第十二話 ミッドウェー攻撃隊発進

 南雲機動部隊は、第二警戒航行序列で、先頭は第十戦隊旗艦の軽巡「長良」、その後方を戦艦「榛名」「霧島」が続き、其の後方を空母「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」が進み、空母をとり囲むように右側にを中心として、第十七駆逐隊の駆逐艦「浦風」「磯風」「谷風」「浜風」が、その後方に第十駆逐隊の駆逐艦「夕雲」「秋雲」が進む。左側には第四駆逐隊の駆逐艦「嵐」「萩風」「野分」「舞風」その後方を第十駆逐隊の残り二隻「風雲」「巻雲」がすすむ。この隊形の右側五千メートルに重巡「利根」が、左側五千メートルに同「筑摩」が進む。部隊は二十四ノットの速度で、北西方からミッドウェーに迫っていた。


 三日の一五三〇南雲長官は五日のミッドウェー攻撃と索敵の要領を発令した。


 五日ノ攻撃法ヲ第一法トシ捜索線ヲ七線トス

 第一 一八〇度 赤城

 第二 一五八度 加賀

 第三 一二三度

 第四 一〇〇度

 第五  七七度

 第六  五四度

   以上四線 第八戦隊

   進出距離何レモ三〇〇浬 側程度何レモ左ヘ六〇度

 第七  三一度

   第三戦隊 進出距離一五〇浬 側程左ヘ四〇浬

 赤城ハ右ノ外天候偵察機ヲ準備スベシ

 出発時刻ハ後令ス


 この命令に基づき阿部司令官は、第八戦隊の捜索線を第三、第四を「利根」に、第五、第六を「筑摩」に指定した。


 四日、南雲長官は作戦に関する新たな命令を発した。


四日一〇二五

明日攻撃隊発進後ノ艦隊行動予定ヲ左ノ通定ム

一 第一次発進後三時間三〇分 針路一三五度速力二四節

  爾後偏東風ノ場合ハ針路四五度速力二〇節

    偏西風ノ場合ハ針路二七〇度速力二〇節

二 敵情ニ応ジ行動ニ変更アルヤモ知レザルヲ以テ 制空隊

  ノ集合竝ニ収容ニ就テハ特ニ留意スルヲ要ス

三 特令ナケレバ索敵線ハ攻撃隊ト同時ニ出発スベシ


 一五一〇「赤城」の電信室の敵信班は敵哨戒機の電波らしいものをとらえた。


 駆逐艦「谷風」にて当直見張をしていた柴田正三等兵曹が

敵の索敵飛行艇を発見している。


『もう夕暮れも近い午後三時ごろのことである。私は艦橋で右舷の当直の立って見張りをしていたが、右九十度、わが艦より三万メートルの水平線上に、敵機一機を発見した。

 よく見ると、コンソリーデーテッド四発のカタリナ水上飛行艇である。向かって左より右に、わが艦隊と同行して飛行している。私は直ちに、

「敵飛行艇一機、右九十度、三百、左に行く」

 と大声で報告する。敵機見ゆ。第一発見艦より通報信号「煙幕を出せ」の号令が発せらえる。私の記憶は定かではないが、わが谷風が第一番に煙幕を発して警戒通報したのではないかと思う。

 そのうち、右九十度の重巡利根より、対空戦闘が開始され、高角砲が撃ち上げられる。

 空母赤城より数機の零式戦闘機が緊急発進して、敵機を追う。わが谷風よりは発砲しなかった。なぜなら、わが主砲は一万三千メートルしか飛ばない。高角砲で九千メートルである。敵の四発水上飛行艇は、ゆっくりと飛行をつづけ、無傷のまま水平線の彼方に消えて行った。』

(柴田正著『死生の海から還った駆逐艦「谷風」』、丸別冊太平洋戦争証言シリーズ⑦「運命の海戦」、潮書房)


 空母「赤城」より零戦三機が発進したが、飛行艇をとらえることはできなかった。つづいて一六四〇に「利根」が二六〇度方向に敵機約十機を発見したため、「赤城」の艦上で待機していた零戦三機が緊急発進したが発見できず、戦闘機は「赤城」に収容された。


