耳の中の蝉
まだ夏には早いというのに
耳の中で蝉が鳴く
ミーンミーンではなく
カナカナカナでもなく
時に高く低く
耳の中の蝉は鳴く
ジージージッジッジッと
絶え間なく
あれは
いつの夏だったのか
膝小僧を茅で切って
泣きながらトボトボと
夕暮れの帰り道に
鳴いていたのは
あれは
切なく懐かしい風景の中にいる
幼いわたし
まだ泣くことの出来ていた頃の。
今、この夜に鳴く蝉は
わたしの代わりに泣いているのか
ジージージッジッジッ
ジージージッジッジッ
高く低く耳の中で蝉が鳴く
桜はもう咲き始めたろうか
あの夏のなんて遠い
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます