鬼の老爺、救いの法力


 雅々奈のほうに人手が割かれているとはいっても、地下牢に続く階段の入り口には、数人の見張りがついていた。澪丸と文彦は曲がり角から様子を伺うと、小さな声で相談を始める。


「(……どうする、兄ちゃん? あれだけの人数、なんとかできるか?)」

「(斬り伏せるだけなら容易たやすいが、できれば殺したくはない。なんとかして奴らの気を逸らして、後ろを向かせることができれば、首を打って気絶させることができるのだが……)」

「(分かった、待ってな!)」

「(おい――文彦!)」


 澪丸の言葉を聞くなり、鬼の少年は廊下を逆戻りし、曲がり角に姿を消す。


 澪丸が呆気にとられて固まっていると、男たちを挟んだ廊下の向こう、反対側の通路に、とつぜん小さな影が姿を現した。人の手の平にのるような大きさのそれは、鳴き声をあげながら、広い廊下を走り回る。


「んん? なんだぁ?」


 見張りをしていた男たちが、視界の端に動く影をとらえて、いっせいにそちらを向く。彼らは腰に下げた短刀の柄に手をかけたが、その影の正体がわかると、すぐに警戒を解き、拍子抜けしたようにぼやいた。


「けっ、ねずみかよ。驚かせやがって――――」


 次の瞬間、ごん、という複数の衝撃音が響いて、首の後ろを打ちつけられた男たちは、一斉に意識を失った。


 峰打ちを終えた澪丸が走り回る鼠のほうを眺めていると、その奥の通路から、嬉しそうな顔をした文彦が姿を現す。


「こんなこともあろうかと思って、屋根裏を進んでるときに、一匹だけ懐に仕込んでおいたんだ」

「なかなかの策士だな。案外、おまえには勇気よりも知略のほうがあるかもしれん」

「ええっ!? ――いやまぁ、そう言われて悪い気はしないけど……」


 文彦は、恥ずかしそうに顔を赤らめた。だが、すぐに首を横に振ると、いかめしい彫刻がなされた鉄の扉のほうに向き直り、力の入った声で告げる。


「この下が、地下牢だ。鍵はおそらく、ここに倒れてる誰かが持ってる。いくぞ――兄ちゃん」


 そう語る鬼の少年の瞳には、勇気に満ち溢れた、強い光が宿っていた。



 ところどころが腐り落ちた階段を降りると、その先には薄暗くじめじめした空気が漂う空間が広がっていた。


 まばらに置かれた燭台しょくだいの上の蝋燭ろうそくが、入り口からの風を受けて揺れる。


「……思っていたよりも、狭いのだな。この規模の人売り組織といえば、もっと広い牢を持っているものだと思っていたぞ」

「やつらの本来の『商売道具』である人間を閉じ込めるための牢は、また別にあって……こっちは、たまに捕まえてくる魔族を収容しておくために作られた場所らしい。だから、入り口の扉も、牢の格子も、鉄でできてるんだ」


 床や壁に染み込んだ魔族の血の臭いを感じながら、澪丸は文彦のあとに続いた。両脇に連なる牢の中には何もおらず、ただ虚ろな空間がぽっかりと口を開けている。


 早足で駆ける文彦は、いちばん奥の牢屋まで辿り着くと、その中を覗いて大きな声をあげた。



「――夜可郎やかろう爺さん! おれだ! 文彦だ! 助けに来た!」




 文彦が奥に向かって叫ぶと、そこからかすかに、しわがれた返事が飛んでくる。


 そして、澪丸もまた、その鬼が閉じこめられている牢の前に来て――その中の、あまりに凄惨な様子に、言葉を失った。


 四畳ほどの狭い牢の土壁に、長い白髪の老爺ろうやが倒れるようにしてもたれかかっている。その手足にはいたるところに痛々しいあざが見てとれ、その顔には生気が微塵も感じられない。床を見ると、彼の身体中の傷跡から流れ落ちた魔族の血液が、青い血だまりを作っていた。


 文彦の呼びかけにわずかに反応したところから、少なくとも息があることは分かるが……これではとても、牢の中から助け出すどころの話ではなかった。


「爺さん……夜可郎やかろう爺さん! くそっ、『抜多組』のやつら……爺さんが口を割らないからって、こんなことを……!」


 怒りに震え、歯ぎしりをする文彦の隣に立ち、澪丸は牢の錠前を調べた。格子と同じく鉄で作られてはいたが、その細い部分を断ち切れば、なんとか破壊できそうである。


 澪丸は「王水」を抜き、意識を集中させる。いくら細い部分を狙うとはいえ、刀で鉄を断ち切ろうとするなど、人に笑われてもおかしくはない所業であった。しかし、少年は天下最強の「鬼界天鞘流きかいてんしょうりゅう」の継承者であり……彼の持つ刀は、特殊な青い鉱物「羅摺ラズリ」によって打ち上げられた、伝説の宝刀である。


