第十四話 ラモン湾上陸部隊出撃

 第十六師団が十五日〇〇〇〇を以て第十四軍の序列に入る命令を請たのは十一月十二日であり、「垣作命甲第壹号」を令した。


   第十六師団命令  十一月十二日一〇〇〇

               京 都

一、師団及独立速射砲第八中隊は十一月十五日〇〇〇〇第十四軍の戦闘序列に入

 らしめたる

二、師団は訓練を継続しつつ密かに出動を準備せんとす

三、諸隊は概ね十七日夜半迄に出動の準備を整え爾後別に定むる時機迄訓練を継

 続しつつ出動準備を補備すべし

四、予は京都に在り

           師団長  森岡 すすむ 


 師団長森岡中将は、明治二十二年(一八八九年)四月生まれ。広島県出身。陸士二十二期卒。昭和十七年八月予備役に編入。


 十五日付の森岡師団長の訓示が遺っている。


     訓 示

師団は昭和十六年十一月十五日午前零時を期して第十四軍の戦闘序列に入り軍司令官陸軍中将本間雅晴の指揮を受けしめらる。

矢は満を持したる弦より放たれんとす。我師団将士の忠誠疑念の矢は石をも貫くべく積年類白の錬成に加うるに国成せる団結の威力を以て愈々光輝を発すべし。堅忍不抜困苦を制し必勝の信念を具現し皇国の道義を中外に宣揚して八紘為宇はっこういちうの天業を恢弘翼賛し奉らんこと祈念して止まず。

師団は近く数次数団に分散して時局に即応する為直接必要なる訓練に従事せんと。時勢は緊迫の度を倍加しつつあるが故に訓練中と雖も急遽命を拝して各々東亜共栄圏内の重要部位に向い活躍するに至るべきことをも予期せざるべからず。日夕直接本職と行動を共にし得ざる部隊ありと雖も克く聖諭を服膺ふくようして戮力協心戦陣訓を体し以て師団の名誉を発揚し誓って祖国の嘱望に背かざらんことを期すべし。

予期する戦場は勿論近く訓練のため趣かんとする地方は瘴癘しょうれい悪疫の地なるを常とす。親愛なる小平は特に衛生を重んじ奉公に支障なき様戒心し且先陣の間兵器資材馬匹を尊重愛護して戦力の保持に注意せんことを心懸くべし。我が師団の将兵は郷土を尊重し「立つ鳥は後は濁さざる」武人の振舞を以て出発し桃稜師団の名を継ぐ第五十三師団に其の名誉と良風を伝えんことを望む。

細部に関しては参謀長をして支持せしむ。

   昭和十六年十一月十五日

         第十六師団長      森岡 皐


 第十六師団は十八日には鉄道輸送計画表に基づき行動を開始し、二十一日以降に桃山駅から大阪港に向い、港に待機している各輸送船に乗船する行動をしている。

 二十五日夕刻輸送船は大阪港を出航。途中四国沖で上陸演習を実施しながら、十二月三日午後奄美大島古仁屋湾に投錨した。翌日からは訓練訓練の日々が続く。

 十二月八日開戦の日、森岡師団長は師団命令を発した。


 垣作命甲第十八号の一

   第十六師団命令     十二月八日

               北野丸(大島)

