第40話 解説書の選び方
「それは間違いないね。
「目当てのソフトが、自分の環境でも動くかどうかを調べる方法も話しておこうか」
「あった! これこれ。二人ともこのページを見てみて」
本のページをめくる手を止めると、
僕は本を受け取ると、白川さんにも見えるように渡された書籍を持ち直す。
開かれた本のページの見出しには『インストールと設定』と書かれている。
僕と白川さんが本の内容に視線を落としていると、見ているページの上にスッと
「ここを見て。この解説書で紹介しているソフトウェアを使う為に必要なパソコンの条件が書いてあるだろ」
なるほど確かに
僕と白川さんがその部分を読んでいると、
「自分のパソコンでも使用可能かどうかは、解説書の冒頭部分を確認すればわかるってこと?」
僕は本から目を離して、
「そうなっている解説書が多いと思う。逆に、初心者はその部分を確認出来ないような解説書に手を出すべきではないと思うね」
僕は持っている本を
「著者のプロフィール?」
返された本の開かれたページを白川さんと見ながら、僕はそう言った。
僕の言葉を聞くと、
僕は言われた情報が載っている
「初めて触るソフトウェアの解説書を買うなら、発行日や増刷日があまりにも古いものは選ばない方が良いと思う」
「最近のソフトウェアはインターネット経由のアップデートが入るものがあるだろ? 操作画面の見た目が、その際に大きく変わることがあるんだ。慣れないソフトの解説書を読むなら、出来るだけ情報が新しいものの方が読みやすいはずだよ」と
「確かに解説書とソフトウェアとで、表示されているソフトウェアの画面が違ったら、混乱するかも……」
白川さんが納得したように頷く。
僕は
パソコンを買い替えた際、新しいパソコンに今までより新バージョンのエクセルが入っていることがある。
そういう時、古いパソコンに入っていたエクセルとツールの配置が変わっていて、戸惑いを覚えるという経験を何度もしてきた。
確かにそういう状況になった場合、使い慣れたソフトウェアなら苦労しつつも何とか使えるかもしれない。だが
「じゃあ書店の本を頼りにソフトウェアを選ぶ際は、解説書の種類の多さでソフトの勢力を確認し、自分のパソコンで使えるソフトかどうかを本の冒頭部分を読んで確認、そして解説書を購入する場合は発行日や増刷日が新しいものを選ぶ……」
僕は指を
「そうだね。あとは説明用の画像が多いものを選ぶのもおススメだよ。初めてのソフトは、文字を読むだけでは使い方のイメージが湧き難いしね」
「この本みたいに一通り動画を作ってみることが出来る本が、個人的にはおススメだよ」
そう言って
見せられた書籍は『作りながら楽しく動画編集を覚えよう!』という文字がポップな書体で印刷されている。どうやらこのポップな文字は本のサブタイトルらしい。
僕は
「動画サンプルが用意されていて、それを編集するんだね……」
僕はそう言うと、視線を本から離す。そして手にしている本を白川さんに渡した。
「これって練習用サンプルを仕上げるだけで、自分の動画を編集するわけじゃないじゃん」
僕は不満を口にする。
サンプルを作るなんて物足りない。
どうせならオリジナルの動画が作りたい!
僕はそう思ったのだ。
僕の隣で白川さんが、先程手渡した『作りながら楽しく動画編集を覚えよう!』というサブタイトルの付いた本をパラパラと
「確かにそうだね。でもね、この一冊をやりきれば一通り動画編集が体験できるんだよ? 最後まで編集作業を体験するって、とても意義があることだと思うんだ」
そこへ白川さんが本の中身を確認しながら口を挟んできた。
「この本。ソフトウェアの導入方法に動画データの取り込み方法、もちろん編集方法も書かれているし、最終的な完成データの書き出し方法まで順序良く教えてくれそうね。サンプルを使うとはいえ、映像作品の編集を最後までサポートしてくれるなんて凄いわ! 自分の動画を作る作業にも、きっと応用出来ると思う」
白川さんが興奮した様子でそう言った。
「やり方が順番通りに書かれてるってスゴイの?」と僕。
「ええ。動画編集の本を見るのは初めてだけど、私の持ってるソフトウェアの解説書はまるで辞典よ! このソフトにはこんな機能がありますっていうのを列挙して紹介してて、自分に必要な機能が何なのかは自分で判断しないといけないの」
白川さんは一気にそこまで言うと、
確かに、初心者の僕が辞典のような本を買っても、何を調べれば良いのかすら解らない。それならば面白みに欠けるかもしれないサンプル動画ではあっても、編集手順を全て指示しもらって、編集作業を一通り経験させてくれる解説書の方が良いのかもしれない。
僕は白川さんの話を聞いて、この本の良さが少し理解出来た気がした。
僕が黙ってそんなことを考えていると、
「継続して使って行く気があるソフトなら、こういう解説書をせめて1冊くらいは購入しておいた方が良いと思うよ」
「……やっぱり、買った方が良いのか。ちなみに、電子書籍じゃあダメかい?」と僕。
「慣れてるソフトの本なら、電子書籍で解説書を買うのも良いと思うけど……。これから初めて触るソフトの本なら紙媒体のほうが良いと僕は思うけどな」と
「えー? なんでさ」
僕はまた不満げに訊き返す。
ここにある本はどれも分厚くて
「僕の経験からの話だけど、解説書通りにやっても上手くいかない事って出てくると思うんだ。そういう時に何に引っかかったのかをすぐに書き込めるのは、僕には重要なポイントなんだよね。電子書籍でも書き込みが出来るのかもしれないけど、自由度が全然違う気がする……」
自分だけの解説書か……。それはちょっと面白そうかも。
先程までの不満はどこへやら、1冊購入してみようかという気に僕はなってきた。
実は先日の臨時『お金会議』で議題に上った定額制の電子雑誌のサービスを、我が家で導入してみることになったのだ。そのおかげで僕の月々の雑誌代が浮く目途が立っていた。
そのような理由で、浮いたお金で解説書を買うのも良いかもしれないと思えたのだ。
そうとなれば、早速購入する本を探しにかかりたい。
「電子書籍でない方が良い訳は解ったし、一通り動画編集を体験できる本が良い事も解った気がする。……僕も今日、1冊買って帰ろうかな?」
僕はそう宣言すると「人気があるソフトで残ったのはプレミアプロか……。これがWindowsで使えるのかを確認してみれば良いんだね」と言葉を続け、使用条件の確認のためにプレミアプロの解説書を1冊手に取ろうと、書棚に手を伸ばす。
すると
なるほど、今日は
僕は得をしたような気分になり、手を止める。
「ちなみにサークル室で
そう言いながら白川さんは手にしてる本を書棚に戻す。
「やっぱりね。そうじゃないかと思ったよ。ちなみに僕もこれを使ってるし、雄太もそうだったはずだ」
「そうなの? 皆、このソフトなんだ。じゃあ、僕もこれにしようかな……」
僕は
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