「シッ!」


 鋭い掛け声と共に、一閃。


 きん、という小気味よい音が響いて、その一部を断ち切られた錠前が床へと落下した。それを見た文彦は、驚きに目を開いたあと、我にかえったように走り出し、牢の扉を開けて中へと入る。


「夜可郎爺さん!」


 鬼の少年は、青い血だまりの中に倒れる老爺を抱き起こした。そして、数度の呼びかけのあと、白い髭に包まれた「夜可郎爺」の口元が開く。


「……どうして、戻って、きた」


 途切れ途切れではあったが、たしかにそれは、はっきりと意識ある者の言葉だった。これほど出血をしていてもまだ喋れるのは、彼が鬼であるからなのか、それともその精神力が尋常でないからなのか。


「爺さんを、助けるために決まってるだろ!? ……ほら、ここにいるのが、澪丸兄ちゃんだ! 兄ちゃんは、俺だけじゃなくて、茜姉ちゃんも助けてくれたんだぜ!」

「なんと……茜を……」


 物事のすべてを見通すような深く静かな目が、澪丸へと向けられる。


「ありがとう、ございます……少年。彼らを助けていただいたこと、なんと御礼を申し上げたらよいか……」

「なにを他人事のように言っている。いまから、俺はあなたも助けるのだぞ。――文彦。爺さんを抱えて、歩けるか?」

「もちろんだ!」


 澪丸の呼びかけに、鬼の少年は腕まくりをしたあと、血に濡れた老爺の体を背負い込む。

 ふたりの若者の行動に「夜可郎爺」は驚いたような表情を浮かべたが――そのあとすぐ力尽きたように、縮こまってしまった体を文彦へと預けた。


「よし、行くぞ。もたもたしていると、剛刹とかいうやつに感づかれて――――」

「――呼びましたかな?」


 その、瞬間。


 音もなく、気配もなく。見上げるほどの白袈裟の男が、澪丸の隣に立っていた。髪の毛ひとつない禿頭はげあたまが、蝋燭の光に照らされる。大男はぶくぶくと太った顔つきに柔和な笑みをはりつけながら、澪丸たちを見つめていた。


「――――ッ!?」


 心臓が飛び出そうになる感覚を抑えて、澪丸は刀を構える。


 またしても、接近に気づかなかった。まるで最初からそこにいたかのように、空気に溶け込んで事を見守っていたかのように、この男は何気なく姿を現したのだ。


 澪丸の隣に立つ文彦も、彼に背負われた夜可郎やかろう爺も、戦慄のあまり固まってしまっている。その様子を見て満足したかのように、剛刹はゆっくりと口を開いた。


「いやぁ……困りますね。うちの『商品』に手を出してもらっては。――いや、その鬼は、正確に言うと、売り物ではないのですが……まだ他の鬼の住処を教えてもらっていない以上、手放すわけにはいかないのですよ」


 こんな状況にあって、白袈裟の男は穏やかな口調を崩さなかった。


 「菩薩ぼさつの剛刹」。底知れぬその異様な立ち姿に、澪丸は息を飲んだ。


「……なぜ、気配を消したまま攻撃を仕掛けてこなかった? 昼間、初めて会ったときは、俺はただその場に居合わせただけだったが……文彦を逃がし、この爺さんを救おうとしている今の俺は、明らかにおまえにとって邪魔者のはずだぞ?」


 低い声で、澪丸は白袈裟の大男に向かって言葉を投げる。


 返されたのは、見た目に似合わぬ、甘ったるい声だった。


「いやいや、それは、ごもっともなのですが。青い刀使いの、少年……わたしはひとつ、あなたを『抜多組』に勧誘しようと思いましてね。こうして、お話しをしているのです」

「……なに?」


 突如として告げられた言葉に、澪丸は顔をしかめる。入り口からの風を受けて蝋燭の火が揺れ、大男の影が波打った。


「昼間にお会いしたときから感じていましたが、その眼光、その立ち姿、どれをとってもあなたは素晴らしい剣術使いのようだ。じっさい、この牢の前で倒れている部下たちは、あなたに一撃で昏倒こんとうさせられたようですし……その実力を買って、私はあなたにこう言いたい。私のもとで働いてみる気はないか、と」


 剛刹は、その分厚い肉に包まれた手を大げさに広げて、澪丸へと熱弁する。


「お給金は弾みます。望むのなら、広い屋敷と、使用人も進呈いたしましょう。――そのかわり、あなたにはこれから、私たちの組が新規で始める、『魔族狩り』の事業の柱になってもらいたい」