 カタリナ飛行艇はミッドウェー基地に打電した。

「敵航空母艦群見ゆ」

 その後詳細を伝えた。

「敵の航空母艦二隻及び戦艦数隻の位置は、ミッドウェー島からの方位三二〇度、距離一八〇浬、その針路一三五度、速力二十五節」

 この内容は米空母でもキャッチしていた。フレッチャー少将、スプルーアンス少将は日本機動部隊の所在が確認できたことで、先制攻撃を仕掛けるべく動き始めた。


 南雲部隊の各空母ではミッドウェー攻撃隊の準備が急がれていた。爆撃機には爆弾が装着され、エレベーターで甲板上とあげられていく。零戦には機銃弾と増槽タンクが装備され、最後に甲板上にあげられ、試運転が始まっている。


 病室のベッドで淵田中佐は上から聞こえてくる試運転の爆音に目をさました。盲腸傷跡の縫合糸は昨日抜糸されたばかりである。ベッドから起き上がったが、食べていないためにふらつく。どうにか隣にあるバスルームに入り、体をタオルでぬぐい、口をすすいで顔を洗った。これだけの作業だが息切れを感じた中佐は再び病室のベッドであおむけになり一息いれた。

 中佐は爆音の音を聞いてどうしても現場に行きたい気分であった。病室をこっそり抜け出し、防水壁の扉は閉ざされているので、せまいマンホール通路を通り抜けながら進んだが、もの凄い疲労を感じて、時々腰を下ろしては進んだ。暗いなかをラッタルを飛行甲板下の私室に入った。しばらく休んだのち、病衣から軍服に着替えて、発着艦指揮所へ顔を出した。

 中では飛行長増田中佐が発艦前の采配を指示していた。人の気配したので、増田中佐が入口を振り返ると淵田中佐の姿だった。

「隊長、もう出て来てもいいのかい?」

 増田中佐が体の様子を尋ねた。

「やあ、まだお許しは得てないんだが、病室にいたんでは気がもめてしまうからね、まあ見せてください」

 隣にいた村田隊長も声をかけた。

「隊長、無理しないでくださいよ」 

 淵田中佐は空を仰いだ。まだ暗く、雲もかなり覆っていたが、飛行には差し支えがなさそうで、海上も穏やかであった。

「日の出は何時だい?」

 隣にいた布留川大尉に聞いた。

「午前二時です」

 と応えた。続けて、

「索敵機がもう出たのか」

「いや、第一次攻撃隊と一緒に出ます」

「一段索敵だな?」

「そうです。いつもの通りですよ」

 いつもの通りという言葉に淵田中佐はインド洋作戦の時を思い出していた。あのときは、コロンボ攻撃、ツリンコマリー攻撃の時に、索敵機が敵の水上部隊を発見していた。

「いつもの通りだと。またミッドウェーを攻撃しているときに、索敵機は敵艦隊を発見するぜ。そこの準備はいいのかい?」

 村田少佐が応えた。

「大丈夫ですよ、隊長。第一次攻撃隊が出た後、第二次攻撃隊が艦船攻撃兵装で待機していますからね、江草の急降下爆撃隊と私の雷撃隊、それに板谷少佐の制空隊が控えています」

「なるほど、そいつはベスト・ワンの編制だ。むしろ敵機動部隊が出てくれた方が早く片付いていいぐらいだ。ところで索敵機はどうなっているのかね?」

 布留川大尉が図板を示しながら説明した。

「索敵線七本です、索敵方面は東方と南方で、この通りミッドウェーをはさんでいます。索敵機は赤城と加賀から艦上攻撃機各一機、利根と筑摩から水上偵察機各二機、それに榛名から水上偵察機一機が派出されます。索敵進出距離は榛名機のほかは、いずれも三〇〇浬ですが、榛名機だけは九五式二座水上偵察機ですから一五〇浬になっています」

 淵田中佐は説明を聞きながら、一段索敵の粗さを感じ、二段索敵の必要性を感じていた。

 索敵に機数を割り当てれば、それだけ攻撃隊の機数が減少する。四空母からくる総機数の具合が索敵機の不足という事情があった。これが響いてくることと結果的にはなってしまった。


