第六話 米機動部隊マーシャル諸島を攻撃

 二月一日午前三時、搭乗員たちは起床して攻撃に向かう準備をはじめた。WEB上のUSS ENTERPRISE CV-6にあるマーシャル諸島の戦いには次のように記されている。


”At 0430, Enterprise turned into the wind. Thirteen minutes later, six F4F Wildcats roared into the black night for Combat Air Patrol, followed immediately 36 Scouting Six and Bombing Six SBDs led by Enterprise Air Group commander CDR Howard L. Young. Just after 0500, a second strike of nine TBD Devastators from Torpedo Six, and an SBD delayed by engine trouble, rumbled down the Big E's flight deck.”

「四時三十分、エンタープライズは風上に転じた。十三分後、六機のF4Fワイルドキャットは夜間の戦闘哨戒に発進し、続いて航空隊指揮官ハワード・L・ヤング中佐率いる第六爆撃隊のSBD爆撃機三六機が発進した。五時過ぎに、第六雷撃隊のTBDデバステーター九機とエンジントラブルで遅れたSBD

一機が爆音を靡かせながら飛行甲板から飛び立った。」


 SBDドーントレス爆撃機はクエゼリン環礁の北端に位置するロイ島(ルオット島)目指し、デバステーター攻撃隊はクエゼリン本島を目指していた。

 爆撃隊は朝靄の影響で視界がさえぎられ、しばらくは島を発見できずにいた。そうこうするうちに、日本軍見張所により発見されてしまった。

 対空砲火が砲撃を開始し、爆撃中隊長のH・L・ホッピング少佐機が第一弾を投下したものの被弾して撃墜された。他に三機が対空砲火もしくは戦闘機により撃墜され、反対に日本機三機を撃墜したと報告した。爆撃により飛行場施設数箇所に被害を与え、弾薬庫を炎上させた。


 ユージン・リンジー少佐率いる雷撃隊九機は環礁内に目標があることを報告し、ドーントレスのヤング中佐は五〇〇ポンド爆弾を温存していた爆撃機にたいしてリンジー少佐に合流するよう命じ、この通信を傍受したハルゼー中将は予備として残していた雷撃隊九機を出撃させた。

 環礁内には潜水艦、駆逐艦、商船、油槽船などがあり、ロイ島よりドーントレス十機が分離して攻撃した。また、べつにエンタープライズより発進したデバステーター九機が攻撃して、、潜水艦、補助艦艇数隻、軽巡一、小型航空母艦一を撃沈したと報告したが、実際の戦果はゼロであった。


