第35話 感性

 射撃場での練習を終え、ギルドルームの塔のロビーに有る休憩席で休んでいるメアリーと鳩鳥


「あぁ~~~~、疲れた…。ハトちゃん張り切り過ぎよ~、私もうヘトヘト」


「すまん、すまん! ゲームは久しぶりではしゃぎ過ぎちまった」


 めありーは鳩鳥の言い訳を聞いて更にぐったりする


「そりゃあ、仕事から解放されて暴れたいのも分かるけど。流石に今みたいのはないって」


「ホントゴメンな! それに確かめたい事があってよ」


「確かめたい事?」


 メアリーと鳩鳥が話していると、ロビーに見知った人間が入って来る


「ただいま~。ギリアン僕をいやしてぇ~」


「ショウ、今日は頑張ったから合わせても良いけど、あまりギリアンにくっつかないでよね」


「ふう、豊作!豊作! さすがルーシー殿はダメージ調整が上手い!」


 ショウ、ルーシー、ポピーの3人はだった、彼らは疲れた様子で直ぐに休憩用のソファーに腰掛けた。そんな彼らにメアリーは言う


「みんなお帰りなさーい」


 ショウがメアリーの声に気づいて顔を上げて返事をした


「あ、メアリーただいま。メアリーも疲れてるね、なにあったの?」


「ハトちゃんに射撃場に連れていかれた」


「それでなんでそんなボロボロに?」


 鳩鳥が頭を掻いて気まずそうにしながらも説明した


「俺が無茶させ過ぎたんだ。しかし収穫は有ったぜ」


 メアリーはぐでーっとしながら鳩鳥に言った


「それって・・・、私の意外と上手い射撃の腕前の事?」


「それもそうだがそうじゃない、銃の腕前はオマケだ」


「じゃあ何よ?」


 鳩鳥は表情を引き締めて言った


「メアリーちゃん、あんたは感覚が鋭すぎるんだ」


「??どういう事よさっぱり分かんない」


 メアリーは鳩鳥の言葉が理解できず混乱した、だがルーシーのは何かを察した様で鳩鳥に説明を求めた


「詳しく話して」


「ああ、メアリーちゃんはVRとの順応性が高すぎるんだ。俺の他にも誰か心当たりがあるんじゃないか?」


 ショウがハッとして口を開いた


「そういえば僕が初めてメアリーを馬に乗せた時、凄く感動してたな」


 メアリーはショウの言葉を聞いて言う


「それはただの私の感想でしょう」


「馬に乗って実際に揺れるように感じたり、敵に攻撃されてオーバーに痛がったりも?」


「それはまあ、初めてで慣れてなかったからでしょ。例の共感覚がどうたらの」


 鳩鳥がメアリーにキッパリと言う


「普通はそんな様な感じがするだけで、芝居でもない限りはリアクションする程感じはしねえよ」


「え、そうなの!?」


 驚くメアリーを見て、一同息をのんだ。そして鳩鳥は説明に戻り話を進める


「ショウとポピーが引き起こした例の海獣騒ぎもメアリーちゃんの感性が鋭すぎたのが原因だな。感覚が鋭いから巨大な怪物に会ったら飛び込んでくる情報が大きすぎて脳が処理しきれなくて混乱するし、ただでさえ荒れ狂う沈みそうな船の上に居りゃあ、そりゃ泣きだすだろう」


 ポピーは腕を組腕んで何やら考えならこう言った


「なるほど、メアリンにとっては実際に海の上で牙の生えたクジラにでも襲われたような衝撃だったと」


 鳩鳥はポピーの言葉に首を縦に振って同意する


「そう言う事だ。そして過剰なストレスの原因の一端はどっかの誰かさんが爆弾を投げそこなって船を沈ませたのが原因だな」


「あ、バレちゃった? ごめん」


 ポピーは苦笑いしてメアリーに頭を下げた。そして鳩鳥が続けてこういう


「そして、今日射撃場でメアリーちゃんの反応速度を見るたが、アレは凄いぞ。目や耳で状況を把握できなくても感でターゲットに当てやがる。鍛えてやれば良いEスポーツ選手になるだろう」


