第五章 蘭印攻略作戦

第一話 蘭印攻略作戦計画

 攻略する蘭印の概要は広大な地域にのぼる。すなわち北緯六度から南緯十一度、東経九五度から一四一度にわたり、赤道を中心として南北にまたがる多数の島々から構成されている。


 蘭印といっても、ボルネオの西北部はイギリス領、チモール島の東部と北部の一部はポルトガル領であった。

 蘭印の面積は一九〇万平方キロもあり、その総人口は約六、〇〇〇万とされていた。その面積は、日本の統治領であった朝鮮、台湾、樺太を含めた三倍もあり、東西の距離は二、七〇〇マイルに及んだ。


 メインとなるスマトラとジャワであるが、スマトラは面積約四七万平方キロ、ジャワは約一三万平方キロ。東西にかけて南岸よりに脊梁山脈が走り小スンダ列島に至る。火山地帯でもあり、山容は円錐形が多い。その北側は傾斜が緩やかで、平野、台地も多い。ジャワの河川は、V字渓谷を形勢して流れており、降雨によって水量の増減は大きく変化する。スマトラの河川は、長く深いために汽船の航行が可能である。下流は湿地帯となっている所が多い。そしてパレンバン地区、メダン地区は油田地帯でもあり、日本軍がどうしても無傷で手中に収めたかった所でもある。

 ジャワは、面積こそ小さいが、総人口の三分の二に当たる約四、〇〇〇万人が居住している。うちバタビアはオランダの東印度総督府の所在地でもあるため、人口は約六〇万、スラバヤは約四〇万にも達する大都市であった。人口一〇万以上の都市も他に五個もあり、交通網も発達していた。また、バタビア、スラバヤ、チラチャップは商港であるとともに、軍港でもあり、軍事上の重要拠点でもあった。


 次にセレベス島は、面積一九万平方キロあり、北海道の二倍強あり、山脈も多い地形であるが、ニッケルや鉄鉱の産地であり、軍事上でいうと大きな利点のある島である。

 ボルネオ島は面積七五万平方キロという大きな島で、そのうちの七割強が蘭領であり、残りが英領である。人口は少なく、未踏の地域が過半を占め、密林と湿地帯で構成されている。蘭領のサンガサンガ地区と英領のミリ地区は石油の産地であり、日本軍としては早期に手中に収めたい島であった。

 チモール島は九州とほとんど同じ面積であり、ボルトガル領と蘭領に分かれていた。オーストラリア北部に位置しており、セレベス、ジャワの前線防衛拠点として重要な場所といえた。

 モルッカ諸島は、香料の交易地として栄えた島々からなっており、チモール島の北部、セレベスの東に位置する。一部には油田もある。


 蘭領の地区が日本にとってどれだけ重要かは、その産出量を見れば良くわかる。

 日本の必需量は年間五〇〇万トンといわれ、スマトラ島で約四〇〇万トン、ボルネオ島で一七〇万トン、ジャワ島で一〇〇万トン、その他で一〇万トンの六八〇万トンの産出量があった。問題はその産出した石油を輸送できる輸送船の船舶の問題であったが、それはまた後述したいと思う。

 他にも鉄鉱石、錫、ボーキサイト、ニッケル、マンガン、石炭、硫黄、タングステン、ゴムなど有力な資源が豊富に存在していた。

 参考として昭和十七年に野村合名会社調査部による「南方圏建設の構想」が出されているが、その中で、英領ボルネオについては、ゴムが主要産業であり、次いで木材。サラワク地区とブルネイ地区は石油産業とゴムがあり、ブルネイに関しては、一九一四年に石油採掘が始まり、一九三九年頃には七十五万トンの産出を見ており、さらに増産が期待された油田を持っていた。

 蘭印の産業は農業を中心としているが、鉱業部門も開発が進み、石油は一九三九年に約七九五万トン、錫二八万トン、ボーキサイト二三一万トン、石炭一七八〇万トン、鉄は推定埋蔵量が十億トンと予想される地下資源豊富な地域であった。

 石油の質はボルネオ地区は重質であるとされ重油に適し、蘭印の重油は軽質に属し、ガソリンに向いていたといわれる。

 但し、各資源の採掘量は未だ開発途上にある地区もあり、安定した供給には時日が必要だという見積もりも考慮しなければいけないところもあったようだ。

 