一、南方地域に於ける統治諸国政府及其の軍隊対日敵性は露骨化し支那事変を処

 理し東亜共栄圏を確立して永遠の平和を保全する為帝国は武力解決の方途を選

 ぶの他無きに至り我が陸海軍は西太平洋に於て既に交戦状態に入れり

二、師団は南方地域の要点に対する上陸作戦の準備を完整せんとす

三、諸隊は別冊加喜部隊上陸作戦要領に基き準備を完整し訓練を継続すべし

四、上陸作戦の準備に関しては直接関係相互者外に対し厳に機密保持に注意し作

 戦の遂行を阻害するに至る原因を醸成せざる様戒慎すべし

五、予は北野丸に在り

        師団長  森岡 皐


 これと併せて以下の上陸作戦要領が配布された。


   加喜部隊上陸作戦要領   加喜部隊本部

    第一

一、兵団の上陸作戦は第三艦隊の一部(第一根拠地隊を基幹とす)と協同して行

 う

二、兵団は奇襲上陸することに万般の努力をなす

三、船体区分別紙第一の如し

四、輸送船隊の出航港、航海及泊地進入は護衛隊指揮官に於て指揮す

五、警戒航行隊形別紙第二其の一乃至其の三の如し

  特令なき時は昼間は其の一、夜間は其の三を準用し特令に依り特に必要なる

  場合其の二を適用す

六、航行速力は原速力八節、半速力六・五節、微速力五節とす

七、海軍は輸送船隊出港前より一部兵力を以て輸送船隊予定航路の対戦掃蕩を実

 施し出港後追躡潜水艦の攻撃撃破に任ず

八、輸送船隊会敵時に於て準拠すべき処置左の如し

 イ、敵空襲又は潜水艦の攻撃を予測したる場合は各分隊列毎に嚮導艦誘導の下

  に回避運動を行うを例とするも護衛指揮官の特令に依り回避を行わしむるこ

  とあり

 ロ、敵潜水艦又は魚雷を近距離に発見したる場合は情況之を許す限り衝撃撃沈

  に努むるか又は単独回避するものとす

 ハ、輸送船自衛兵器の使用は護衛指揮官の特令に依るも対空射撃及直衛を突破

  せる潜水艦に対する射撃の実施は輸送指揮官の所信に一任す

九、輸送船故障又は遭難時に於て準拠すべき処置左の如し

 イ、遭難船の救助応急処置及援助は差当り直衛艦艇之に任じ護衛指揮官の指示

  する海軍の兵力を以て之れを継承するを例とす 他の艦船は特令なき限り現

  針路速力を保持す

 ロ、落伍艦船を生じたる時は次番船は其の定位を充たすものとし落伍船追及し

  たる時は所属分隊列の後尾に入るを例とす

一〇、輸送船隊の燈火は非常管制を行い航海中は所要の船尾信号燈を点出す

一一、泊地進入隊形別紙第三の如し(省略)

一二、泊地及碇泊隊形別紙第四の如し(省略)