 メアリーはそれを聞いてバカバカしそうに言った


「そんな大げさな・・・」


 しかしショウが真剣な眼差しでこう言ってメアリーは動揺した


「そんなメアリーが・・・・、僕と同じような感性を持っていたなんて!」


「え、ん、はぁ!? ショウもそうなの!? …ッ!確かアンタゲーム大会に優勝した事あるって言ってたわよね!?」


「うん、そうだよ。プロに勝って優勝できたのはその感覚と練習のお陰」


「ならアナタが真っ先に気づかないとおかしいでしょうが!」


「だって普通の人の感覚が分からないもん、メアリーの反応もこんなもんかと」


「ショウがいくら暴走してもアンファングを追い出されないのってもしかして・・・」


 メアリーの疑問にルーシーがこめかみを頭が痛そうにおさえながら言った


「そうよ、じゃ無かったら問題のタネであるショウを追い出すか、ギリアンを抹消してるわ」


 ルーシーの言葉を聞いてショウは動揺した


「そんな!冗談でもそう言う事言うの止めてよ! ギリアンが居なきゃ僕は何を支えに生きて行けばいいのさ!」


「大丈夫、消さないかな。・・・アナタが有能な内はね」


「はい!無能と言われないよう頑張ります」


 メアリーはショウを見ながら驚愕の表情で言い放つ


「そんな・・・、私もショウと同じ感性を持ってるって事はッッ! ゲームの中の人もいないNPCキャラクタ―依存して本気で付け回す変態に私もなるっていうこと!?」


 ショウはメアリーの反応に異論が合ったようだ


「その反応は酷過ぎないメアリー!」


 しかし他の者に異論はない様だ鳩鳥が優しくメアリーの肩を叩いて言う


「一歩間違えばそうなるってこったな・・・」


「そんな!このままじゃ私も変態に・・・・」


 鳩鳥の言葉に本気で怯えるメアリーにショウは問いただした


「何さ変態って! じゃあさ僕とポピーを比べてどっちがマシだと思う?」


「究極の選択ね・・・」


「良いから答えてよ!」


 メアリーはしばらく考えた後ショウに答えた


「ポピーね。確かに変態的な行動をとるけど、中身は人の良さそうなお爺さんに片足突っ込んだおじさんぽいけど、アナタはナチュナルに変態じゃない」


「そんな!」


 ポピーはメアリーの意見に反論した


「お爺さんに片足突っ込んでないよ!まだつま先あたりだよ! それに変態は普通に見えるのが一番怖いんだぞ!」


 しかしポピーに鳩鳥は優しいくこう言った


「感性の鋭いメアリーがそう言ってるんだ、間違いなく片足突っ込んでるよ。変態ぶってる人の良いオッサン」


「拡大解釈して言ってるでしょそれ! そうだよねルーシー殿」


「・・・・」


 ポピーの問いかけにルーシーは目をそらして黙ってしまった


「ルーシー殿まで!?」


 取り乱すポピーを見てメアリーは一言ボヤいた


「どんだけ変態キャラの拘り持ってるのよ・・・」


「メアリン!」


 ポピーの気迫に押され、ついはいと返事してしまうメアリー


「はい! なに?」


「感性の強いメアリンだからこそお聞きしたい! ・・・・ボクの頭の踏み心地はどうだった?」


「え、気持ち悪い」


 メアリーは即答し、その言葉を聞いたポピーは何度も頭を下げた


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


「はは・・・、どうも」


 ポピーに呆れるメアリーをよそに、鳩鳥たちは盛り上がっていた


「とにかくこれでルー爺の代わりを見つけたな! また俺達で優勝しようぜ!」


「これでルーベンスお爺様も安心して私達を見守れることでしょう」


「その言い方だとルー爺が死んだみたいじゃないか、やめてよルーシー」


 三人の言葉を聞いてメアリーは驚く


「え、ハトちゃんも大会出てたの!?」


「そうだよ、俺とショウとルー爺の3人で出場したんだ」


「90代のおじいさんに何無理させてるのよ!」


 叫ぶメアリーにルーシーが言った


「だから体力的に次に出場は難しいと主治医から言われまして・・・」


「でしょうねぇ・・・」


「しかしやっと後継者が! ショウが継いだらどうしようかとハラハラしてましたわ!」


「泣くなんて大げさよルーシー・・・・・。私が継ぐの!?」


 鳩鳥は元気よく肩を叩きながら断言した


「当たり前だろ! これから不意摩な時に特訓しようぜ!」


「え、いやよ!そんないきなり! それにショウに立場は?」


「え、僕は楽しく遊べる環境が有ればそれでいいよ」


「おい!」


 鳩鳥はショウの肩も掴んでこう言った!


「よし!次の大会に向けてがんばろうぜ!」


 メアリーは悲痛な叫び声を上げた


「いや!!普通にゲームえを遊ばせて!」


 ショウはメアリーの叫び声を聞いて、笑顔でこう言った


「遊んでいる中に上手くなるよ。無理はもうさせないから、一緒にこの世界を楽しもう!」









 そして申し訳なさそうに鳩鳥が問題発言をして、みんなからそうツッコミを食らった


「やべぇ、次の大会なもう無いと思って、家の修理費に大会で手に入れたゲーミングPC売っちまった・・・・・・」


      

           「「なんて事してんのさ!」」

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アナグノリシス ~ゲーム初心者は無能ベテランとネトゲする~ 軽見 歩 @karumi

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