第十五話 コロンボ空襲

 三月二十六日〇八〇〇、南雲機動部隊はスターリング湾を出撃した。

 いま一度日本艦隊の編制を見てみよう。

 空母加賀は艦底の損傷修理の為に佐世保に回航しており、この作戦には不参加であった。


第一航空艦隊  司令長官:南雲忠一中将

第一航空戦隊

  司令官 南雲忠一中将 直卒 

      航空母艦:赤城

第二航空戦隊

  司令官 山口多聞 少将

      航空母艦:飛龍、蒼龍

第五航空戦隊

  司令官 原 忠一 少将  

      航空母艦:翔鶴、瑞鶴

第三戦隊  

  司令官 三川軍一 中将

       戦艦:金剛、比叡、榛名、霧島

第八戦隊

  司令官 阿部弘毅 少将

      重巡洋艦:利根、筑摩

第一水雷戦隊 -

  司令官 市岡寿仁少将

      旗艦 軽巡洋艦:阿武隈

  第四駆逐隊第二小隊  駆逐艦:萩風、舞風

  第一七駆逐隊   駆逐艦:谷風、浦風、浜風、磯風

  第一八駆逐隊  駆逐艦:陽炎、不知火、霞、霰

補給部隊 第一補給隊 神国丸、健洋丸、日本丸

           東栄丸、国洋丸、旭東丸

     第二補給隊 日朗丸、第二共栄丸

            豊光丸


 艦隊は前路警戒、対潜警戒を厳にして西進し、インド洋に入った。印度洋は太平洋の海よりうねりが長い。空母、戦艦の大艦といえども、大きな動揺をうけて航行することになり、駆逐艦よりその動揺は激しさを感じられる。海洋の色も濃青色で、透明度も高いので、潜水艦の警戒も楽ではある。空も澄んでいる方で、雲がなければ六〇浬から七〇浬遠方まで見渡せる。


 四月一日、東港空からの索敵情報がもたらされた。


 東港空支機密第三二番電

一、「ツリンコマリー」偵察(高度五三〇〇米時機日出十八分前)状況左の如し

 イ、内港?以上在泊艦船八隻(内大型駆逐艦と推定さるるもの三隻)小型多数

   湾外に於て大型商船を護衛中の駆逐艦一隻を認む

 ロ、飛行場(北緯八度三二分東経八一度十一分)は北西方向にして其の南東側

  に建築物三棟(内格納庫一)を認む地上に飛行機を認めず

 ハ、推定水上飛行基地に飛行機を認めず

 ニ、哨戒機竝に哨戒艦艇らしきものを認めず

 ホ、地上砲火を受けず

 ヘ、当時濛気あり 日出前の太陽を背に月に面したるも海上視認情況不良成果

  確実を期し難く且自滅を暴露せる虞あり

二、pack bay(〇九一五より一〇〇五間高度六〇〇〇乃至二五〇〇米にて偵察)

 北緯九度三五分東経七九度五〇分に碇泊中の商船二(約四〇〇〇噸)を認めた

 る外敵を見ず

三、北緯九度五〇分東経八〇度四九分に於て護衛艦(掃海艇と認む)一隻を伴え

 る商船三(各一万噸級)速力八節にて北上中なるを認む


 四月三日の正午には、スマトラ島西端の南南西約五〇〇浬の地点に達していたが、未だ敵情の詳細を得ていなかった。

 四月三日、潜水艦部隊からの情報が入ってきた。

 