 クェゼリン第六艦隊の戦闘詳報の「対空戦闘経過」は次のようになっている。


 〇三五一 敵機二機の「クエジェリン」本島来襲発見

      「対空戦闘」「十二節即時待機」「沈座」下令


自〇四〇〇 一、艦隊泊地に約九機の爆撃機来襲三機又は二機

至〇四二五  編隊にて高度二〇〇〇米乃至二五〇〇米にて香

       取、常盤、平安丸、靖国丸に対し異方向より進

       入する逐次攻撃を実施す

      二、各艦は対空砲火の全力を挙げて敵機を撃攘す


自〇四一八 一、敵爆撃機六機編隊のもの三隊計一八機来襲

至〇四五五  香取、平安丸、靖国丸、潜水艦等に対し、高度

       三〇〇〇米付近三機乃至六機にて一列の爆撃準

       備隊形を作りたる後 降下開始蛇行運動にて砲

       火を回避しつつ約一五〇〇米付近迄第一弾投

       下 爾後七〇度付近にて急降下、五〇〇米付近

       にて爆弾(二五〇瓩と推定)一発を投下す

      二、本急降下爆撃中対空兵装貧弱なる靖国丸、平

       安丸、東亜丸及錨地北方二十粁に分離せる新玉

       丸に対し先の水平爆撃緩降下低高度(七〇〇乃

       至五〇〇米)爆撃を実施す

      三、各艦は対空砲火の全力を挙げて敵機を撃攘す

      四、潜水艦は沈座せり

      五、東亜丸、新玉丸は機銃の装備なく小銃竝に主

       砲(八糎水平砲)を使用対空戦闘を実施せり


自〇六〇〇 一、「ビゲジ」島の北方より 西方にい迂回来襲

至〇六一〇  せる雷撃機九機を発見す

      二、三機宛二分し 各組毎に香取、靖国丸、東亜

       丸を襲撃す

      三、香取は約十四節にて航行単艦回避

        靖国丸は近錨付近にて機械を使用回頭回避を

        実施せり

      四、雷撃機に対しては高角砲、機銃の外 香取主

       砲十四糎砲通常弾一四発 平安丸一五糎砲一三

       発、靖国丸一五糎砲一二発、新玉丸、東亜丸各

       主砲(八糎砲)の平射砲を使用

       新玉丸は敵雷撃機一を撃墜せり

      五、雷撃機魚雷発射後機銃掃射を受けたるも被

       害僅少たり


 ワイルドキャット戦闘機五機はタロア飛行場にむかい、邀撃してきた九六式戦闘機と交戦して二機を撃墜したと報告した。

 ロイ島攻撃に向かった第一次攻撃隊のうち帰還後、ドーントレス九機は九時三十五分再びロイ島にむけ攻撃に飛び立った。


 スプルーアンス少将指揮の巡洋艦部隊は、ウオッゼ環礁を砲撃した。重巡「ノーザンプトん」と「ソルトレーク・シテイ」は全砲門を以て七時十五分砲撃を開始した。目標は環礁内に残っている軍艦数隻と思われるものであったが、ほとんど命中はなかったようだった。


 マロエラップ環礁のタロア島にたいしてはワイルドキャット戦闘機六機が攻撃隊として向かうところが一機は発艦時に墜落。日本側は十一機の九六式戦闘機で迎撃し、それぞれ数機を撃墜したとしたが、実際は日本の九六式一機が失われた。米軍は第二次攻撃と第三次攻撃と攻撃を続行し、飛行場施設や燃料タンク炎上、地上撃破九機などの戦果を報じたが、空中での損失は両軍ともなかった。


 ショック大佐の重巡「チェスター」はタロア島への艦砲射撃に近接したが不運に見舞われた。千歳空陸攻八機の攻撃を受け、そのうち六〇キロ爆弾一発が命中し、戦死は八名、負傷十一名を出した。

 これは千歳空中井一夫大尉率いる九六式陸攻八機で急遽二五〇キロ一、六〇キロ五〇発を積んで飛び立ち、全機が被弾したものの撃墜されたものはなく、重巡に六〇キロを命中させたのだが、小型爆弾ゆえに小破するにとどまった。


 タロア島での日本側の戦闘経過詳細記録は残っていないが、電文から次のように記録されている。

  