 各空母の攻撃隊の編制は次のようになっていた。


ミッドウェー攻撃隊

指揮官 大尉 友永丈市  

空母 赤城  

 爆撃隊   九九式艦爆 十八機  二五〇キロ×一八 

  指揮官 大尉  千早猛彦 

  第一中隊 第一小隊 一番機 操縦 古田清人一飛曹

                偵察 千早猛彦大尉

            二番機 操縦 秋元 保一飛曹

                偵察 山本義一一飛曹

            三番機 操縦 芥川武志一飛

                偵察 佐々木三男三飛曹

       第二小隊 一番機 操縦 尾関平一飛曹長 

                偵察 本山泰之中尉

            二番機 操縦 山田己作一飛曹

                偵察 土屋亮六三飛曹

            三番機 操縦 大野 孝一飛

                偵察 松尾 勉二飛曹

       第三小隊 一番機 操縦 高野秀雄一飛曹

                偵察 清水竹志飛曹長

            二番機 操縦 向後 栄三飛曹

                偵察 川井 裕二飛曹

            三番機 操縦 加藤政也二飛曹

                偵察 大沼與三郎三飛曹

  第二中隊 第一小隊 一番機 操縦 山田昇平大尉

                偵察 前川賢次飛曹長

            二番機 操縦 河野卓士一飛曹              

                偵察 土屋睦郎一飛曹

            三番機 操縦 望月伊作三飛曹

                偵察 長谷川菊之助三飛曹

       第二小隊 一番機 操縦 田中義春一飛曹

                偵察 斉藤千秋特務少尉

            二番機 操縦 雨宮伊佐男三飛曹

                偵察 山下敏平一飛曹

            三番機 操縦 石井信一二飛曹

                偵察 堀江一元二飛曹

       第三小隊 一番機 操縦 鈴木 要一飛曹

                偵察 野坂悦盛飛曹長

            二番機 操縦 菊地五一三飛曹

                偵察 飯田好弘二飛曹

            三番機 操縦 山川光好一飛

                偵察 青木豊三郎二飛曹

   制空隊 零戦  九機

       第二小隊 一番機 白根斐夫大尉

            二番機 菊地哲生一飛曹

            三番機 井石清次二飛曹

       第三小隊 一番機 大森茂高一飛曹

            二番機 岩間品次一飛曹

            三番機 森 栄三飛曹

       第四小隊 一番機 木村惟雄一飛曹

            二番機 川田要三三飛曹

            三番機 石田正志一飛

空母 加賀

 爆撃隊 九九式艦爆  十八機 二五〇キロ×一八

  指揮官  大尉 小川正一

  第一中隊 第一小隊 一番機 操縦 小川正一大尉

                偵察 吉川克己飛曹長

            二番機 操縦 田中武夫一飛曹

                偵察 勝見 一一飛曹

            三番機 操縦 宮長長市一飛曹

                偵察 平山繁樹三飛曹

       第二小隊 一番機 操縦 中村五郎中尉

                偵察 内川祐輔一飛曹

            二番機 操縦 村上吉喜二飛曹

                偵察 黒木壽三一飛

            三番機 操縦 渡辺利一一飛

                偵察 木村 昇三飛曹

       第三小隊 一番機 操縦 引宇根幸男一飛曹

                偵察 河合治郎飛曹長

            二番機 操縦 西森俊雄二飛曹

                偵察 別宮利光一飛曹

            三番機 操縦 児島徳男二飛曹

                偵察 小島武彦二飛曹

  第二中隊 第四小隊 一番機 操縦 樋渡利吉飛曹長

                偵察 渡部俊夫大尉

            二番機 操縦 小野 源二飛曹

                偵察 久恒吾市二飛曹

            三番機 操縦 山口利七三飛曹

                偵察 岩政将雄二飛曹

       第五小隊 一番機 操縦 今宮 保一飛曹

                偵察 中島米吉飛曹長

            二番機 操縦 吉元実秀二飛曹

                偵察 永峯雪雄二飛曹

            三番機 操縦 砥綿清美三飛曹

                偵察 北村一郎二飛曹