 ○四月三日〇〇〇〇丙潜水部隊機密電

  「セイロン」島西南方距岸七〇乃至八〇浬圏内、昼夜共敵警戒厳重にして飛

  行作業見込立難きを以て、伊七潜は「コロンボ」飛行偵察を取止め、所定配

  備に就く。

 ○四月三日二二〇〇第七潜水隊機密電

  「コロンボ」港外敵警戒艦艇多数あり。警戒頗る厳重にして未だ飛行偵察す

  るを得ず・・・

 ○四月四日〇九三一伊二潜機密電

  四月二日一一〇〇「ツリンコマリ」湾外一〇浬に達せしも、敵哨戒艇に妨げ

  られ湾内に入るを得ず、湾口付近哨戒艇の外敵を見ず。三月三十一日以来当

  方面監視中、日没前後夜間共敵飛行機を認めず。


 四月三日、補給部隊の健洋丸、日本丸は補給終了後、艦隊を離れG点に移動し、七日一八〇〇以後F点にて待機するよう命ぜられた。

 同じ三日一一二七赤城から各空母宛に、五日「コロンボ」、六乃至七日に「トリンコマリー」攻撃の予定であることが通知された。



 四日午後、東洋艦隊はアッズ環礁に入港したが、索敵機からの緊急電が入ったのは、その直後だった。

「優勢なる日本機動部隊をセイロン島南東三六〇浬に発見」

 提督は、すぐ出撃したかったが、補給が間に合わないため、再出撃が遅れてしまい、日本艦隊を捕捉することはできなかったが、東洋艦隊の主力を温存することはできた。

 


 南雲部隊は順調にセイロンへ目指していた。四月四日一八五五時、戦艦比叡は北方に敵飛行艇一機を発見し、全軍に警報を発し、対空射撃を開始した。英軍第四一三飛行中隊のカタリナ飛行艇であり、日本艦隊を発見する殊勲を立てた。だが、各空母から待機中の零戦十八機が発進し、一九三二時に海上に不時着させたが、飛行艇は平文で日本艦隊発見を打電していた。

「戦艦三、空母一隻針路三〇五度・・」

 飛行艇は撃墜され、その搭乗員のうち機長フリップ少佐らは駆逐艦「磯風」に収容捕虜とした。

 赤城の司令部では、機動部隊が探知されたことを確実視し、コロンボ空襲は奇襲ではなく、強襲となることを念頭におかなければならなかった。

 四月五日、九時支援部隊から三機の水上偵察機が射ち出され、いるかもしれない西方洋上への索敵に向かった。空母五隻の艦上では、コロンボ攻撃隊が発艦準備を始めていた。敵飛行艇に発見されているので、強襲となることは明らかだった。


 総指揮官淵田中佐に率いられた艦攻五十三機、艦爆三十八機、零戦三十六機が〇九〇〇に飛び立った。

(赤城の艦攻が一八機とあるが、「行動調書」を見ると一七機の搭乗割しか記載されていないので、一七機と判断する)


総指揮官  淵田美津雄 中佐

空母 赤城

  九七式艦攻 一七機(八〇〇キロ×一七)

   指揮官 淵田美津雄 中佐

   第一中隊

    第一小隊 一番機 操縦 松崎三男  大尉

             偵察 淵田美津雄 中佐

             電信 水木徳信  一飛曹

         二番機 操縦 渡辺 晃 一飛曹

             偵察 阿曽弥之助 一飛曹

  電信 五月女忠夫 一飛

    第二小隊 一番機 操縦 藤本 論 一飛曹

             偵察 西森 暹 飛曹長

             電信 芦野正男 二飛曹

         二番機 操縦 大谷康二 二飛曹

             偵察 徳留 明 一飛曹

             電信 村上守司 三飛曹

         三番機 操縦 杉浦 清 一飛

             偵察 鈴木 勝 二飛曹

             電信 杉田好弘 二飛曹

   第二中隊 

    第一小隊 一番機 操縦 村田重治 少佐

             偵察 加藤 昇 飛曹長

             電信 渡辺繁治 二飛曹

         二番機 操縦 滝沢友一 二飛曹

             偵察 松島 正 飛曹長

             電信 大島正広 一飛

         三番機 操縦 井上福治 一飛

             偵察 川村善作 一飛曹

             電信 藤本兼雄 一飛

    第二小隊 一番機 操縦 根岸朝雄 大尉

             偵察 重永春喜 特務少尉

             電信 清水 賢 一飛曹

         二番機 操縦 滝沢友一 二飛曹

             偵察 松島 正 飛曹長

             電信 大島正広 一飛

         三番機 操縦 花井圭吾 一飛

             偵察 佐野剛也 一飛曹

             電信 松田憲雄 一飛

   第三中隊  

    第一小隊 一番機 操縦 中井留一飛曹長

             偵察 布留川 泉 大尉 

             電信 中島光昇 二飛曹

         二番機 操縦 竹村 章 一飛曹

             偵察 雨宮亭勇 一飛曹

             電信 中野利夫 二飛曹

         三番機 操縦 岡崎行男 一飛曹

             偵察 池田 弘 二飛曹

             電信 前野哲雄 一飛

    第二小隊 一番機 操縦 後藤仁一 中尉

             偵察 宮島睦夫 飛曹長

             電信 大久保光則 二飛曹

         二番機 操縦 鈴木 忍 一飛

             偵察 加藤 昇 飛曹長

             電信 藤田軍平 二飛曹

         三番機 操縦 行友 一人 一飛

             偵察 宮田 政人 一飛曹

             電信 女田 竹利 一飛

空母 蒼龍

  九七式艦攻 一八機(八〇〇キロ×一八)