〇三五〇 航空母艦一、大巡二、「マロエラップ」の東方一五

     〇〇〇米に近接 同島を爆撃

〇四〇〇 大巡一、駆逐艦二

〇四一五 「タロア」空基地指揮官発信

     七〇度方向敵艦船らしきもの三隻見ユ

     敵戦闘機三機来襲空戦中

〇四三〇 敵の砲撃を受く

〇五三〇 「タロア」空基地指揮官発信

     〇四一五戦闘機三機陸上機直に応戦二機撃墜

     〇四三〇 巡洋艦一隻、駆逐艦二隻の砲撃を受け被

      害調査中なるも僅少なり

     〇五〇〇 我陸攻全機戦闘機全機爆撃中

〇五五〇 東方空襲部隊戦闘概報第三号 

     〇四一五 戦闘機十数機の空襲を受く 敵五機を撃

      墜我被害中攻撃二炎上、戦闘機被弾五、微傷一、

      敵は軽爆弾を使用せり

〇六一〇 飛行機より

     敵戦艦二、巡洋艦一、タロア砲撃中、我之を爆撃後

    「ルオット」に向う 雷撃準備あり度

〇七三〇 「タロア」空基地指揮官

     大巡二隻爆弾数発命中、中部を炎上せしむ 減速せ

     るものの如し

     艦爆一五機来襲

〇八三五 艦攻九機来襲


 ウオッゼ基地からの電文

〇四〇〇 「ウオッゼ」基地指揮官 

     戦艦三隻見ゆ

〇四二〇 53kg司令発 敵戦艦二隻、巡洋艦一隻らしきもの本

    島南に進行中 外戦闘機八機本島空襲す

〇五〇〇 53kg司令発 敵巡洋艦三隻我に対し砲撃中

           之と砲戦中

〇六〇七 53kg司令発 我今朝来敵巡洋艦五隻敵飛行機にて猛

    撃と相当なる損害あり 我全力を以て対抗中

一七〇〇 53kg機密第一五七番電

     一 南北海岸「タンク」全焼、飛行機格納庫三棟燃

      焼、其の他の建築物被害軽微なり 滑走路損害殆

      んどなく使用上差支なし

     二 海上部隊の損害は概報の如く人員軽微の模様



 第一七任務部隊の空母「ヨークタウン」はカーチス・S・スマイレー中佐の率いるドーントレス一七機とデバステーター一一機がヤルート島攻撃にむかった。だが、天候が悪く厚い雲に島が隠されていたために、付近にいた艦船二隻に命中弾を与えただけで、未帰還機六機の損害を払ってしまった。

 マキン島の攻撃に向かったドーントレス九機も、機雷敷設艦一隻に対して攻撃を行ったが、命中弾はあったものの撃沈には至らなかった。


 クエゼリンには米西海岸沖まで作戦行動に出ていた潜水艦が帰投して碇泊していた。当時伊号二六潜にあった岡先任下士官の手記にこの時の空襲の模様がある。


『クエゼリン基地および在泊艦船の当直員以外は、いい気持で寝込んでいたが、間もなく総員起こしの時間が迫っていた。私はふと上甲板をガタガタと踏み鳴らす音に目をさました。何か大声で叫んでいるようで、耳をすますと、

「空襲、空襲」

 ち叫んでいる。

「ほんとの空襲だ」

 とハッチからも大きな叫び声が飛び込んでくる。飛び起きたとたん、ドドドンという腹にこたえるような響きが伝わってきた。防暑服をつかんで、二番ハッチより踊り出る。

 ちょうどそのとき、おおきな爆風を感じて、旗艦香取の方を見ると、マストより高い水柱が数本、香取を取りかこむように立ちのぼっている。東の空はもうだいぶ明るくなってきていた。上空の雲の切れ間に数機の飛行機が見えた。高度は二千メートルくらいであろうか。クェゼリン島が飛行機の爆音で包まれているようであった。

 やっと落ち着き、あたりを見回すと、六根司令部、水上機基地のあたりより黒煙が高く上がり、火災も起きている。そのうち先任将校、航海長も艦橋に上がってきた。旗艦香取には直撃もなく、いつもの姿を浮かべている。やれやれ、よかったと思う間もなく、香取のマストに旗旒信号が上がって、

「各艦錨泊沈座せよ」

 と指令が出た。

(中略)

 上甲板の様子はどうかと見回すと、とてもすぐには潜航できる状態ではなかった。前甲板にはたくさんの洗濯ものが乾かしてあり、また飛行機格納筒の大きな扉はいっぱいに開いて、なかにあった種々雑多なものが、カタパルトの上や上甲板にところ狭しとばかり置いてある。

 味噌樽や漬物樽も五十個ほどが上甲板に出したままになっている。飛行機用デリックも立っている。しかも飛行機格納筒内では、K作戦用の航空燃料タンクを取り付け中であり、その材料や用具類がバラバラに置いてあった。舷梯も出ている。後甲板には無線マストも立っていた。そして流し場には、洗面用、洗濯用のオスタップが二十個もごろごろしている始末である。

 艦橋からは「機銃員配置につけ」とどなっている声が聞こえてくる。また、艦橋の先任将校より、「潜航用意」が指令されたが、私は大声で、

「手明き上甲板片付け、をかけてください」

 と叫んだ。その瞬間、〝キーン〟と鋭い音がして、星野マークをつけた急降下爆撃機が、雲間より舞い降りてきた。

 あっと思う間もなく、頭の上で投弾、本艦の前方にいる三潜戦母艦靖国丸後部の大砲甲板に命中し、炸裂音とともに火災を吹き上げた。同時に、本艦の左舷側にあった伊二三潜の後甲板からも猛烈な勢いで火炎が上がる。みるみるうちに、上空は真っ黒い煙でおおわれていった。

 二三潜では、上甲板の者が寄ってたかって、石油缶らしい物を海中に蹴落としている。海面が燃えだした。そんなわけで一時、二六潜の回りは手のつけられない一大修羅場と化してしまった。