       第六小隊 一番機 操縦 藤本卓馬飛曹長

                偵察 市町隼一一飛曹

            二番機 操縦 鈴木大一一飛曹

                偵察 渡辺政造二飛曹

            三番機 操縦 谷奥 一一飛

                偵察 川口俊光一飛

  制空隊  零戦 九機

       第一小隊 一番機 飯塚雅夫大尉

            二番機 田中行雄一飛曹

            三番機 高岡松太郎一飛

       第二小隊 一番機 鈴木清延一飛曹

            二番機 長浜芳和一飛曹

            三番機 高橋英市一飛

       第三小隊 一番機 萩原二男一飛曹

            二番機 井藤廣美一飛曹

            三番機 恵川好雄一飛

空母 飛龍 

 爆撃隊  九七式艦攻 十八機

 指揮官 大尉 友永丈市

 第一中隊 第一小隊 一番機 操縦 友永丈一大尉

               偵察 橋本敏男大尉

               電信 村井 定一飛曹

           二番機 操縦 鵜飼美弘一飛曹

               偵察 梅澤幸男一飛曹

               電信 仲野開市一飛曹

      第二小隊 一番機 操縦 高橋利男一飛曹

               偵察 赤松 作特務少尉

               電信 小山富雄三飛曹

           二番機 操縦 杉本八郎一飛曹

               偵察 肱黒定美一飛曹

               電信 谷口一也三飛曹

      第三小隊 一番機 操縦 放久保 己二飛曹

               偵察 鳥羽重信一飛曹

               電信 森田 實一飛曹

           二番機 操縦 宮内政治二飛曹

               偵察 山田貞次郎二飛曹

               電信 宮川次宗二飛曹

 第二中隊 第一小隊 一番機 操縦 菊地六郎大尉

               偵察 湯本智美飛曹長

               電信 楢崎廣典一飛曹

           二番機 操縦 新田 潔一飛曹

               偵察 坂門行雄一飛曹

               電信 久原 滋一飛

      第二小隊 一番機 操縦 坂本憲司一飛曹

               偵察 龍 六郎飛曹長 

               電信 二宮一憲二飛曹

           二番機 操縦 中尾春木一飛

               偵察 丸山泰輔一飛曹

               電信 浜田義一一飛

      第三小隊 一番機 操縦 大林行雄飛曹長

               偵察 工藤博三一飛曹

               電信 田村 満一飛曹

           二番機 操縦 木村甚一飛

               偵察 吉村武夫飛曹長

               電信 森口五男三飛曹

 第三中隊 第一小隊 一番機 操縦 角野博司大尉

               偵察 稲田政司飛曹長

               電信 文宮府知三飛曹

           二番機 操縦 石井善吉一飛曹

               偵察 小林正松一飛曹

               電信 島田 直三飛曹

      第二小隊 一番機 操縦 野中 覚飛曹長

               偵察 中島政時一飛曹

               電信 金澤秀利二飛曹

           二番機 操縦 鈴木 武一飛

               偵察 斉藤清西一飛曹

               電信 鈴木睦男二飛曹

      第三小隊 一番機 操縦 柳本拓郎二飛曹

               偵察 衛藤親思一飛曹

               電信 笠井 清二飛曹

           二番機 操縦 永山義光三飛曹

               偵察 中村豊弘一飛曹

               電信 小浜春雄一飛

 制空隊  零戦 九機

      第一小隊 一番機 重松康弘大尉

           二番機 村中一夫一飛曹

           三番機 新田春雄二飛曹

      第二小隊 一番機 峯岸義次郎飛曹長

           二番機 佐藤隆亮一飛曹

           三番機 千代島 豊三飛曹

      第三小隊 一番機 徳田道助一飛曹

           二番機 原田敏尭二飛曹

           三番機 林 茂一飛

空母 蒼龍 

 爆撃隊  九七式艦攻 十八機

 指揮官  大尉 阿部平次郎 八〇〇キロ×一八

 第一中隊 第一小隊 一番機 操縦 笠原治助飛曹長

               偵察 阿部平次郎大尉

               電信 小町 齢一飛曹

           二番機 操縦 潮 満之助一飛曹