一三、泊地進入時海面及海岸に於て敵の抵抗に会する時は強行之れを突破す

一四、「泊地進入隊形つくレ」を令せられ掃海隊が前路掃海を開始せば防雷を装備

 せる輸送船は防雷航行をなし此の際各輸送船は前方直後に続行し特に隊形の保

 持に努むるものとす

一五、護衛隊指揮官は投錨概ね五時三十分前に「泊地進入用意」を令す

一六、泊地進入の為微速力以下となりたる時高速艇甲を泛水はんすいし輸送船隊主力と海

 岸の間を航進せしむ

 其の泛水時機は兵団長の命令に依る

 高速艇甲は輸送船隊が海岸より射撃を受け危険なりと認めたる場合煙幕を展張

 して船隊を庇掩す

 煙幕の展張に際しては輸送船の運動を容易ならしめ又上陸部隊の海岸目標認識

 の必要性を考慮し無意味に煙幕を展張して之れを妨げざる様注意するものとす

一七、護衛指揮官は適当の時機に「各隊予定順序に入港」を令す 此の際主力と

 分離する輸送船隊は主力船隊より分離し泊地に就く

 各嚮導艦は泊地に入るに先だち「入港用意」を下令し次で「投錨」を下令しつ

 つ所定の錨地に入泊す

   第 二 

一、上陸戦斗の為軍隊区分別紙第五の如し

二、護衛隊の上陸掩護射撃は天明迄は実施せざるを原則とす 状況により射撃す

 る場合其の射撃目標は臨機之れを選定し上陸部隊より要求ある場合の外護衛間

 の所信に俟つ天明後兵団左翼方面を警戒し多数の敵部隊を認めたる時は適時之

 を射撃す

三、護衛隊は陸軍部隊上陸地区以外の要点に陸戦隊を上陸せしむるも其の細部は

 現状に於て決定す

四、上陸緩急順序は左記に準拠し各輸送船に於ける標準は概ね別紙第六の如く細

 部は軍隊区分に基く各部隊長及輸送指揮官に於て決定するものとす

   上陸緩急順序の標準

1、広、福、吉、村各部隊の第一線歩兵の人員及其の携行する兵器材料第一回上

 陸戦斗に協同する工兵等

 加喜本部情報所の一部

 第一回上陸に同行して陸上に施設する通信部隊の人員材料初期上陸部隊の上陸

 指導及連絡に任ずる海岸勤務員

 交通整理の任務を有する部隊の偵察者

 地形及道路偵察に任ずる斥候

2、前項の残余

 加喜本部情報所の全員

 松部隊(行李を含む)及其の前進竝に戦斗に直接協同する部隊

 交通整理及交通警備に任ずる部隊人員の大部、工兵

 衛生機関の中直接診療に従事する人員材料の中必要なるもの

 挺進する自動車、自転車類の残余

 広、吉、村各部隊第一線歩兵の材料

 交通整理に任ずる部隊の残余

 後次上陸戦列部隊の偵察者

3、[記述なし(欠落もしくは付番誤り)]

4、爾余の戦列部隊の内戦斗に任ずるもの

5、戦列部隊の残余及補給諸廠の偵察者

  衛生機関の大部

6、輜重行李及後方機関

  補給軍需品の一部

  馬材料

7、補給軍需品

五、第一回上陸は抜錨後努めて速に開始するを本旨とす之が為広、福、吉、村各

 部隊は当初小発動艇隊のみを以て上陸し大発動艇にあらざれば揚陸し得ざる材

 料及其の余積に搭乗し得るものにのみ大発動艇を充当する如く計画するを通側

 とす

六、第一回上陸の為舟艇隊は各輸送船毎に編成し移乗完了後直に上陸を開始する

 を本旨とし上陸兵団長(広、村部隊上陸地区に在りては当該部隊長以下同じ)