   指揮官 阿部平次郎 大尉

   第一中隊

    第一小隊 一番機 操縦 笠原治助 飛曹長

             偵察 阿部平次郎 大尉 

             電信 小町 齢 一飛曹

         二番機 操縦 越智正武 二飛曹

             偵察 向畑壽一 一飛曹

             電信 倉谷定茂 二飛曹

         三番機 操縦 田辺正直 二飛曹

             偵察 田村重年 二飛曹

             電信 新井嘉年男 二飛曹  

    第二小隊 一番機 操縦 佐藤壽雄 一飛曹

             偵察 大迫加一 飛曹長

             電信 荒井辰雄 三飛曹


         二番機 操縦 根倉貞憲 二飛曹

             偵察 杉山弘興 一飛曹

             電信 丸山忠雄 二飛曹

         三番機 操縦 二瓶 務 二飛曹

             偵察 谷口総一郎 特務少尉

             電信 太田五郎 一飛曹

   第二中隊

    第一小隊 一番機 操縦 長井 彊 大尉

             偵察 谷口惣一郎 飛曹長

             電信 太田五郎 一飛曹

         二番機 操縦 潮 萬之助 一飛曹

             偵察 八代七郎 飛曹長

             電信 若林澄男 二飛曹

         三番機 操縦 茅原義博 一飛

             偵察 安藤百平 三飛曹

             電信 江塚 壽 二飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 原田正澄 一飛曹

             偵察 山本貞雄 中尉

             電信 鈴木四郎 三飛曹

         二番機 操縦 野崎実男 三飛曹

             偵察 加藤豊則 一飛曹

             電信 早川潤一 一飛曹

         三番機 操縦 宮崎徳三郎 一飛

             偵察 佐野 覚 一飛曹

             電信 秋浜 哲郎 一飛    

   第三中隊

    第一小隊 一番機 操縦 中島 巽 大尉

             偵察 中村太門 飛曹長

             電信 西田孝雄 一飛

         二番機 操縦 大和田達也 飛曹長

             偵察 藤波貫二 飛曹長

             電信 永井福太郎 一飛

         三番機 操縦 岩田高明 二飛曹

             偵察 鹿熊粂吉 二飛曹

             電信 土井敬二 二飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 森 拾三 二飛曹

             偵察 金井武和 飛曹長

             電信 細田喜代人 二飛曹

         二番機 操縦 藤原 嘉六 一飛

             偵察 石川利一 一飛曹

             電信 渡辺勇三 二飛曹

         三番機 操縦 鶴見 茂 二飛曹

             偵察 紺野喜悦 二飛曹

             電信 浮ケ谷 弘 一飛

空母 飛龍

  九七式艦攻 一八機(八〇〇キロ×一八)

