#23
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「で、その彼女とはうまく行ったの?」
エリは上になっているヤマギシを見ながら言った。
「とりあえず、食事まではいったさ」
「その後は?」
「お楽しみは、これから…だ」
その最後の一言とともに、ヤマギシはそっと腰を奥にやった。彼の長い幹がエリの奥の壁をやさしく押す。
「……ぁっ…」
エリも声をもらす。
「ダメよ……はぁ…」ため息。「動い…たら……」
「ん…そうだ……な」
ヤマギシは、奥から少し離した場所で幹の動きを止める。
エリが意識せずとも、エリの全体がヤマギシをそっと包み込む。柔らかなひだに一番硬くなった幹をやさしく抱き締められる感覚に、ヤマギシがため息のような長い吐息を漏らす。
「でも…ディナーはいい食べっぷりだったよ」
「それが大事なことなのでしょ?」
「そう。気取らずに思い切りよく飯の食える女がね。……セックスの時もそれに…夢中になれるから」
「私みたい……に?」
答えずヤマギシは唇を寄せてきた。
彼の舌が迎えたエリの舌と絡む。唇を重ねずに、舌先だけで触れ合う。
そこから来るやわらかな快感に、思わず腰が動き、エリの奥がすぼまる。
「くぅ…っ……」
その締め付けの甘美さに耐えきれず、ヤマギシがうめき声をあげる。
そして彼の幹が、エリのなかで一度、引きつけるようにピクリと動く。すでに敏感になり切っているなかをそんな風に刺激されて、エリもまた、身体をぴくりと反らせてしまう。
キスからつづくさざ波のような快感が、性器でつながったふたりの身体のなかで何度も波紋を広げてゆく。肌が溶け合い、互いの身体の境界線が失われてゆくような快楽。意識を超えて、身体が共鳴する感覚。
鋭い頂点のようなエクスタシーではなく、なだらかな山なりが続くような絶頂感を、ふたりは味わっていた。
ヤマギシはエリの通うジムの、ヨガのインストラクターだ。エリより少しだけ年上の既婚者。
ふたりがこうしてセックスをするようになって半年が経つ。そこに恋愛感情は全くなく、エリもヤマギシも不倫という意識はほぼない。
ただ異様に身体の相性の良い同士、他では味わえないような性の試みを実験するパートナーだった。
食事をしてからのホテルとか、時に人目を忍んでの温泉旅行など、いわゆる婚外恋愛のような儀式は全く不要だった。互いの都合が合えば、郊外のラブホテルで何時間かを過ごす。それもインストラクターと馴染みの生徒のように、親しく口をききながら、
ヤマギシ自身は筋金入りのプレイボーイで、現にこうしてエリと性交しながらも、いま口説いているガールフレンドの話をしたりする。かといって自宅の妻とも定期的なセックスを欠かさない。
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