 南方攻略については、七月下旬における米英蘭の対日資産凍結により、本格的な攻略の計画に取り組み始めた。

 陸軍では度々兵棋演習が行われ具体的な作戦内容が煮詰められ、海軍でも演習が実施された。

 陸海軍の作戦計画の相違はあったが、どうにか陸海軍の合意を得た作戦の協定ができたのは十月下旬であった。


 十一月五日の御前会議で対米英蘭戦争を決意し、帝国国策遂行要領(第一章第十一話参照)が決定され、南方軍各軍の戦闘序列が下令された。

 陸軍の作戦計画も立案された。(第二章第二話参照)

 第十六軍の司令部の人員配置は次の様になった。

 軍司令官  中将 今村 均

 参謀長   少将 岡崎清三郎

 参謀副長  少将 原田義和

 第一課参謀

  高級参謀   大佐 高嶋辰彦

  情報主任参謀 中佐 村上公亮

  航空主任参謀 中佐 井戸田 勇

  作戦主任参謀 中佐 於田おだ秋光

  情報参謀   少佐 くりや 次則

  作戦補助参謀 少佐 山下 豊

 第二課参謀

  高級参謀   大佐 北村可大

  通信主任参謀 中佐 斎木郁三

  船舶主任参謀 中佐 仙頭俊三

  兵站参謀   少佐 高橋満蔵

  兵站参謀   少佐 西浦節三

 軍司令部付   大佐 中山寧人

  兵器部長   少将 山田久松

  経理部長   少将 向井金次郎

  軍医部長   少将 中島晴彦

  獣医部長   大佐 黒川三治郎

  法務部長   大佐 津村幹三

 第十六軍戦闘序列

第十六軍司令官 陸軍中将 今村 均

第十六軍司令部

第二師団

 師団長 陸軍中将 丸山政男

混成第五十六歩兵団

 長 第五十六歩兵団長 陸軍少将 坂口静夫

 第五十六歩兵団司令部

 歩兵第百四十六連隊

 第五十六歩兵団装甲車隊

 野砲兵第五十六連隊第一大隊

 工兵第五十六連隊第一中隊

 輜重兵第五十六連隊第二中隊

 第五十六歩兵団衛生隊

 第五十六師団第一野戦病院

戦車第八連隊

野戦重砲兵第十七連隊

第十八野戦防空隊司令部

野戦高射砲第四十四大隊

高射砲第十六連隊

独立工兵第一連隊

独立工兵第一中隊

独立工兵第四中隊

第百六十八停車場司令部

第十六軍通信隊

 長 電信第十五連隊長

 電信第十五連隊

 独立無線第三、第四、第六、第七、第八、第十三小隊

 無線電信第六十小隊

 第三十三、第三十四、第三十五、第四十六、

 第五十五無線隊

架橋材料第二十九中隊

近衛師団架橋材料中隊

第六師団架橋材料中隊

第三野戦憲兵隊

第十六軍直属兵站部隊


基幹となる第二師団は通称勇兵団。明治二十一年仙台で創設された歴戦の師団である。ジャワ作戦に伴い若干の編制替が行われ、改編後の定数は、人員一三、七五五名。馬匹一、三三五頭、自動車五八六両であった。

 師団の編制は次のとおりである。

 第二師団司令部

 第二歩兵団司令部

 歩兵第四連隊(仙台)  歩兵三個大隊基幹

 歩兵第十六連隊(新発田)   同右

 歩兵第二十九連隊(会津若松) 同右

 捜索第二連隊

 野砲兵第二連隊

 工兵第二連隊

 輜重兵第二連隊

 第二師団通信隊

 第二師団衛生隊

 第二師団兵器勤務隊

 第二師団第一野戦病院、第二野戦病院、第四野戦病院

 第二師団防疫給水部

 第二師団病馬廠


 師団長の丸山政男中将は、明治二十二年九月長野県生まれ。陸士二十三期卒。陸大三十一期卒。昭和十三年七月少将に進級し、日中戦争では歩兵第六旅団長として出征し武漢攻略に参加。昭和十六年三月中将に進級。


 後にジャワ作戦には、香港作戦担当の第三十八師団とマニラ攻略作戦担当の第四十八師団が増派される事になっていた。


 十一月十六日、陸海軍間の協定内容が高橋伊望いぼう海軍中将、今村均陸軍中将出席のもと決定した。


 海軍蘭印部隊指揮官

 第十六軍司令官      間協定

  第一 作戦要領

一、坂口支隊(歩兵三大隊、砲兵一大隊基幹)

 Y+二三日頃「パラオ」集合

 X+十三日頃「ホロ」支隊「ホロ」上陸(「ダバオ」迄第十四軍「ダバオ」攻

  略部隊と同行)

