学園へのプロローグ5
ある日の放課後、神無月学園を牛耳る生徒会長、
「お待たせしました聖架さん!」
「
確かに呼び出されたのは生徒会室で、ここは3年A組の教室
「いえっ。聖架さんを待たせる訳には行きませんから!」
「あぁ、君はそういう子だったな……。ちょっと荷物をまとめるから待っててくれ」
「はいっ!」
▪️side3年モブ子ズ
「あれ
「いつも会長といるよねぇ」
「生徒会メンバーじゃないけど、生徒会の活動に協力してるよね」
「可愛い弟って感じだよねぇ」
「それにしてもあのワンコ属性ホント」
「「「妄想が捗るるわぁぁ!!」」」
▪️
聖架さんのクラスメイト達が何やら騒いでる。たしか漫画研究部の人だったかな。よし……。
「待たせてすまない。とりあえず話は生徒会室についてからで」
「早く行きましょっ!」
僕は聖架さんの手を引き腕を抱いた途端、キャァーという声が聞こえる。
「うちの妹みたいな事すんな」
頭に衝撃が加わる。痛ぁ、くはないな。優しいなぁ聖架さんは。
僕の腕を解き教室を出る聖架さん。
「置いてかないでくださいよーっと。その前に」
漫画研究部のお姉さん方に目を向け、軽く手を振る。
「サービスですよっ。それじゃ、待ってくださいよ聖架さーん」
「あざとい」「でも」「そこがいい」
漫画研究部は僕と聖架さんの漫画描いてるらしいし、多少はサービスしてあげないとね。
▪️
生徒会室に向かう途中
「あら……聖架さん。お久しぶりですね。探してましたのよ?」
見慣れぬ制服の女性に声をかけられた。気品溢れるお嬢様って出で立ち。隣にいるのは、メイド?
「
翠鶴って山奥にある翠鶴女学園だろうか?珍しく聖架さんが睨むような目で対峙している。警戒してる?
「そんな怖い顔しないでくださる?
いたずらっぽく笑う轟会長とやら。攫うってどういう事だろうか……。
「
九条?姫月の事かな?
「おやおや怖い怖い。あぁ、そうそう。
会長さんの後ろにいたメイドさんが1歩前にでる。どこから取り出したのか分からないが、手には1つの封筒。
「神夜様、コチラを学園長から預かってまいりました」
聖架さんが封筒を受け取ると
「さて、目的も果たしましたし、
「失礼致します」
僕達の横を抜けていく会長さん。メイドさんは深くお辞儀をし、1歩遅れて会長さんの後についていった。
聖架さんも一瞥もせず、生徒会室の方面に歩き出した。
「あのっ!」
つい2人の方に声をかけてしまった。
「姫月ならさっき正門の方に向かってるのを見かけましたよっ。それじゃっ」
それだけ告げて、僕は聖架さんを追った。
「珍しいですね。聖架さんがあんなに警戒心を剥き出しにしてるの」
「あぁ、見苦しい所を見せたな。アイツとはまぁ……面倒な関係だ……」
それだけ言うと聖架さんは黙ってしまった。僕も言及することはなかった。
元カノとかだろうか、すごい気になる……。
そんな悶々とした感情を抱いているうちに、生徒会室の前にたどり着いた。
扉を開け中に入ると
「あ、お兄ちゃん」
「
俺の妹の雅がいた。なので
「雅も呼び出されたのか?」
「うん。授業が終わってから副会長さんに連れてこられたんだけど、別の仕事があるからって副会長さんはどこかいっちゃった」
「待たせてすまない。早速だが呼び出した理由について話そう」
聖架さんは会長専用の席に付き、机の上に2枚の紙を出した。
「単刀直入に言う。君たち2人には転校してもらう」
「「………………はい?」」
「君たちのご両親からは、既に了承を得ている」
いきなりの事で頭の整理がつかない。雅もポカンとしてしまっている。
だが、一つだけ確認したい事がある。
「聖架さん」
「なんだい?」
「転校先は
「……そうだ。おそらくその理由も想像通りだ」
なるほどそういう事か……。
「本当なら妹さんだけの予定だったが、僕が君をねじ込んだ。それが精一杯だった、すまない……」
「いえ、ありがとうございます」
僕と雅はそこらの異能力者と訳が違う。
そして祇軌守学園は異能力の研究をしている。となると、モルモットにしたいのだろう。
「あのねお兄ちゃん、わたしまだ状況が分からないのだけどっ」
「心配すんな。お前は俺が守るからな」
雅の頭を撫でる。話聞いてるのーっと言わんばかりの視線を突き刺してくる。かわいい。
「祇軌守学園は特殊なルートからじゃないと入れない。今間の前にある2枚の紙、これが学園への片道切符だ」
「それにしても急な話ですね。もっと前から言っておいてくれればちゃんと準備してたんですけど」
片道切符とやらを手に取り、聖架さんに話しかける。
「祇軌守学園は国の最重要戦力、国家機密といっても過言じゃない。大体の生徒はこんな風に呼び出されて学園に行くんだ」
「あ、あのー」
雅が恐る恐る手を上げる。
「わたし準備も何もしてないんですけど……、今すぐその祇軌守学園へ行くんですか?」
「準備はしなくていい。学園から支給されている携帯端末、PAT《パット》は持っているだろ。それ以外の持ち込みは基本的にできない」
聖架さんの言う携帯端末、正式名は
Personal《パーソナル》Attest《アテスト》Terminal《ターミナル》
通称PAT《パット》
日本にある能力者育成機関の学園生には全員に支給されるもので、学生証として使われている他、通話やメール、学園用掲示板の閲覧や書き込み、電子財布などの機能がついている。
「悪いが君たちの寮の部屋は僕と副会長が片付けさせてもらう。まとめ次第君たちが入寮する部屋に送らせてもらう」
まぁ聖架さん達なら信用して大丈夫だろう。
「さて急ですまないが、早速祇軌守の方へ向かってもらう」
「わたし置いてけぼりなんですけど……」
雅は多分なんで祇軌守に行くのかわかってないのだろう。
「俺達の血の力が見たいんだとさ」
「えっ、それって……」
少し雅の顔が強ばる。
「なに、捕まえて解剖されたりする訳じゃないさ。それは補償する。それと椎名さん、ちょっといいかな」
少し離れた所に雅を呼び出し、僕に聞こえないように何かを囁いている。
くっ、羨ましい……。
「ホントですかっ!?」
突然雅が声をあげた。何か嬉しそうにニコニコしている。
「お兄ちゃんっ!早く祇軌守学園とやらにいきましょ!」
さっきとは打って変わって目を輝かせながら催促をしてきた。いったい何を言われたんだいマイシスター。
「とりあえず、向こうについたら祇軌守の生徒会長が案内してくれるから」
「とりあえず行くのはいいですけど、この片道切符とやらはどこで使うんですか?」
A4サイズの白い紙。白い。何も書いてない白紙。どう見てもただの紙。
「とりあえず紙を両手で持って。あぁ上の方をね」
わけも分からず言われた通りに紙を持つ。雅と目が合い、2人して首を傾ける。
「そのまま破いて」
ビリーっと2人同時に紙を破いた。
「行ってらっしゃい。何かあったら、直ぐに駆けつける」
聖架さんの言葉を最後に、目の前が光に包まれた―――
ツナグセカイ―ハジマリ 五十月 @izukirisa
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