最期

Mr.Groove man

第1話

 1番線に新宿行き~急行が参ります。危ないですから―。


 私が後1歩踏み出せばどうなるだろう。


 ホームのギリギリに立ちながらそんな事を考える。私が電車に轢かれれば間違いなく死ぬし沢山の人に迷惑をかけるだろう。だけれどそんな事はどうでも良い。


 私はもう疲れたのだ。


 夢はあった。学生の頃から必死で追いかけた夢だ。なんとしても叶えたかった。毎日努力した。だがもう良いのだ。周りにいる才能ある若者は自分を軽く追い越していってしまった。それに嫉妬してその子達に嫌味を言うようになった。そして気がつけば自分の居場所は無くなっていった。


 自分は小さくて弱い人間だと思う。こうやって死のうとする事で逃げているのだ。死が全て受け入れてくれると思っている。


 もう戦わなくていいのだ、と。

 自分を嫌いにならなくて良いのだ、と。


 電車がホームに入ってくる―。


 あぁ、終わるんだ。私は一歩を踏み出し―身体が宙に浮く。


「ファァァァァァァァァン!!!」


 凄まじい警笛が鳴り響く音がする。それと同時に家族の顔が見えた。懐かしい風景だ。これを走馬灯と言うのかもしれないな。


 ごめんな。母さん。









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