  指揮官 楠美 正 少佐

  第一中隊

   第一小隊 一番機 操縦 楠美 正 少佐

            偵察 近藤正次郎 中尉

            電信 福田政雄 飛曹長

        二番機 操縦 石井善吉 一飛曹

            偵察 小林正松 一飛曹

            電信 田村 満 二飛曹

   第二小隊 一番機 操縦 野中 覚 飛曹長

            偵察 滝 六郎 飛曹長

            電信 楢崎広典 一飛曹

        二番機 操縦 鈴木 武 一飛

            偵察 佐小田 香 二飛曹

            電信 久原 滋 一飛

   第三小隊 一番機 操縦 阪本憲司 一飛曹

            偵察 中島政時 一飛曹

            電信 笠井 清 二飛曹

        二番機 操縦 富田文男 二飛曹

            偵察 吉村雄史 二飛曹

            電信 矢作 実 二飛曹

  第二中隊

   第一小隊 一番機 操縦 菊地六郎 大尉

            偵察 湯本智美 飛曹長

            電信 村井 定 一飛曹

        二番機 操縦 住友清真 一飛曹

            偵察 梅沢幸男 二飛曹

            電信 金沢秀利 二飛曹

   第二小隊 一番機 操縦 上杉丈助 二飛曹

            偵察 橋本敏男 中尉

            電信 小山富雄 一飛

        二番機 操縦 柳本拓郎 三飛曹

            偵察 衛藤親恩 一飛曹

            電信 二宮一憲 二飛曹

   第三章隊 一番機 操縦 大林行雄 飛曹長

            偵察 工藤博三 二飛曹

            電信 谷口一也 一飛

        二番機 操縦 宮内政治 二飛曹

            偵察 山田貞次郎 二飛曹

            電信 宮川次宗 二飛曹

  第三中隊

   第一小隊 一番機 操縦 角野博治 大尉

            偵察 稲田政司 飛曹長

            電信 松井信平 一飛曹

        二番機 操縦 於久保己 三飛曹 

            偵察 鳥羽重信 一飛曹

            電信 文宮府知 一飛

   第二小隊 一番機 操縦 高橋仲史 一飛曹

            偵察 城 武夫 飛曹長

            電信 稲毛幸平 一飛曹

        二番機 操縦 浦田 直 一飛

            偵察 佐小田 香 二飛曹

            電信 實田 陸男 一飛

   第三章隊 一番機 操縦 杉本八郎 一飛曹

            偵察 肱黒定美 二飛曹

            電信 森田 寛 二飛曹

        二番機 操縦 渡部重則 二飛曹

            偵察 後藤時巳 二飛曹

            電信 島原 力 一飛

空母 翔鶴

  九九式艦爆 一九機(二五〇キロ×一九)

  指揮官 高橋赫一 少佐

  第一中隊

   第一小隊 一番機 操縦 高橋赫一 少佐

            偵察 野津保衛 特務少尉

        二番機 操縦 篠原一男 一飛曹

            偵察 染野文雄 一飛曹

        三番機 操縦 福原 淳 二飛曹

            偵察 鈴木富三 二飛曹

   第二小隊 一番機 操縦 山口正夫 大尉

            偵察 中 定次郎 特務少尉

        二番機 操縦 上島 初 一飛曹

            偵察 甲田 力 一飛曹

        三番機 操縦 小田桐忠造 一飛

            偵察 横田益太郎 一飛

   第三小隊 一番機 操縦 三福岩吉 中尉

            偵察 小板橋博司 二飛曹

        二番機 操縦 中所修平 二飛曹

            偵察 長沢重信 二飛曹

        三番機 操縦 加藤熊一 三飛曹

            偵察 大浦民平 三飛曹

   第四小隊 一番機 操縦 伊藤勇三 一飛曹

            偵察 国分豊美 飛曹長

        二番機 操縦 白井五郎 一飛曹

            偵察 九島作次郎 二飛曹

        三番機 操縦 原島正義 一飛

            偵察 元俊二郎 二飛曹

  第二中隊 

   第一小隊 一番機 操縦 前田久良 大尉

            偵察 長岩 雄 飛曹長

        二番機 操縦 鈴木敏夫 二飛曹

            偵察 今田 徹 一飛曹

        三番機 操縦 塙 明重 一飛

            偵察 山内 博 一飛

        四番機 操縦 杉浦敏雄 三飛曹

            偵察 富樫勝介 二飛曹

   第二小隊 一番機 操縦 松田幸徳 飛曹長

            偵察 小泉精三 中尉

        二番機 操縦 池田 清 三飛曹

            偵察 野辺武夫 一飛曹

        三番機 操縦 大川豊信 一飛

            偵察 吉永四郎 一飛

空母 瑞鶴

  九九式艦爆 一九機(二五〇キロ×一九)

