#45




 柏木の前歯がエリの突起を吸い取り、甘噛みする。

 身震いするような快感が、身体じゅうを駆け巡る。


「くはぁぁ…っ」


 コリコリと先端を甘噛みされると、腰の奥がムズムズしびれて、頭がぼんやりする。ショーツの奥で、蜜がにじむのを感じる。

 そのまま柏木は、玄関に続く廊下の壁に、エリを押し付けた。

 そして、両手首を掴み、両手を上げさせた。あの時のように。

 エリの無防備な脇が、さらされる。


「あぁ…っ。いやぁ…」


 そのすべすべの肌に、柏木のキスの雨が降る。

 汗の香りがするかもしれない。変な匂いがするかもしれない。シャワーも浴びてないし。そんな思いが乱れるが、すべてはむさぼるような彼の勢いに流されてゆく。

 脇の素肌に甘い舌先が滑ると、腰がのけぞるように動いてしまう。


「ひゃぁぁっ」


 そこを舐められ、片手で逆側の脇からアンダーバストにいたるラインを揉みしだかれると、意識が薄れるような快楽が身体の芯から全身を引きつらせる。


「いやぁ…ダメダメダメ…」


 両手をバンザイの姿勢にさせられたまま、エリは迫りくる強い快感を本能的に避けようとするが、柏木がその唇をキスでふさぐ。

 彼の舌がエリの唇を押し開き、口の中に侵入してくる。


 溶けちゃう。溶けちゃう。

 意識が、理性が。


 ヌルヌルの彼の舌がエリの舌と絡み、エリの歯をひとつひとつ、舌先が愛撫してゆく。荒い息をふたりともがしながら、キスの魔力に溶けてゆく。


「おまえが…欲しい…エリが…欲しい」


 うわごとのように柏木が言う。キスの合間に。はらの底から言葉が沸いて、あふれていた。


「奪って…お願い…私を奪って…」


 エリも夢中で言葉を返す。

 彼にすべてを奪われたかった。自分のすべてを、奪い去ってほしかった。


 エリは自分でジーンズのボタンをはずし、ジッパーを下ろした。柏木ももどかしそうにスーツを脱ぎ去る。エリは壁に両手をつけて柏木に背を向け、ヒップを突き出した。淡いグレーのスポーティーなコットンのショーツは、芯の部分がハッキリと染みていた。


「お願い…お願い…」


 エリは自分でショーツをずらし、桃のような尻をむき出しにした。その割れ目から、トロトロに溶けたスリットが柏木を求めていた。


「エリ…!」


 そこに、背後から、柏木の硬くたぎった幹が挿入されてゆく。


 あぁ…。

 ああああああっ!


 彼の熱いたかまりが、エリの溶けたクレヴァスの中に深く、深く侵入してゆく。

 腰を押さえつけられ、ヒップに彼のヘアが触れる時、奥の壁に彼の先端が突き刺さるのを感じた。

 目の前が何も見えなくなり、身体の中で竜巻が起こっているような、激しいめまいのような快感に、身が溶ける。


「エリ……エリ!」


 柏木は、エリの腰を掴んで、下半身を激しく打ち付けてくる。熱い杭を叩き込むように。エリの奥を、激しくつらぬく。ふたりの熱い肌が打ち合って、皮のはぜる音が玄関先に響く。


「宏行、あぁ…スゴい…ひろゆきっ!」


 エリも柏木を名前で呼ぶ。

 最初に彼がエリを抱いたときと同じように、ふたりは瞬く間に上り詰める。


「あたしもう…もうダメ」

「俺も…エリ…あぁ…」


 ふたりはお終いに向かって走る。


「愛してる、エリっ!!」


 その言葉は、どんな愛撫よりも強く、エリを打ち抜いた。

 雷鳴に打たれたように、身体中を一瞬で駆け巡り、エリのすべてを奪い去った。そして、エリは全てを明け渡し、エクスタシーを迎えた。

 エリのなかが鋭く締まり、腰をくねらせて柏木を包み込む。

 そのきつい絞り込みのなかでも、柏木は激しく、さらに奥へと自身を突き刺す。

 エリの意識がぜて、奥の壁に柏木の精が放たれる。


 一度。


 二度。


 三度。


 柏木は全てを解き放ち、エリはすべてを受け止めた。




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