 は短艇鉤に懸吊せる小発動艇のみを以て懆急に上陸を開始するの必要を認めた

 る場合及一斉に上陸するを有利とするが如き状態に於てのも臨機上陸開始を特

 令に依り統制す

 一斉上陸を行う為上陸開始を特令に依り統制する場合に於ては第二回上陸予定

 の歩兵は大発動艇に優先移乗するものとす

 此の場合に在りては艇隊は編合して艇隊群を編成す

七、第一回上陸部隊の中核たるべき指揮官例えば歩兵大隊長の乗船より艇隊の発

 進するを認めたる時は隣接輸送船より発進する当該指揮官所属の部隊は之に呼

 応し移乗を完了せる発動艇のみを以て艇隊を編成して速に上陸を開始し当該中

 核たるべき指揮官の周辺に於ける当初達岸部隊の戦力を十分に発揮することに

 努むるものとす

八、第一回上陸に於ける艇隊内各舟艇の間隔は側方に向い前進する特別の任務を

 有するもの及海上竝に水際にある天然若くは狭正面の人為障碍物を避くる場合

 の外約三十五米を標準とし波浪特に大なる場合等已を得ざる時にありても五十

 米以上に離隔せざることに努むるものとす

 第一回上陸の為舟艇隊相互の占むべき正面幅は其の舟艇数に上記の間隔を乗じ

 たるものとし艇隊間隔は概ね五十米を標準とす

九、上陸部隊の指揮官及艇隊指揮官は艇隊運動の基準艇隊及基準艇を確定し前項

 の規制に混雑なからしむることにつき責に任ずるものとす

 第一回上陸海岸の核心は基準艇隊の達着せる海岸とす

一〇、海岸に対し輸送船を二列に配列したる場合後方列の輸送船より発進する発

 動艇は前方列輸送船の右側(海岸に向い称呼す)間隔を濾過して航進す帰還に

 方りても同一方則即ち陸岸より輸送船に向い左側を濾過するものとす

一一、左の輸送船は第一回上陸をせず搭載舟艇を投錨後直に泛水して揚陸作業計

 画に定むる所に基き他の輸送船に回航するものとす

  興福、富山、辨加拉、会明、遼河、神盛

一二、左の輸送船は当初上陸する部隊人員の為一部の舟艇を残置し、爾余を他の

 輸送船に回航するものとす

 其の細部は揚陸作業計画に依る

   大日、  だあばん

一三、広、福、吉、村部隊輸送船に搭載する発動艇は初期他の輸送船に配当換せ

 ざるを本則とし後次行う配当換は揚陸作業計画に依る

一四、上陸戦斗に任ずる部隊の搭乗する発動艇を運航する揚陸隊工兵は上陸部隊

 指揮官の指揮を承くるものとす

 右の部隊指揮官よりも揚陸隊工兵指揮官が上級先任なる場合には上陸部隊指揮

 官は舟艇隊の行動に関し必要なる要求をなし当該工兵指揮官は技術上不可能な

 るにあらざる限り之に応じ最大限の協力を為すものとす

一五、上陸開始は天明前とし第三回上陸時期に於て天明に及ぶものとして計画す

 るものとす、然れども第一回上陸部隊の乗艇区分及舟艇内の乗組法は天明時又

 は月明時に上陸を行う事あるを顧慮して定め又第二回以後上陸する部隊にあり

 ても夜間自衛力を発揮し得る如く準備しあるを要す

一六、上陸海岸に石花礁点在し或は断崖に遭遇することあるを予期し舟艇は航進

 に当り前方の偵察を怠らず且つ此の際罅隙かげき部の発見礁土の通過或は攀登はんとを許す

 場所の捜索に努力するの要あり

 当初上陸部隊は海岸にある人為障碍物を上陸に際し回避せざるを本旨とす 之

 が為各舟艇毎に水際障碍物処理の手段を予め講じ置くものとす

一七、発動艇隊の海岸より輸送船への夜間に於ける帰還及爾後の運航に関し艇隊

 行動をなすべきや循環運航の要領によるべきやは訓練の程度、明暗及海面標識

 設置の効果を考慮し揚陸計画に定むるものの外は当該艇隊長の所信に基く臨機

 処置に依るものとす

一八、泊地進入時及当初の上陸時期に於ては海岸よりする敵の妨害(砲兵、重火

 器及照射)を警戒し必要に依り船隊の側面、及正面に煙幕を展張す

 海面に於ける煙幕の展張は護衛艦及揚陸作業隊にて主として担任するものと

 す 然れども自衛の必要に際しては上陸部隊自ら水上発煙筒を使用するを防げ

 ず此の際正面に煙幕を展張するは上陸海岸の認識を困難ならしむる不利あるこ

 とを顧慮し濫用せざる様主意するを要す

一九、兵団情報所を第一面北野丸上陸部隊と共に上陸せしめ当該海岸に之を設置

 す 主力方面当初上陸部隊揚陸作業隊及交通整理隊は上陸直後又後次上陸部隊

 は其の上陸に先だち上陸指導連絡の勤務員を情報所に差出すものとす

 其の標準は別紙第七の如し

二〇、第一回上陸部隊は海岸に於ける障碍物及敵の抵抗を排除して海岸に地歩を

 獲得し全兵力の海岸集結を待つことなく引続き陸上の戦斗及前進を行う

