解決策
「聞いたぞ憂依、お前ボランティア部に入るんだって?」
学校に来るなり寄ってくる歩。
「いや誰から聞いたんだよ。誰にも言ってねぇぞ」
「島中さん?と桜井さん?がお前のこと話してたって他のクラスのやつが」
···こいつもう他のクラスに友達がいんのか···
いや、俺もか
「で、本当なのか?」
「ああ、断る理由も無かったしな」
「そっかぁ、あの憂依がなぁ···!なんにもやる気を起こさなかったあの憂依が···!」
わざとらしく泣き真似する歩
「お前もっと演技磨いたほうがいいぞ···」
「はぁ?俺の演技は超一流だっての!」
「いや、今の演技はゴミだったわ。お前俳優目指してんだろ?」
「おう!みてろよぉ、今に大活躍してやるからな!」
「ハイハイ、期待してるよ」
そんな会話をしているうちに教室につき、それぞれの席に向かう。
思った通り、歩をボランティア部に入れるのは無理なようだ。
週一で養成所に通っているようだし、何より演劇部に入ると前から言っていた。学校終わりにはバイトに入っているようだ。俺には到底真似できない。
とはいえ、あと一人部員が必要なのも確か。どうするか、後でふたりのところに行ってみよう。
━━━━━━━━━━━━━━━···
休み時間、俺は桜井さん達のいる組へ向かう。
少し教室を覗くと、桜井さんと中島さん、2人で話をしているのが見えた。
「ん?あ!榊くん!ちょうどよかった!」
島中さんがこちらに気づき、俺を呼ぶ。
「何話してたんだ?」
「あと一人の部員どうするか、花凜ちゃんと話してたんだ」
「やっぱりか。何か良い策はあったのか?」
「それが、あんまりいいのが思いつかなくてさ。榊くんは誰か心当たりとかないかな?」
「俺の唯一の男友達、歩は演劇部に入るらしくてな。もう何もなしさ」
「そっか、流子ちゃんももう誰もいないんだよね?」
「うん···ごめんね」
「いやいや!何も謝ることはないって!」
「とは言っても、このまま何もしない訳にはいかんよな」
「うん、今日のお昼にでも先生のとこ行ってみようかと思うんだけど、2人はどうする?」
「もちろん私も憂依くんも行くよ!」
「ありがとう!」
何かさりげなく行くことにされたが、まあいいか
「んじゃ俺はもう戻るから」
「うん!じゃあまたお昼休みにね!」
小さく手を振る桜井さんを背に、俺は自分のクラスへと戻った。
━━━━━━━━━━━━━━━···
昼休み、ボランティア部(仮)の3人で昼食を済ませ、職員室へ向かう。
「失礼します。1年2組の島中花凜です」
島中さんに続き、俺と桜井さんも入室。
「ん?ああ、島中に桜井か、どうした?」
「はい、ボランティア部のことで」
「もしかして部員が集まったのか?」
「いえ、それはまだ彼を含めて3人しか···」
「うーん、それじゃあまだ部活としてはなぁ」
「部員募集したりしてるんですが、どうにも集まりそうもなくて···。何か解決策がないかなと思いまして」
「まぁ、ないこともないが···」
「!!何かあるんですか!?」
「···いやこれはあくまで最終手段。上手くいくとも限らんし、しばらくは部員を増やす策を練るしかない」
「そんな···、じゃあ部員を増やす方の策はないんですか?」
「ない!」
「即答しないでくださいよ···」
「仕方ないだろう。俺が思いつくことはもう全部やってんだか」
「うう···」
「とにかく、あと三日で何も成果なかったらまた来い。それまでは、自分たちで努力しな」
「はい···」
好ましい成果が得られず、少ししょんぼりした様子の島中さんだった。
━━━━━━━━━━━━━━━···
「最終手段てなんなんだろうね?」
「さぁ···けど成功しないかもって言ってた···」
「ま、まぁ何とかなるよ!元気だそ?」
気を落としている島中さんを励ます桜井さん。
「そうだね。落ち込んでてもしょうがないね。ありがと」
「それで、いくつかやってたみたいだけど、どんなことしてたんだ?」
「えっとね、募集チラシは貼ったし、知り合いには声かけたけど···」
「ん、まぁその2つだよなぁ。他にいい策···か」
「ん〜、でももうお昼休み終わっちゃうよ?」
「またか。もう少し長けりゃいいのになぁ」
「そうだけど、言っててもしょうがないよね」
「うん、この話はまた後でね」
俺たちはとりあえず話を切り上げ、掃除へと向かうことにした。
部員1人を集めるのも中々に大変そうだ。
だがやると言った以上は、俺なりに力を尽くさないとだめだろう。
放課後までに、何かいい策がないか、考えてみることにしよう。
君が成す名を 岩木 久四郎 @nyataro
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