

「うん、俺の身体あげる」


 妖艶には魔性で対抗するのみだ。真也は梨紗の目を真っ直ぐ見つめて畳みかける。


「不特定多数の人とするのはさー、あんまりよろしくないじゃん? 俺でよかったら“円満気楽”な梨紗ちゃんのパートナーになってあげてもいーけど」


 ゲホゲホと咽る声が聞こえたが、目の前にいる梨紗からではない。耳の奥がよく覚えている咳き込みかただ。入口のほうを見ると、暗がりでも分かるほどに顔を赤らめている自分と同じ顔が立っていた。


「おい、お前のにーちゃん動揺しまくってるけど」

せい、ごめん、ちょっと取り込み中だから空いてるその辺の席座ってて」


 真也の雑すぎる扱いを受け、誠也せいやは顔に不服の色も加えたが、言われた通りに二人から少し離れたテーブル席に静かに腰かけた。


「と、言いつつ、あたしもそろそろなんだけど。さっきの言いかた、色気なさすぎだしダイレクトすぎ」

「回りくどいより一番伝わるじゃん」

「そー言う問題かよ。ま、仮に上手い言いかたされても真とは無理だな。イメージが全く湧かないし、顔つきが幼すぎてどうもな」

「えー、ひどいなー。俺だって成人してるし、大人の仲間入りしてるんだけどな」

「それ言ったらあたしだって仲間入りしてるわ」

「じゃあ何でこみやんとは出来るの?」


 マスターから出された水を口にしていた誠也が噴いたが、少しでも核心を掴みたい真也はお構いなしだ。


「んー、つか……もう、出来ねぇし」


 席から立ち、大きなトートバックからハイブランドの財布を取り出した梨紗は、気だるそうに髪の毛を掻き上げた。


 あんなに航を誘い襲おうとしていたくせに。だが、梨紗の心情変化の理由をわざわざ問う必要は真也になかった。話の流れを遡れば明白だ。彼女は困るようになったのだ、彼と関係を結んでしまえば、をしてしまうから。


 梨紗から万札を受け取った真也は、彼女が歩き始めると同時に、素早く入口のレジ台へと移動した。


「余計なお世話かもしれないけど、多分俺の何倍もさ、梨紗ちゃんのこと心配してると思うよ、こみやん」

「何か真面目モードじゃね? チャラくない真って違和感ハンパないな」

「うん、俺自身も凄い違和感。けどさ、もっと頼ってくれていーんだからねっ」


 真也がカルトンに用意したおつりを財布に仕舞うと、梨紗はようやく顔を上げ、普段通りに笑んでくれた。


「そりゃどうもどうも。じゃ、またくる」

「気をつけてね。いつもありがとうねっ」


 扉を開けてやり、一緒に地上へ出る。真也は深くお辞儀をしてから大きく手を振った。手を振り返してくれた梨紗は、豹柄のパンプスをカツカツと鳴らしながら足早に暗闇に沈んだ街の中へと消えていった。


 店内へ戻ると、梨紗が座っていた隣の席に誠也が移動していた。


「ごめんごめん」

「いや、ごめんじゃないし! おかしすぎるから二人の会話! 鳥肌立ったよ! 仮にも勤務場だよ君の!」

「そー言う勤務先なんですけど、ねえ、マスター」


 顔が蒸気したままの誠也にウーロン茶を注いだグラスを差し出してやりながら、真也はマスターを斜めに見やった。誠也の願いに反し、マスターは爽やかなスマイルでグッと右の親指を立てて真也に同意した。このBarの方針“ザ☆フリーダム”をマスターから告げられた誠也は、浅く笑いながら肩を落としてしまった。


「梨紗ちゃん、結構酔ってなかった? あれ平気なの?」

「あれくらいはいつもだから大丈夫。大丈夫だから……彼女はこみやんじゃない男のところにいったの」


 誠也に対し答えになっていない答えをぶっきらぼうに返すと、シンクにたまっているグラスを真也はスポンジでこすり始めた。


 アメール・ピコン・ハイボール、カクテル言葉は“分かり合えたら”。







 ◆◆◆



 Bar Takerをあとにした梨紗は、終電に乗り込むべく地下に続く階段を駆け下りている途中で立ち止った。背中に圧しかかっている嫌な空気。つけられているような感覚。たった短いこの道中で、振り返った回数はもう十回を超えていた。


 振り返れど、振り返れど、誰もいない。両手を胸元に添え深めに呼吸をし、前を向いた瞬間、梨紗は喉が擦れたような声で叫んでしまった。


 足の力が抜けその場に尻をつく。数段先に突如現れたのは、見たこともない大きさの黒い蜘蛛。全長は三十センチほどあるだろうか。長くて太い八本の足をガサガサ動かしている。


 夢? 現実? 酔いのせいで頭が回らないどころか真っ白になっていく。助けを求めたいが、喉は硬くなり震えてくれない。


 そうしているうちに蜘蛛は狙いを定めてきた。まるで人間の如く階段を上がり、梨紗との距離を縮めてくる。


 怖い、助けて! 


 梨紗が精一杯心の中で助けを求めた瞬間だった。


 左手首から上がった電子音により、梨紗はくしゃくしゃにしていた顔を開いた。立ち上がっているスクリーンに表示されているのは航の名。だが、伸ばしかけた右の人差し指を、下唇を強く噛んで折り込んでしまった。


 前方を見て目を見開かずにはいられなかった。蜘蛛の姿が消えている。四方八方を見回したが、どこにもその影は見当たらない。酔いのせいで幻覚を見たのだろうか。いや、これは――力なく首をひとりで横に振る。認めたくない、何もかも。


 終電を逃してしまったことに気がついた梨紗は、足をもたつかせながらも立ち上がった。階段を上がり直し、待ち合わせの相手に電話をかけながら、タクシーを拾うため歩き始めた。


 オレンジブラウンのストレートロングヘアが風に靡くその背後で、消えたはずの闇の塊が、怪しく動いていた。










 ◇Next Start◇二章:心ハ軋ミ、頭ハ悩ム



 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

 ◇Link◇

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054881417051

 ・EP1:※◇12 


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054882320715

 ・EP2:◇12

 ・EP2:◇16

 ・EP2:※◇31

 ・EP2:◇34

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