               偵察 藤波貫二飛曹長

               電信 若宮秀夫二飛曹

           三番機 操縦 茅原義博三飛曹

               偵察 田中敬介一飛曹

               電信 小川政次二飛曹

      第二小隊 一番機 操縦 佐藤壽雄一飛曹

               偵察 中村太門飛曹長

               電信 渡辺勇三一飛曹

           二番機 操縦 藤原嘉六三飛曹

               偵察 石井利一一飛曹

               電信 西田孝雄三飛曹

           三番機 操縦 岩田高明二飛曹

               偵察 鹿熊粂吉一飛曹

               電信 土井敬二二飛曹

 第二中隊 第一小隊 一番機 操縦 伊東忠男大尉

               偵察 川木良枝飛曹長

               電信 太田五郎一飛曹

           二番機 操縦 大多和達也飛曹長

               偵察 向畑壽一一飛曹

               電信 倉谷定茂二飛曹

           三番機 操縦 鶴見 茂二飛曹

               偵察 紺野嘉悦三飛曹

               電信 浮ケ谷 弘三飛曹

      第二小隊 一番機 操縦 森 拾三一飛曹

               偵察 金井武和飛曹長

               電信 細田喜代人二飛曹

           二番機 操縦 木村 正二飛曹

               偵察 加藤豊則一飛曹

               電信 秋浜哲郎三飛曹

           三番機 操縦 佐藤長作二飛曹

               偵察 安藤百平二飛曹

               電信 永井福太郎一飛

 第三中隊 第一小隊 一番機 操縦 原田正澄一飛曹

               偵察 山本貞雄大尉

               電信 鈴木四郎二飛曹

           二番機 操縦 越智正武一飛曹

               偵察 八代七郎飛曹長

               電信 早川潤一一飛曹

           三番機 操縦 宮崎徳三郎三飛曹

               偵察 佐野 覚一飛曹

               電信 江塚 壽二飛曹

      第二小隊 一番機 操縦 根食貞憲二飛曹

               偵察 大迫加一飛曹長

               電信 丸山忠雄一飛曹

           二番機 操縦 川島甲治二飛曹

               偵察 杉山弘興一飛曹

               電信 荒井辰雄二飛曹

           三番機 操縦 田辺正直二飛曹

               偵察 佐藤 久二飛曹

               電信 新井嘉年雄二飛曹

 制空隊  零戦  九機

     第一五小隊 一番機 菅波政治大尉

           二番機 三田 一飛曹

           三番機 岩渕 一飛

     第一六小隊 一番機 田中 平特務少尉

           二番機 萩野 二飛曹

           三番機 土井川 三飛曹

     第一七小隊 一番機 杉山武夫一飛曹

           二番機 野田 一飛曹

           三番機 吉松 二飛曹

             (一部フルネーム不明)


「搭乗員整列五分前」

 飛行長をはじめ飛行隊長、全搭乗員が待機室に集まっていった。やがて、搭乗員は飛行甲板に飛び出し、自分の搭乗機の方へ走っていった。

「発艦配置につけ」

 の号令がかかり、

「機械発動」

 ブルブルッとプロペラが回り始めた。

「艦橋、風に立ててください。合成風速十四メートルにお願いします」

「では隊長、行って参ります」

 艦爆隊の千早大尉が出発の挨拶をかわした。千早大尉は艦爆へとむかい、偵察席に乗り込んだ。機の両翼にある赤と青の航空灯がパッとついた。つづいて、夜間発艦のために、飛行甲板照明のフットライトが点灯し、飛行甲板が明るくなった。

「発艦用意よろしい」

 飛行長が艦長に報告した。艦は風に立って速力を増している。発着艦指揮所の風速指示計が十四メートルを示した。

「発艦はじめ」

 艦橋からの号令がかかる。飛行長が緑色のランプをさしあげてクルリと円を描いた。一番先頭にある零戦の白根大尉機がエンジンをうならせて滑走をはじめ、甲板の先からフワリと上昇していった。二番機、三番機と零戦が発艦し、九機がとびあがると、九九式艦爆が続いて発艦していく。艦爆は爆弾を抱いているので、さすがに先端から一瞬高度を下げるが、無事に上昇していく。艦の両舷では帽フレで見送っている。

 上空では、他の空母からの飛行機も合わせて徐々に旋回しながら編隊を組みはじめていた。

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