第6話 ラストバトル3 sideヒロイン
彼は体力も魔力もあるのに、どうして弓で戦うのか、疑問に思って聞いたことがあった。
『例え俺が何になっても、狩人だと言いたいから』
僅かに目を伏せて、返された答え。
彼は狩人夫婦に拾われ、育てられたのだという。
-ご両親の事、好きなんだね。
私の言葉に返ってきたのは、初めて目にする、彼の心からの笑みだった。
あの時、彼の笑顔が可愛いって、はじめて思ったんだ。
目を開くと、白い天井が見えた。
「な、んで?」
私は死んだはずじゃないのか。
敵は、倒さてはいないの?
思わずがばりと起き上がると、色んなところが痛んで、私はうめいた。
「気がついたのか!?」
すぐに彼が、蹲りかけた私を支えてくれる。
「なんで・・・?」
縋るような思いで聞いた私から、彼は目を逸らした。
「ごめん」
何故謝るのか。あの時、彼は敵の脅しにも負けず、弓を射てくれたはずでは?
「ごめん、俺はお前を呪った。
俺と命を同じくするように」
意味がよくわからなくて、彼をただ、じっと見つめた。
「俺とお前は、一つの同じ命で生きてる。
だから、俺が死ねばお前も死ぬ」
それは敵から受けていた呪いに似ていた。
だけど。
「私が死んだら・・・?」
呆と問いかけた私に視線を戻し、彼は答えた。
「俺も死ぬ」
今まで私を縛っていた呪いに、それは似ていた。
けれど、決定的に違っていた。
ようやく理解した私は、彼にしがみ付いて泣いた。
嗚咽をこらえようとも思えなかった。
縋りつく私を、彼は強く抱きしめてくれた。
「好きだ」
彼が、囁いた。
「好きだ」
再度搾り出すように告げられ、さらに涙が止まらなくなった。
ようやく落ち着いたとき、私は彼に強請った。
「笑って。私、あんたの笑った顔が好き」
もう一度どうしても見たかったその笑顔。
ふ、と微笑んだ彼に
「可愛い」
素直にそう告げ、笑った。
彼と二人で笑いあって、そうして目を瞑った。
そうして二人、唇を寄せ合った。
生きて帰れたら、結婚。
あなたと生きていけるなんて、思っていなかった。
二人で長生きしよう。
二人の子供が、さらに子供を育てるまで。
ずっと二人、見守っていこうね。
ラストバトル 珠貴 朝香 @tensora0107
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