 ドーントレス爆撃機が、靖国丸前方より同艦めがけて突っ込んできて投弾し、そのまま伊二六潜のわきを斜め上方へ、弾幕をぬって避退していった。それは私のすぐ目の先であり、敵機の後部座席の赤ら顔がはっきりと見え、片手を振っているようであった。

(中略)

 右隣の二五潜が、いつの間にか「潜航」を開始している。前甲板の白い洗濯物がたくさん波の間にちらちらしているのがとても印象的で、はっきりと記憶に残っている。

 さて、上甲板のじゃま物は全部飛行機格納筒に一時おさめ、どうやら片付いてきた。空襲の合い間をぬって、艦長が母艦の内火艇で帰ってきた。舷梯を上がるなり先任将校へ、

「潜航用意はよいか」

 と訊ね、

「ただいま補気中、現在七〇」

 と答えると、

「なぜ空気がないのか・・・バカ・・バカ」

 というどなり声が聞こえた。これは私にも責任があるので、いまでも耳の底に残っている。伊二三潜の火災もどうやらおさまったらしい。しかし、負傷者が出たようであった。もう潜水艦は大半が沈座したらしく、浮いているのは二三潜と本艦ぐらいであった。遠くに呂型潜がいたような気もするが、はっきりとした記憶もない。

 もうすっかり明るくなった光のなか、二、三の艦船と陸上数カ所に薄い煙を見るだけで、大した被害はなかったようだ。海面を見渡すと、漬物樽のようなものが、あちらこちらにぷかぷかと、たくさん浮いている。

 錨泊潜航のため、上甲板を片づけるいとまもなく、また艦長を母艦に残したまま、先任将校の指揮で沈座した艦もあった。

 艦長が艦橋に上がったかと思うと、艦橋見張員が、

「雷撃機向かってくる」

 と大声で叫ぶ。その方を見ると、高度七十ぐらいか、数機がバラバラになりながら襲ってくる。遠方にも数機がつづいている。距離千メートルぐらいで魚雷を投下したのが見えた。

 一瞬、ドキリとしたが、伊二三潜がちょうど本艦の楯のような位置にいるので、いくぶん落ち着いた。当たったら、そのときはそのときと観念して待つ。

 投下した魚雷が途中で爆発したのか、突然、爆音とともに水柱が上がる。数本が靖国丸に向かっている。私はカタパルトの先端に立って、雷跡を追っていたが、本艦にまっすぐ向かっているものはないので、やや安心した。

 靖国丸も錨鎖をつめていたが、魚雷回避のため、エンジンがかかり、錨鎖を軸として大きく回頭、ギリギリという激しい音が伝わってきた。その瀉流のなかに一本の来跡が流れて行く。この時分には、旗艦香取は礁内を避退航行しているようであった。 

 雷撃機の飛び去ったあとには、数状の雷跡が残っていたが、雷撃の被害はないようであった。また一機が、長く煙をひいて飛び去って行くのが、記憶のなかに残っている。

 雷撃による空襲は一段落したようであった。私は幸か不幸か、空気不足のおかげで上甲板の片付けもでき、また初空襲の全貌を得ることができた。そうして一片の被害もなく、二六潜は間もなく錨泊沈座を開始した。

 クェゼリン基地全体が、空襲の激しかったわりに、潜水艦の被害が少なかったことは幸いであった。だが、第六根拠地隊司令官清水中将が戦死し、また第六艦隊司令長官清水中将が、香取への至近弾によって重傷を負い、更迭されたことは潜水艦前進基地クェゼリンに暗い影を落とした。』

(岡之雄著「伊二六潜米西岸の出撃す」丸別冊太平洋戦争証言シリーズ⑧『戦勝の日々」所収 潮書房)


千歳空の陸攻隊は、中井大尉が巡洋艦への攻撃後、敵空母が必ずいると考え、再度出撃するには魚雷が必要であるとの考えから、ルオットにある魚雷を装備して出撃しようとしたが、しかし、ルオット基地からは、空襲中のためにタロアに引き返し、再度爆弾をもって反復攻撃すべしと返事してきたのである。

 千歳空は次の編成で出撃した。

 

 第一次攻撃隊    

  一番機 中井一夫大尉機   

  二番機 内野敏男一飛曹機

  三番機 西村時則一飛曹機

  四番機 奥山保太郎飛曹長機

  五番機 山本忠光一飛曹機

 第二次攻撃隊   

  一番機 村岡壽夫一飛曹機   

  二番機 佐田憲正一飛曹

    