 X+二五日頃坂口支隊(「ホロ」支隊欠)「パラオ」出港、X+三十日頃「タ

  ラカン」上陸

 X+三五日頃「バリックパパン」上陸

 X+五四日頃「バンジェルマシン」上陸

 X+七〇(Zー一〇)日頃「バリー」上陸

 軍主力爪哇上陸の第一日を乙日とし大約X+八〇日頃と予定す

二、乙支隊(歩兵二大隊、砲兵一大隊基幹)



   協定別冊其の一(坂口支隊の分)

  第一 全般指導要領

一、支隊はY+二三日頃「パラオ」に集合す

二、「ホロ」支隊[歩兵一大隊(二中隊欠)野砲兵一小隊輜重兵一分隊]は第十

 四軍三浦支隊(「ダバオ」攻略部隊)の輸送船に来船し之と同行してX+六日

 「ダバオ」に至り次でX+一三日頃「ホロ」に上陸し航空基地を占領す

 「ホロ」要域を戡定せば速に其の警備を海軍と交代し坂口支隊主力方面への転

 進を準備す

 転進発起の時期は坂口支隊の「タラカン」上陸後とし概ねX+三三日頃と予定

 す

 「ダバオ」方面作戦の状況に依り「ホロ」支隊の「ホロ」への転進不可能なる

 か又は甚しく遅延するを予想せらるる場合には坂口支隊主力に於て別に「ホ

 ロ」攻略部隊を編成し海軍艦船に依る輸送することあり

三、坂口支隊はX+三〇日頃「タラカン」に上陸し航空基地を占領すると共に石

 油資源を獲得確保す

 支隊は「タラカン」要域の戡定に伴い其の警備を海軍と交代したる後成るべく

 速に「バリックパパン」及「サマリンダ」付近に上陸し航空基地を占領すると

 共に石油資源を獲得確保す

 状況に依り先づ「バリックパパン」を攻略したる後「サマリンダ」方面を攻略

 することあり

 次で輸送船を「パラオに回航して給水給炭を実施せしめたる後支隊の一部(歩

 兵約一大隊砲兵一中隊基幹)は「バンジュルマシン」に上陸し航空基地を占領

 す

四、軍主力の上陸(其の第一日をZ日とし大約X+八〇日頃と予定す)迫るや之

 に先ち(Zー一〇日頃)一部(歩兵約半大隊)を以て「バリー」を攻略し航空

 基地を推進するに努む

五、「バリックパパン」(「サマリンダ」付近を含む)「バンジェルマシン」及

 「バリー」に警備及治安維持は別令ある迄陸軍に於て之を担任す

六、坂口支隊は各上陸点に暫定上陸根拠地を設定する外坂口支隊作戦間主要上陸

 根拠地を「バリックパパン」に設定す

七、坂口支隊に対する補給及患者の収療後送(後送位置は台湾又は「パラオ」と

 す)竝に郵便物の後送に関しては軍主力方面との連絡を確保し得る時期に到る

 迄海軍に於て所要の援助を為す

 其の細部に関しては現地陸海軍指揮官間に於て協定す

八、以上の細部は「第二各地区攻略要領」に拠る

  第二 各地区攻略要領

   其の一 「ホロ」攻略

    第一 上陸点及其の偵察

一、上陸点

 「ホロ」市街東北方海岸

 状況に依り上陸点の変更を要する場合に於て護衛指揮官「ホロ」支隊長と協議

 決定す

二、偵察

 航空機(海軍)

 為し得れば偵察を実施し「ホロ」上陸作戦に必要なる資料を提供す

 註・第十一航空艦隊は所要の偵察を実施すると共に必要なる空中写真を撮影提

  供す

   第二 集合点到着及出発期日竝に泊地

    「パラオ」集合 Y+二三日頃

    出港前適宜の時機に於て第十四軍「ダバオ」攻略部隊の輸送船に移乗す

    「パラオ」出港 X+三日

    「ダバオ」支隊の「ダバオ」攻略後海軍特に其の航空作戦の状況之を許

    す限り勉めて速に「ダバオ」出港「ホロ」島に到る

   第三 上陸開始期日及時刻竝上陸日程

    上陸開始はX+一三日未明と予定す

    上陸日程は一日とす

   第四 輸送船隊の船隊区分及行動要すれば

      指揮官の所在

     妙義、山月の順とし「ホロ」支隊長は妙義に乗船す

  「ホロ」支隊の編組左の如し

   長 歩兵第百四十六連隊第三大隊長陸軍中佐 松本治

     歩兵第百四十六連隊第三大隊

     野砲兵一小隊

      輜重兵一分隊

(筆者註・歩兵第百四十六連隊は長崎大村で編成) 