 上陸部隊は何れも海岸達着後直に海岸を開放して前進し前方に追及するものと

 す

二一、上陸部隊人員は海岸に於て救命胴衣を脱し概ね小(分)隊毎に集積して散

 逸亡失を防止し揚陸作業隊に引続き返納するものとす

 揚陸作業隊は各上陸地区毎に受領員を差遣配置するものとす

二二、後次上陸部隊は一地点に集結上陸すること困難にして海岸に分散上陸する

 を通常とするを以て各部隊指揮官は之を適時に掌握する為必要なる手段を講じ

 上陸部隊は速かに隣接及前後の連絡を図るものとす

 兵団主力方面に於ては上陸及海岸より前進に際し兵団情報所に連絡して所要の

 指示を受くるを要す

二三、輸送船上にある火砲、重火器は必要により海岸戦斗を支援し、又泊地の防

 空に任ずるものとす

二四、揚陸作業隊はなし得る限り速に装甲艇を泛水し兵団主力の海岸戦斗に協同

 するものとす

二五、各上陸部隊は上陸点に於ける敵の防備特に水際及陸上に於ける障碍物、工

 事の有無、上陸直後に於ける敵の抵抗の景況、敵の兵力素質編成装備団隊号等

 の状況を捜索し機を失せず兵団情報所を経て報告するものとす

二六、揚陸作業隊は海面の状況及其の揚陸作業に及す影響、上陸点付近にある桟

 橋及其の利用価値竝びに爾後の上陸根拠地設定に必要なる資料等を収集するも

 のとす

   第三

一、軍隊区分に基く各部隊の任務は別に定むる所に依る

二、兵団自ら行う上陸点の事前及直前偵察は実施せず

三、上陸時に於ける部隊及個人装備竝糧食の携行等に関する準拠は別に定むる所

 による

四、兵団内通信連絡に関しては別に定むる所に依る

五、海軍は上陸部隊と共に陸上無線所を兵団情報所付近に上陸せしめて上陸部隊

 と護衛隊間の通信連絡を担任す

六、陸軍部隊の付近に自衛力乏しく又給養機関なき海軍部隊人員ある時は当該陸

 軍部隊は其の掩護及給養を担任し其の行動に便宜を供与するものとす


  別紙第一

   船隊区分

第一分隊 北野  龍野  日連  会明  うめ  辨加拉

第二分隊 蓬莱  大永  興福  五多聞 隆洋  豊橋

第三分隊 華陽  長門  遼河  大日  東福 りすぼん

第四分隊 神州  神盛 だあばん 富山  梅川  悠紀


 別紙第五

    軍隊区分

広部隊 

 長 歩兵第二〇連隊第二大隊長 恒広中佐

   歩兵第二〇連隊第二大隊

   歩兵第二〇連隊歩兵砲中隊の一部(約三分の一)

   第十六歩兵団通信の一部(二分隊)

   野砲兵第二十二連隊第九中隊

   工兵第十六連隊第二中隊の一小隊

   第四野戦病院の半部

   独立自動車第二百十中隊

  区処部隊

   師団通信隊の一部(三号機一基の一部を付す)

   渡河材料第十四中隊の主力

松部隊

 長 捜索第十六連隊長 松田中佐

   捜索第十六連隊

   野砲兵第二十二連隊第三中隊

   工兵第十六連隊第一小隊(器材小隊)

   衛生隊六分の一

   防疫給水部四分の一

   野戦自動車廠の重修理小隊一組

吉部隊(加喜前衛)

 長 歩兵第二十連隊長 吉岡大佐

   歩兵第二十連隊(第一大隊第二大隊歩兵砲中隊の半部欠)

   速射砲中隊の半部及通信中隊の一部

福部隊

 長 歩兵第二十連隊第三中隊長 三木大尉

   歩兵第二十連隊第三中隊

   第二十連隊第一機関銃中隊の一小隊

村部隊

 長 歩兵第二十連隊第一大長 木村少佐

   歩兵第二十連隊第一大隊(第三中隊機関銃一小隊欠)

  区処部隊

   師団通信隊の一部(五号機二基)  

山部隊(上陸後師団直轄)

 長 歩兵第二十連隊第一中隊長 小林中尉

   歩兵第二十連隊第一中隊

   歩兵第二十連隊第一機関銃中隊の一小隊

   師団通信隊の一部(五号機一基)

加喜本隊

 師団司令部

 独立速射砲第八中隊

  野砲兵第二十二連隊(第三中隊第二大隊第九中隊欠)

  工兵第十六連隊(残余部隊)

  鉄道第六連隊の一小隊

  第三十九野戦道路隊第一中隊

  師団通信隊(一部欠)

  独立無線第五十四小隊

  衛生隊(三分の一と六分の一欠)

  防疫給水部(四分の二欠)

輜重

 長 輜重兵第十六連隊長 岸上中佐

  輜重兵第十六連隊

  独立自動車第二百九中隊

  架橋材料第二十八中隊第三小隊

  渡河材料第十四中隊の一部

  兵器勤務隊(一部欠)

  第四野戦病院(半部欠)

  師団病馬廠

直轄部隊

 高部隊

  長 野戦高射砲第四十七大隊長 淵上中佐

   野戦高射砲第四十七大隊(二中隊欠)

