手紙
『 悠芽へ
君と過ごした第二の人生は、毎日がキラキラとても輝いていて、ずっと幸せだった。
だから、君が望むなら、ずっとこのままでいいと思っていた。
だけど、君はもう立派に自分の道を生きている。だから僕も、自分の道を進む事ができる。
ありがとう、悠芽。僕の妹として生まれて来てくれて、僕を愛してくれて。僕も愛しているよ、悠芽。
そして、僕がいなくなっても、僕はずっと君の側で見守っているから、僕の大好きなその笑顔を枯らさないでくれ。
さよなら悠芽。幸せになってね。
君の兄、蓮より』
『 由紀弥君へ
悠芽をいつもありがとう。そして、悠芽の為に君に罪を犯させてしまってすまない。
けれど、君のくれた第二の人生と言う名のチャンスは、とても幸せな時だったよ。
もし出来れば、君にはこのまま研究を続けてもらいたい。そしていつか、その種が芽吹き、満開の花を咲かす事を願っているよ。
追伸
あとこれは僕の細やかなお願いだけど、悠芽に君が好きだと言う"恋"の自覚をさせてあげて欲しい。
では、さよなら由紀弥君。
悠芽の兄より』
お兄ちゃんの部屋から日記帳と共に見つかった私達宛の涙の跡で端っこが滲んだ手紙には、お兄ちゃん美しい字でそう書かれていた。
永遠に残る手紙と言う方法をとったのはお兄ちゃんらしいと思ったが、やはりお兄ちゃんには永遠に敵わいそうにない。
読み終えた後の部屋には、確かにお兄ちゃんの温もりが、優しさが、私達を優しく包み込んでくれていた。
主を失った日記には、お兄ちゃんが生き返った当初の迷いや苦悩、そして、私達と過ごした日々の幸せな時が、事細かに書かれていた。そして最後のページ
"
風はめぐりめぐり
憎しみも、苦しみも、悲しみも
すべての痛みを
連れ去っていく。
風は世界をめぐりめぐり
いつか貴方に
会える日を連れてくる。
貴方の血の上に創り上げられた世界は
いつか満開の花を咲かすだろう
"
そこには、お兄ちゃんが好きだった詩が書かれていた。
そしてその詩が、今の私達を未来に連れ去ってくれるような気がした。
ありがとう、お兄ちゃん。そして、さよなら。
fin.
私の怪物 ビターラビット @bitterrabbit
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