52 見付けた答え
グレンから。リーナから。そしてアリサからの言葉を受け取って、少しづつ心を落ち着かせていけている自分がいた。
そして確信できたんだ。確信したって思いたかったんだ。
……今此処にある光景が、俺が探していた答えだって。
そう、思う事にした。
「……ありがとな、お前ら」
自然とそんな言葉を三人に掛けていた。
当然ながら抱えていくべきものが全て無くなった訳ではない。
多分今後ずっと、アレックス達の件に関しては抱え続けるのだと思う。それは綺麗さっぱり手放してはならない事だと思うし、これからももしやれる事があるのなら俺はそれをやらないといけないと思うよ。
だけど俺の中でそれと同等に大きかったこの村の事を、綺麗さっぱりどうでもいいと思える位には……俺自身に関する事はもう前向きに見れていた。
目の前の三人にそう言って貰える程度には、自分本位でもまともな人間だって、思う事ができたんだ。
「ほんと……ありがとなぁ……ッ」
気が付けば抑えようとしていた涙が溢れ出てきたけれど。
「どういたしまして」
「同じくっす。で、とりあえず座ったらどうっすか? 先輩立ってるだけでもしんどいっすよね」
優しい笑みを浮かべてそんな風な言葉を返してくれるだけで、泣いてしまった事には触れなかった。
その辺りもさ……ほんと、良い奴らだなって。
コイツらとパーティーを組めて良かったって、そう思うんだ。
その後、ソファーに座った俺の様子が少し落ち着いたのを見計らったようなタイミングで、グレンが問いかけてくる。
「で、クルージ。改めてお前の意見を聞いときたいと思うんだが……勿論もう帰るよな、王都に」
「……そうさせて貰えると嬉しいかな。元々この依頼は俺達のパーティーが初陣で受けるにはちょっと高難易度でさ……まあリーナが一日ですげえ成長してきたからこうして受けられてるんだけど。それでもそうでもなきゃ止められる様な危うさがあった訳だ。そこにあの黒い霧の化物っていうイレギュラーが発生した」
それを口にすると、一方的にやられて来た時の事がフラッシュバックしてきて気分が悪くなるが、それでもなんとか続きを言う。
「もうこれはBランクの依頼じゃない。少なく見積もってもAランクの依頼だ。俺もこんな状態だし、ここからはもう無理しねえとやれねえような依頼な気がするし……もう、無理する理由もねえからさ」
色々な物を失った気はするけれど、それでも欲しい物は手に入ったから。
だから理由も無ければ意欲もない。
とりあえず早い所王都に戻って病院行きたい。
あれだけイレギュラーな事が起きたんだ。出るだろギルドから治療費。
そして俺の言葉を聞いてグレンが言う。
「……決まりだな。明日には馬車を出す。連中には俺が話付けとくよ」
「悪いな。途中で投げ出す結果になって」
神樹の森の調査はグレン個人の頼みみたいな物だけど、村の防衛に協力するのはたった一回きりの話ではなかったからさ。それを神樹の森で原因叩いて早期に終わらせようって話だった訳で。
「いいんだ。俺からすりゃ寧ろ投げ出してくれて良かった。さっき聞いた時にも思ったんだけどよ、まだ意欲があったらどうしようかって思ったんだ。ほんとさ……良かったよ、そう言ってくれて」
グレンは安堵したようにそう言う。
そんなグレンを見た後、俺は二人に問いかける。
「ちなみに俺勝手に決めちゃってる感あるけど、お前らもそれで良かったか? 正直初陣がすげえ最悪な結果で終わる感じになるんだけど」
「いいです。ボクもグレンさんと同じで、安心してるんです。いや……まあ、本当に。受けないと駄目だって言った奴が何言ってんだって話なんですけど……そうしてくれると助かります」
「私もっすね。正直もー幻滅しましたからね。先輩が良いならさっさと帰るべきっす」
「あ、それにほら、クルージさん酷い怪我ですし。ほんと早く帰って病院行かないと」
「一応応急処置はしましたけど私も素人っすからね本職に見てもらった方がいいっす」
「……いや、手際が完全に素人のソレじゃ無かったんだよなお前の」
「いやいや、素人っすよ素人」
グレンの言葉にリーナがドヤ顔を浮かべる。
……確かにこう、包帯の巻き方とか綺麗だよね。特にとんでもなく不器用なのを見た経験がある身からすれば。
「まあほんと、戻ってからもさ、コイツの事頼むわ」
そうグレンは二人に向けて言う。
「了解です、グレンさん」
「とりあえずその辺は任せといてください。まずは責任持って病院に叩き込むっす」
「なんか怪我人病院に連れて行く表現じゃねえよな? ほんと大丈夫? お前らに任せて」
とグレンは苦笑いを浮かべて言った後、グレンは改めて俺に言う。
「で、クルージ。結構話を戻すけどよ……これ、持ってってくれねえか?」
今回の一件の慰謝料の話を。
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