 各機とも二五〇キロ一〜二発、六〇キロ四〜六発の装備で、第一次は九時一〇分発進、第二次は一一時三〇分発進。

 中井大尉は案の定空母エンタープライズを発見し攻撃態勢に移った。上空哨戒中のグラマンの攻撃をうけて、中井大尉機の右翼燃料タンクから燃料が噴き出していた。グラマンの攻撃がなくなったと思ったら、米艦隊からの猛烈な対空砲火が攻撃隊に集中する。さらに大尉機の機体には穴があき、後落しはじめている。大尉は僚機に対し前方を示していた。僚機は高度三〇〇メートルほどまで降下し、駆逐艦を通過したあと、空母に対して爆弾を投下し、海面スレスレを退避して基地まで帰ってきたが、帰投したのは大尉機を除く四機だけであった。

 中井大尉機は被弾自爆したと思われたが、米軍の記録ではすさまじい最期であったことが後日判明した。それは三月二日号のアメリカ雑誌「ライフ」にその時の攻撃の写真が掲載され、体当たり攻撃により小火災の黒煙をあげたものだった。


空母「エンタープライズ」の戦闘報告書には次のように記されている。


“We were attacked by five twin-engined bombers. A near hit caused a serious fire in the machine gun battery on the port quarter, and resulted in one fatality and two men receiving superficial wounds. About two minutes later a Japanese plane which apparently was already damaged by fighter or AA fire tried to crash on deck. He missed the deck but his wing struck the tail of 6S5 which was so seriously damaged that it was partially stripped and then shoved overboard.”

「双発爆撃機五機の攻撃を受けた。至近弾により左舷の機銃装置に深刻な火災をひきおこし、一名が死亡、二名が表面的な傷を負った。二分後、戦闘機や対空砲火の攻撃で損傷していた日本機が甲板に体当たりしようとした。日本機は甲板から外れたが、翼が艦上の爆撃機の尾翼に衝突し、尾翼はひどく損傷して部分的にはがされ船外に押し出された」


 第二次の陸攻二機は再びエンタープライズを狙ったが、命中弾を与えることができず、村岡一飛曹機が未帰還となった。

 陸攻二機の搭乗員十四名が戦死した。


 日本側の損害は、鹿島丸(八七六トン)ぼるどう丸(六、五六六トン)第十昭南丸(三五〇トン)の三隻が沈没、豊津丸(二、九三〇トン)が大破、第十一昭南丸、長田丸が中破、巡洋艦「香取」「常盤」、しろがね丸、関東丸、靖国丸が小破。航空機は戦闘機が空戦自爆一、未帰還二、地上炎上三、格納庫炎上二、九六式陸攻自爆未帰還二、地上炎上四、横浜空が飛行艇未帰還一、マキン島にて係留中撃破二、他に三座水偵一未帰還。

 施設はクェゼリン本島の第六根拠地司令部庁舎が半壊、ビゲジ島の機雷倉庫一棟が大破、ルオットでは格納庫、燃料庫各一棟が全焼、格納庫二が中破、ウオッゼが格納庫一、燃料タンク二全焼、格納庫二半壊、タロアは格納庫二、燃料庫二を全焼、格納庫二中破、警備隊本部庁舎大破の被害を受けた。

 人員の損害は、防備部隊指揮官である八代祐吉少将が爆撃により戦死したのを含め、七十八名が戦死し、百五十三名が負傷した。これに各航空隊の死傷者が加わる。空襲当初に八代少将が戦死したことは、しばらく指揮系統に混乱が生じた。

 

 米国側の損害は重巡「チェスター」小破、空母「エンタープライズ」小火災と軽微であった。航空機は「ヨークタウン」がドーントレス三機、デバステーターが四機。「エンタープライズ」がドーントレス九機、デバステーター一機。「ソルトレイクシティ」の観測機シーガル一機。

 第八任務部隊は二月七日真珠湾に帰投し、第一七任務部隊は八日に真珠湾に帰投した。

 重巡「チェスター」は二月三日本隊より先に真珠湾に帰投し修理を行った。空母「エンタープライズ」は損傷箇所の修理を行い、次期作戦に備えての準備も行った。

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