   独立野戦高射砲第三十一中隊

 兵部隊

  区処官 第二十二野戦自動車廠 小栗中佐

  第六十三兵站地区隊(半部欠)

  陸上勤務第百十四中隊第二小隊

  第十六兵站病馬廠 大貫隊

  第十七軍馬防疫廠第二支廠

  第二十二野戦兵器支廠 野本隊

  第二十二野戦自動車廠 小栗隊

  第二十二野戦貨物廠  庄山隊

  気象第三中隊第二高層気象班

  野戦郵便 喜多隊

 坂部隊

  長 第四十四碇泊場司令官 坂本大佐

  第四十四碇泊場司令部(一部欠)

  独立工兵第六連隊(第一、第三中隊(第二小隊欠)欠)

  独立工兵第二十一連隊の第一中隊

  船舶砲兵連隊第一中隊

  船舶通信連隊 荒木隊

  建築勤務第六十八中隊(一部欠)

  陸上勤務第五十八中隊第三小隊

  第七十六兵站病院


 部隊は今しばらく奄美大島にて訓練しながら待機していたが、その間師団通信隊の通信傍受により、戦況の報告は日々将兵に伝えられたようで、

「通信隊は之ら資料を利用して学科を実施して将兵の志気を鼓舞し併せて予想作戦に対し遺憾なからしむる如く訓練或は教育に日夜精励」

 に努力していた。通信隊の戦況傍受や国際ニュースの傍受も網羅されて報告されていた。

 八日午後には本間軍司令官からの訓示が届けられ披露されている。

 そして十二月十七日、森岡師団長の訓示が示された。

    訓 示

 曩に英米に対し宣戦の 大詔渙発せられ陸海

 軍に対し 御勅語を賜う真に恐懼感激に堪え

 ず此秋に当り本職第十四軍に属し隷下聖師を

 率い呂宋島の攻略に向わむとす其の責任の重大

 なるをおもんばかると共に光栄之に過ぐる無し只管

 御稜威の下に隷下将兵諸員と共に 聖諭を奉

 戴し死力を竭して間外の負托を完遂せんこと

 を期す

 開戦以来我が陸海先駆諸部隊は蓋世驚駭がいせいきょうがいの戦

 果を収めつつあり将兵諸員は光輝ある使命に

 蹶起し先駆諸部隊に倣い尽忠報国の至誠を捧

 げ鉄石の団結と旺盛なる志気とを以て平素鍛

 錬を重ねたる手腕を十二分に発揮すべく又益

 々軍紀を厳正にし皇軍の名誉と威武とを発揚

 し戦野の民をして日本精神の真髄を知らしめ

 欣然きんぜんとして皇軍に協力し東亜新秩序に参加す

 るに至らしめ以て 聖慮に副い奉らむ事を期

 すべし

   昭和十六年十二月十六日

      第十六師団長  森岡 皐

      (「第十六師団通信隊陣中日誌」 より)

 

 森岡師団長は十七日午前中各輸送船を巡視して回り、午後二時には遥拝式を行い、各輸送船での訓示と健闘を祈る祝杯が捧げられ、十七時輸送船は出港していった。

 向うはルソン島ラモン湾である。

 輸送船団を護衛するのは第四護衛隊である。

旗艦 軽巡 長良

 第二十四駆逐隊 駆逐艦 海風 江風 山風 涼風

 第十六駆逐隊第一小隊 駆逐艦 雪風 時津風

 第一哨戒隊 哨戒艇 第一号 第二号

 第一根拠地隊 敷設艦 蒼鷹

 第二十一掃海隊 掃海艇 第七〜第十二号

 第一駆潜隊 駆潜艇 第一号、第二号、第三号

 第二駆潜隊 駆潜艇 第十三号、第十四号、第十五号

 第五十一駆潜隊 第十二京丸、第十三京丸、第一東光丸

 第五十二駆潜隊 第五拓南丸、第十七拓南丸、妙見丸

 白山丸、妙高丸、君島丸、いくしま丸

 給油艦 早鞆

 海軍陸戦隊二コ小隊(佐連特)

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