第3話 事後報告
あれから1日が経過し、時間は午後5時あった。
その時俺は、近所のマクドナルドで暇を持て余していた。
昨日あのあと起こったことの説明をしよう。
どうやら俺は、あの時黒田をブン殴り、倒れこむ彼女に追い打ちをかけようとしたところを中居や周りの生徒に押さえつけられたらしい。
その後、俺と黒田の母親が学校に呼ばれた。その時なぜか彼女は、母親には言わなくていいと強く中居と担任に抗議していたが。
両方の母親が召集され、絵に描いたようにヒスる黒田母に対して親子で謝罪し、事態はひとまず落着した。
黒田母は最初は慰謝料がどうのと言っていたが、先ほどとはうって変わってずっと俯いている黒田に加え、俺の過去のトラウマが今回の発作の原因であったことなどの中居による説明及び彼女の母への慰撫によって沈静化した。
そして俺は見事に一週間の停学処分となった。
流石に学校側も俺のあの行動を不審がったらしく、少し心を落ち着けなさい、という情状酌量の余地を配慮してくれたらしい。
とはいえあと数日で春休みなので、俺はもうあのクラスに顔を出すことはなくなった。
実質的なフライング春休みである。
ウサインボルト並のフライング。じゃあ失格じゃん、、、。
しかし実際ラッキーであった。
正直言ってあのクラスには気まずすぎてもう行きたくない。
というか奥本にもあまり会いたくないので、学校にすら行きたくないレベルである。
あいつの彼女思いっきりぶん殴ったもんだから、目の敵にされるのは必至であろう。
春休みにも部活はあるが、今のところ行く気は全く起こらない。
しかし、あと数週間でまた学校に行かなければならないと考えると気が重くなる。
春休み初日からその終わりを憂うとか悲しすぎる。マサイ族並に遠くを見ていた。
とはいえ、束の間の安寧を得た俺は、平日の昼間から暇である優越感をオカズにシコろうと決起したが逆に遣る瀬無さに殺されそうになったので、仕方がなく出かけたのであった。
久しぶりに本屋に足を運ぶと、ずっと購読している漫画やラノベの最新刊が何冊があったので、それを購入して帰りにマクドナルドで読書と洒落込んだ次第である。
正直俺も結構参っており、意図的に不安から目をそらしていなければやってられなかった。
てか正直昨日から親の質問攻めがやばくて家にいるのしんどいんだよな、、、。
一応説明はしたが、というか何度もしたが、やはり相当心配しているようだ。
これに関しては本当に申し訳ないとおもうが、正直俺もそれに付き合うような精神的余裕が今はなかった。
しかし昼にここへ来てからこんなに時間が経過したのか。やはり現実逃避には本が一番である。
しかしまた親を心配させると流石に悪いのでそろそろ帰ろうかと思った瞬間、
「あれ、二条じゃん」
聞き覚えのあったようななかったようなという声が俺を呼んだ。
恐る恐る振り向くと、そこにいたのは意外な人物であった。
「おお、久礼田、おっす」
俺はこの男を知っている。
俺と同じクラスの久礼田である。下の名前は知らない。というか、俺はこいつのことを特に知らない。クラスで喋った試しもない。つまり、全然仲良くない。
正直俺は、突然の予期せぬ状況に少し困惑していた。
「よっこらせっと、ふぅ〜。」
いや、向かいに座るのかよ、、、。距離の詰め方がアメリカンすぎる。
こいつの存在はクラスで特異と言える。
特に誰かとつるんでいるわけでもない、というかこいつは普通にぼっちである。
しかし、見た目がまんまヤンキーなので誰かがそれを冷やかすわけでもない。実際下山はこいつにビビリまくっていて童貞丸出しで気持ちが悪い。
てかそのあと俺と二人になった直後にいつも久礼田に対して「あのぼっち今日もいきってたな!」って愚痴ってくるあの流れやめてくんない?毎回お前のオナニーを実況されているような気分になるこっちの身にもなって欲しいものである。なんなの?趣味なの?
「てかお前最高だったよ!ほんとマジで!」
久礼田が俺の思考をぶった切った。
「え?何が?」
「あれだよあれ!あのお前が黒田をぶん殴ったやつ!」
「は、はぁ?何言ってんだこいつ、、、。」
「心の声漏れてるぞ。」
マジで訳がわからなかった。
俺がやったことは咎められることではあれど決して褒められたようなことではないだろう。
「いやさぁ、俺お前のことクラスでも特にクソつまらんゴミだと思ってたからさぁ、びっくりしたんだよ!ほんと!」
「せめて言葉のトゲを取ろうとする努力はしろよ。」
一つわかったことがある。こいつは思ったことを全て口にしてしまう病気だ。
こいつは手をグッドポーズにして屈託のない笑顔でこう放った。
「お前、ロックだな!」
お前はバカだな。
心からそう思ったが、俺は言葉を飲み込んだ。
「そういえばお前、何してたん?」
「いや俺停学になったからさ、暇つぶしにここで本読んでたんだよ。」
「まぁそりゃ暇だわな。なんの本読んでんの?」
こいつは意外にも俺に興味を持っているらしい。
「いや多分お前知らないと思うけど、やはり僕のせ」
「うわ僕ガイルじゃん!俺も大好きなんだよぉ!」
こいつこのなりでオタクかよ。人は見かけによらないものである。
それから俺たちは小一時間ほど喋っていた。
お互いの趣味や、学校の話など、自然とネタは尽きなかった。
俺は案外こいつと気が合うのかもしれない。
あのままの日常を過ごしていたら一生気づけなかったであろうことだったので、ちょっぴり得した気分になった。
ひとしきり会話を終えてマクドナルドを出たあと、こいつは俺の家までついてきて夕飯を御馳走になってトイレで一本グソをブチかまし、一番風呂に入って俺の寝間着で帰っていった。どんな教育受けてんだ。
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