   第五 海上護衛及輸送船隊航路

一、護衛兵力 L C×一、d×四

  護衛指揮官 海軍少将 田中頼三(神通)

二、輸送船隊の航路

  護衛指揮官 支隊長と協議決定す

   第六 牽制陽動

之を行わず

   第七 航空部隊の用法

一、使用兵力

 第十一航空艦隊の一部

二、協力要項

 航行竝に泊地に於ける船団を掩護し且上陸部隊の要求に依り其の戦斗に協力す

 註 第十一航空艦隊は陸攻隊及戦斗機隊の各一部を以て敵航空兵力を撃滅する

  と共に右に協力す

   第八 泊地進入要領及投錨時機

泊地は「ホロ」東北方海面投錨は十三日〇一〇〇とす

其の他の細部に関しては護衛指揮官、支隊長と協議決定す

   第九 上陸戦斗及掩護射撃

一、「ホロ」市街東北方海岸に上陸し速に飛行場及無電台を占領すると共に所在

  の敵部隊を索めて撃滅す

二、海軍艦艇に依る砲撃は上陸部隊の要求に依り之を行う

   第十 上陸後に於ける海陸軍の協同

一、「ホロ」付近要域を戡定せば支隊は速に其の警備を海軍と交代して「ホロ」

  付近に集結し勉めて速に坂口支隊主力に合一す

  之が為所要の輸送船は坂口支隊主力方面より回航す

  其の護衛の細部に関しては当時の状況に基き護衛指揮官坂口支隊長と協議決

  定す

二、空船(妙義及山月)は上陸完了後海軍艦船と同行し「ダバオ」に皈航きこうせしむ

   第十一 通信連絡

別冊の通定む(省略)

  其の二 「タラカン」攻略

   第一 上陸点及其の偵察

一、上陸点

 主力「バツー」岬より「カルンガン」川に至る海岸

 一部「カルンガン」川西北方海岸

 状況に依り当初より又は戦況に推移に伴い一部又は主力を以て「リンカス」に

 上陸することあり

二、偵察

 企図秘匿上後述註記の外一切の偵察を行わず

註 第十一航空艦隊は企図秘匿に留意しつつ「バツー」油田地帯、「サドウ」を

 含む地域の空中写真を調製し坂口支隊「パラオ」出港前迄(X+二五日頃)に

 送付す

   第二 上陸兵団の部署輸送船の集合点

      到着、出発期日及泊地

一、支隊はY+二三日頃「パラオ」に集合し海軍の状況之を許すに至らば勉めて

 速に(概ねX+二五日頃と予定す)「パラオ」出港一次の輸送を以て上陸地に

 至る

 支隊に編組左の如し

 長 混成第五十六歩兵団長 陸軍少将 坂口静夫

 混成第五十六歩兵団

  司令部

  歩兵第百四十六連隊

  装甲車隊

  野砲兵第一大隊

  工兵第一中隊

  輜重兵第二中隊

  衛生隊

  第一野戦病院

 野戦高射砲第四十四大隊

 独立無線第六第七小隊 

 第三十三固定無戦隊

二、集合点に於ける泊地付図第一の如し(図省略)

  第三 上陸開始期日及時刻竝上陸日程

上陸開始はX+三〇日未明と予定し上陸日程は三日とす

右上陸開始期日は海軍蘭印部隊指揮官は第十六軍司令官と協議決定し遅くとも「パラオ」出港前日迄に夫々之を護衛指揮官及支隊長に命令す

但し「パラオ」出港後急に之を変更するの已むを得ざる場合に於ては護衛指揮官、支隊長と協議決定し夫々速に之を海軍蘭印部隊指揮官及軍司令官に報告するものとす

  第四 輸送船隊の船隊区分及行動

     要すれば指揮官の所在

 護衛指揮官、支隊長間の協定に依る

  第五 海上護衛及輸送船隊航路

一、護衛兵力 L C×一、d×八、w×四〜六

 同指揮官海軍少将 西村祥治(那珂)

