愛創造

 ぼんぼんと嗤う己の外面が、世界の有様を腐らせる。奈落にも墜ちない生の縋りが、俺の破滅を無視して歌う。謳われた存在も何れは最悪を得、真実と呼ばれる滑稽に抱擁されるのだ。此処は何処だって。貴様は誰だって。何故、言葉を吐いて物語を『当然』の如く紡いで在るのか――落ち着き給え。お前だって俺の副産物だと理解わからず、莫迦らしい夢に精神を融かすのだ。最初からだ。最後まで俺と遊べたならば笑い話でも何でも好きなように扱うが好い。で。ああ。此処は『俺』だ。俺の中だ。正確には『俺』の中ではない。未知の中だ。変化が起きたのは――昨日か一昨日か昨年かショゴスが生まれた年か。ヨグ=ソトホウトの渦の中だと、俺は悟ったと思われ――足だ。小指だったか。俺が違和感に苛まれたのは其処からだ。ピクリピクリと震え出した、爪が。無意識。普遍的なものだ。好奇心に餓えた探索者とやらは結局、自ら悦んで地獄に下る。降る……おっと。話が逸れたな。癖なのだよ。ええと。俺の足の先が『ぴくり』と誰かに操られた気分に陥り、吐きそうな面を晒した始まり。登るのだよ。上るのだよ。昇るのだよ。天使が魂を、夜の鬼が夢見る愚かを、迎えるように。俺の端から端が蝕まれる――勿論、途中までは錯覚だと信じて疑わなかった。勿論、よくある怪奇だと信じて哄笑した。胴体さ。俺が胴体からだ。可哀想に。俺は俺を慰めた。もはや俺の肉体は俺のものに在らず、未確認の何かに憑かれたと。だがな。此れも優しい恐怖に過ぎなかった。神よ。如何か。アザトートの抱擁に真実を生じ給え――皮が。肉が。骨が。臓物が。精神までも、俺は操り人形に仕立てられた。再構築させられた。ところが、俺は気付いたのだ。と。俺の手足は解放された。一時的な麻痺は自己暗示だったのだ。


 我々の脳髄は肉に囚われた黄身だ。


 気味が悪い。不気味だ。無気味だ。背筋が凍り――少し考えた。理解わかった。俺が解放されたのではない。脳味噌が解放されたと勘違いしたのだ。シャッガイの連中は新たなる寄生の方法を獲得したのだ。違う。シャッガイでも無い。此れは新たなる種族の到来。誰も知らない生命の再構築なのだ。俺の結論はみそを――何だって。物語を読み過ぎだ? いあいあ。此れは真実だ。真実と呼ばれる滑稽だ。だから俺は答えをお前に委ねよう。俺の脳味噌は正気か。肉体は本物か。卵の中身は何なのか。


※※※


 何ぃ。新種の生物が発見された?

 そりゃあ。奴の戯言だろう?

 ええ。ええ。もちろん。

 人間が卵から生まれる筈がありません。

 ありゃあ――ただの水槽やつ、中身は空です!

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愛創造 @souzou_Love31535

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