  指揮官 坂本 明 大尉

  第一中隊

   第一小隊 一番機 操縦 坂本 明 大尉

            偵察 井塚芳夫 飛曹長

        二番機 操縦 中西義男 一飛曹

            偵察 藤岡寛夫 二飛曹

        三番機 操縦 酒巻秀明 二飛曹

            偵察 根岸正明 二飛曹

   第二小隊 一番機 操縦 葛原 丘 中尉

            偵察 小山 茂 飛曹長

        二番機 操縦 谷村正治 二飛曹

            偵察 深江雄一 一飛曹

        三番機 操縦 岩本 茂 二飛曹

            偵察 萩原道治 三飛曹

        四番機 操縦 菅崎正生 二飛曹

            偵察 瀬市軍三 一飛

   第三小隊 一番機 操縦 氏木平槌 飛曹長

            偵察 松本孝一 一飛曹

        二番機 操縦 斉藤益一 一飛曹

            偵察 雨宮貞雄 一飛曹

        三番機 操縦 加藤清武 二飛曹

            偵察 辻 四郎 一飛

  第二中隊

   第一小隊 一番機 操縦 江間 保 大尉

            偵察 東 藤一 飛曹長

        二番機 操縦 稲垣富士夫 一飛曹

            偵察 石川重一 一飛曹

        三番機 操縦 野原忠明 三飛曹

            偵察 榎本鉄司 二飛曹

   第二小隊 一番機 操縦 安藤五郎 一飛曹

            偵察 大塚禮次郎 中尉

        二番機 操縦 井方作男 一飛曹

            偵察 白倉耕太 二飛曹

        三番機 操縦 江種繁樹 一飛

            偵察 川添正義 三飛曹

   第三小隊 一番機 操縦 福永政登 飛曹長

            偵察 川瀬孝治 一飛曹

        二番機 操縦 堀 健二 二飛曹

            偵察 上谷睦夫 二飛曹

        三番機 操縦 松本芳一郎 一飛

            偵察 福垣内定美 三飛曹

制空隊

空母 赤城

 零戦 九機

 指揮官 板谷 茂少佐

   第一小隊 一番機 板谷 茂 少佐

        二番機 菊池哲生 一飛曹

        三番機 川田要三 二飛曹

   第二小隊 一番機 指宿正信 大尉

        二番機 岩城芳雄 一飛曹

        三番機 森 栄 一飛

   第三小隊 一番機 田中克視 一飛曹

        二番機 大原廣司 三飛曹

        三番機 佐野信平 一飛

空母 蒼龍

 零戦 九機

 指揮官 藤田怡與蔵 中尉

   第一小隊 一番機 藤田怡與蔵 中尉

        二番機 高橋宗三郎 一飛曹

        三番機 東 幸雄 一飛

   第二小隊 一番機 小田喜一 飛曹長

        二番機 田中二郎 二飛曹

        三番機 高島武雄 三飛曹

   第三小隊 一番機 原田 要 一飛曹

        二番機 久保田 亘 一飛曹

        三番機 長澤源三 一飛

空母 飛龍

 零戦 九機

 指揮官 熊野澄夫 大尉

   第一小隊 一番機 熊野澄夫 大尉

        二番機 新田春雄 三飛曹

   第二小隊 一番機 日野正人 一飛曹

        二番機 佐々木 斉 二飛曹

        三番機 小谷賢治 一飛

   第三小隊 一番機 児玉義美 飛曹長

        二番機 戸高 昇 二飛曹

   第四小隊 一番機 松山次男 飛曹長

        二番機 千代島 豊 一飛

空母 瑞鶴

   零戦 九機

   指揮官 牧野正敏 大尉

   第一小隊 一番機 牧野正敏 大尉

        二番機 加納 彗 一飛曹

        三番機 小宮山賢太 二飛曹

   第二小隊 一番機 塚本祐造 中尉

        二番機 佃 精一 一飛曹

        三番機 坂井田五郎 二飛曹

   第三小隊 一番機 牧野 茂 一飛曹

        二番機 亀井富男 一飛曹

        三番機 二杉利次 一飛

   


 飛龍の攻撃隊は途中で敵飛行艇を発見し、機動部隊へ打電した。

「敵飛行艇見ユ 飛行艇一機出発点ヨリノ方位三四六度四三浬 針路一八〇度〇九三八」

 この飛行艇は上空直掩の飛龍零戦隊により撃墜された。しかし、日本機動部隊発見の報を受けた、英軍は第十一中隊のブリストル・ブレニム双発爆撃機十四機と第七七八中隊のフェアリー・ソードフィッシュ雷撃機八機を出撃させた。ブレニム隊は日本部隊を発見できず、引き返すが、ソードフィッシュ隊は重い魚雷を抱いて南下する途中で、日本の攻撃部隊に遭遇し、零戦の攻撃を受けて全機撃墜された。