二、輸送船隊航路 別紙の通

  第六 牽制陽動

 之を行わず

  第七 航空部隊の用法

一、使用兵力

  第十一航空戦隊の一部

二、協力要領

  航行間竝に泊地に於ける船団を掩護し且上陸部隊の要求に依り其の戦斗に協

  力す

 註 第十一航空艦隊は陸攻隊及戦斗機隊の各一部を以て敵航空兵力を撃滅する

  と共に右に協力す

  第八 泊地及泊地進入の要領、輸送船隊の投錨時機

     及碇泊隊形

第一泊地は「バツー」岬東南方海面とし投錨は日出三時間半前とす

其の他の細部に関しては護衛指揮官、支隊長と協議決定す

  第九 上陸戦斗上陸掩護及揚陸作業援助

一、海軍陸戦隊は「タラカン」上陸時より要域戡定に至る迄の間作戦に関し坂口

 支隊長の指揮を受く

二、上陸戦斗指導要領

 ㋑上陸は奇襲を本則とするも状況已むを得ざる場合は強襲上陸を敢行す 其の

  転移は支隊長之を命ず

 ㋺支隊は主力を以て「カルンガン」川東南方海岸に一部を以て同川西北方海岸

  に上陸し速に先づ「バツー」砲台を占領すると共に随所に敵主力を索めて之

  を撃滅し迅速に「タラカン」及「リンカス」を占領す

  海軍陸戦隊は陸軍部隊の右翼に上陸す

 ㋩「タラカン」及「リンカス」を占領せば機を失せず一部を以て飛行場油田地

  帯及「サドウ」付近砲台を占領確保すると共に主力は残敵を掃蕩す

 ㋥以上各部隊は其の上陸完結を待つことなく前進を開始し迅速に戦果の獲得を

  図るものとす

 ㋭右の作戦間海軍艦艇の一部は海上よりする敵の逃避を遮断するに努む

 ㋬以上の如く予定すと雖も其の実行は当時の状況に基き現地海陸軍指揮官協議

  の上変更することあり

 ㋣海軍は支隊の「タラカン」攻略と概ね同時頃別に一部を以て「メナド」を攻

  略す

三、上陸掩護射撃

海軍艦艇は陸軍部隊の要求に依り天明後「バツー」の敵砲台及其の他主として敵砲兵等を射撃す

  第十 上陸後に於ける海陸軍協同

「タラカン」要域を戡定せば速に其の警備を海軍と交代し支隊は「タラカン」付近に集結して次期作戦たる「バリックパパン」の攻略を準備す

 状況により「タラカン」島の攻略に引続き更に海陸協同して付近の要域特に油田地帯を占領することあり

 但し之が為「バリックパパン」攻略の時機を遷延するは本旨にあらず「ホロ」支隊は勉めて速に「タラカン」に回航せしむ。其の護衛細部に関しては護衛指揮官支隊長と協議決定す

  第十一 上陸終了後に於ける輸送船の行動

揚陸作業終了せる輸送船は現地に待機せしむ

  第十二 通信連絡

別冊の通り定む(省略)

 其の三 「バリックパパン」「バンジェルマシン」及

   「バリー」の攻略

一、「バリックパパン」の攻略

 ㋑海軍陸戦隊は上陸時より作戦に関し坂口支隊長の指揮を受く

 註 第十一航空艦隊司令長官指揮下一〇〇一部隊(挺身部隊)は降下着陸後よ

  り要域戡定に至る迄の間作戦に関し坂口史隊長の指揮を受く

 ㋺上陸戦斗指導要領

  ⑴「バリックパパン」方面

   支隊は主力を以て「バリックパパン」埠頭付近に各一部を以て「バルー」

   及「スプールー」砲台付近に上陸し特に速に精油施設を占領す

  註 海軍一〇〇一部隊(挺身部隊)は坂口支隊の上陸と呼応し適時要点に降

   下して之の占領確保す

  ⑵「サマリンダ」方面

   「ペガ」川河口より舟艇機動に依り「サマリンダ」及「サンガサンガ」に

   上陸す

  ⑶要域戡定に伴い陸軍部隊は全般の警備資源及諸施設の確保竝に治安維持に

   海軍部隊は飛行場の整備確保に任ず

  ⑷以上の如く予定すと雖も其実行は当時の状況に基き現地海陸軍指揮官協議

   の上変更することあり

二、「バンジェルマシン」の攻略

 当時の状況に基き海軍蘭印部隊指揮官支隊長と協議決定す

 註 海軍一〇〇一部隊(挺身部隊)之に協力することあり

三、「バリー」の攻略

 当時の状況に基き海軍蘭印部隊指揮官支隊長と協議決定す

                     (以上)

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