 淵田中佐はコロンボ上空での迎撃を予期して、西方から迂回して北方より侵入する針路をとっていた。一〇四五淵田中佐は「全軍突撃せよ」を発した。


 英軍は、ラトマラナ飛行場から第三〇中隊のハリケーン戦闘機二十二、第二五八中隊のハリケーン十四機、第八〇三中隊のフェアリー・フルマー複座戦闘機六、第八〇六中隊のフルマー四機の合計四十二機を発進させて、日本機の迎撃に備えた。


 淵田中佐は港内には、大型艦船の姿はなく、小型船舶が多数碇泊している位であり、飛行場にも飛行機がいないのを確認すると、格納庫の爆撃と港内施設と商船の爆撃を命じた。

 瑞鶴と翔鶴の艦爆隊が飛行場への攻撃のため、編隊を離れたところを、ハリケーン隊の一部が襲撃し、瑞鶴隊五機、翔鶴隊一機の六機が撃墜された。瑞鶴隊は、第一中隊の深江一飛曹機、岩本二飛曹機、氏機特務少尉機、斉藤一飛曹機、第二中隊の榎本二飛曹機。翔鶴隊は、第二中隊長の藤田大尉機が被弾自爆した。翔鶴隊はハリケーン五機と空戦となり、その全機を撃墜したとしている。瑞鶴隊もハリケーン一機を撃墜している。


 艦攻隊と一部の艦爆隊は港内の施設と船舶を爆撃した。戦果は仮装巡洋艦ヘクター、駆逐艦テネドスを沈め、輸送船数隻を撃沈破し、港湾施設を破壊したにとどまり、十分なものとはいえなかった。この状況から淵田中佐は第二次攻撃を要請を打電した。


「第二次攻撃ヲ準備サレタシ、港内ニ油槽船二〇隻アリ 地上砲火アリ 敵機数機 高度一〇〇〇密雲アリ 一一一八」


 爆撃終了後、やっと戦場にたどりついた英軍戦闘機隊ハリケーン二十二機、フルマー六機が迎撃してきた。掩護の零戦隊との間に激しい空中戦となったが、百戦練磨の零戦の敵ではなく、ハリケーン十四機、フルマー六機が撃墜された。(ハリケーン二一機、フルマー四機という説もあり)零戦隊は蒼龍の零戦一機、東一飛機が被弾自爆した。

 各戦闘機隊の報告は、赤城隊が撃墜十二機、撃墜不確実九機。蒼龍隊が撃墜十一機、撃墜不確実二機。飛龍隊が撃墜十九機、撃墜不確実二機。瑞鶴隊は艦攻隊の掩護任務のため、交戦なし。合計撃墜四十二機、撃墜不確実十三機に達した。


 源田実の回想録「海軍航空隊始末記戦闘編」(文藝春秋、一九六二)には次のような箇所がある。


『その中の一人に赤城分隊長指宿正信大尉がいる。彼は、それまで度々の空襲に折角見かけた敵機も、運悪く他機に攫われて自ら撃墜する機会に恵まれなかった。この日、空襲が終った時只一機先に帰って着艦した戦闘機があった。指宿大尉である。彼は機上でニコニコしながら指を二本あげて艦橋に居る人々に合図した。

「ハハァー、二機やったな!」

 と了解した。彼の報告に依ると、最初に会敵した敵機は僅か一撃で火に包まれて墜ちて行った。二機目の奴は一寸手ごたえがあったが、それでも旋回戦闘を数回続けている内に追躡の態勢に入った。射っても射っても火を噴かなかったが、尚急追を続けると敵機は逐次高度を下げて行った。多分エンジンでも射ち貫かれたのであろう。

 尚、追詰め追詰めしていると、敵機はとうとう地中に突込んだ。しばらくその上空を旋回していると、座席の中からパイロットが出て来て歩き出した。一撃を加えて射殺しようと思ったが、

「まあ待て、武士の情けだ」

 と思直して、「キャノピー」を開き、座席の中から手を振って合図した。これを見た敵機の操縦者も指宿機に向って手を振っているのが見えたそうだ。彼等は互に、

「次には又、何処かの空で御目見えしよう」

 と思っていたことであろう』

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