「……魔族狩り、だと」

「はい。すでにご存じかもしれませんが、私どもがこの二匹・・の鬼が住んでいた里を襲撃したのは、万病に効くという、鬼の角を採取するためです。私どもは今まで、人売り事業と並行して、人を幸せにする薬・・・・・・・・を製造してきましたが……ここいらで、より多くの人を救うため・・・・・・・・・・・、魔族由来の薬の製造にも手をつけることを決めたのです。――しかし、そこで壁になるのが、やはり、人手の問題で。駒として扱えるゴロツキは腐るほどいるのですが、魔族を相手にできる人間となると、その数は少ない。そんなときに出会ったのが、あなたというわけです。そう――あなたからは、魔族の血のにおいが漂っている」


 嘘でもなく、皮肉でもなく。この男は、純粋に澪丸の実力を買い、少年を勧誘しようとしていた。


「いま、表で暴れているお嬢さんも、実力的には申し分ないのですが……なにぶん、物事を判断する知性がなさそうだ。その点、あなたは分別がありそうに見える。雇い主としては、あなたのような人のほうが、ありがたいというわけです」

「……なるほどな」


 澪丸はひとつ息をついて、構えていた刀を下ろす。そうして、白袈裟の大男を見上げて、薄く笑ってみせた。


「これまでに数えきれないほどの魔族を殺し、そして今現在は無一文の俺にとって、そいつはあつらえ向きの求人というわけだ」

「――澪丸兄ちゃん!」


 老爺を背負ったままの文彦が、地下牢に響き渡るほどの大声を張り上げた。しかし、澪丸は鬼の少年に背中を向けて、にこやかな笑みを浮かべる剛刹のほうへと歩み寄る。


 そうして、刀を持っていない左手を、大男へと差し出した。


「……その誘い、乗った。これから、よろしく頼む」


 少年の快い返事に、剛刹のゆるみきった顔がさらにほころぶ。彼もまた、白袈裟の袖の下から、ごつごつした左手を差し出そうとして――



 その手の甲を突き刺すように、瑠璃色の刀が閃いた。


「……ほう?」


 次の瞬間、ギギギギギ! という、鍔迫つばぜり合いのような音が響いて、その切っ先が空中で止まる。


 刃を阻んでいるのは、大男の手の皮からほんの数寸すうすん離れたところに展開された、白く半透明な「壁」であった。それは質量を持った強固な防壁として、使い手の体を守る。


「どこが、お気に召さなかったのですかな? 私としては、できるかぎりの好条件を提示させてもらったつもりだったのですが……」


 剛刹は、柔和な笑みだけは崩さないまま、どこか不思議そうな声をあげる。彼としても、澪丸に刃を向けられるのは想定外であったらしい。――それはつまり、この「壁」が自動的に発動するものであることを示していて、澪丸はその厄介さに舌打ちをしながらも、毅然とした口調で大男へと言い放った。


「条件に、不満はなかったさ。魔族殺しでそこまでの待遇が得られるのなら、俺が断る理由はない」

「……ならば、いったい、なぜ」


 戸惑うような声をあげる剛刹、その手の甲に展開された白い防壁が、びき、びきと音をたてて砕けはじめる。広がった亀裂が、徐々に大きくなっていった。


「俺が、おまえを倒さなければならない理由は、ひとつ」


 宝刀を握る両手に確かな力を込めて、澪丸は最後にこう言い放つ。



「おまえが、茜の親を殺し……彼女を悲しませたからだ」



 ばきん! という、硝子がらすが割れるような破砕音が、地下牢に響いた。それと同時に、瑠璃色の刀の切っ先が、大男の分厚い手の肉を、いともたやすく貫通する。


「ぐ……おおおおっ!?」


 そこではじめて、「菩薩の剛刹」の笑みが消えた。白袈裟の大男は、自身の眼前まで迫った、赤い血で塗れた刀の先を、のけぞるようにして視界に入れる。


「魔族を食い物にしようとする、おまえの『商売』については、俺には何も口出しする権利はない。おまえが言うように、俺じしん、多くの魔族を殺してきたからな。……だが、あいつの里を滅ぼし、あいつにあんな目・・・・をさせた罪は、ここであがなってもらおう」


 男の手の甲から刀を引き抜き、血を払ったあと、澪丸は中段の構えをとった。


 剛刹は痛みの中、またしても気味の悪い柔和な笑みを取り戻し、剣術使いの少年を睨む。


「……なるほど。そうとう、あの鬼の娘に入れこんでいるようですね。人間でありながら、鬼にたぶらかされ、同じ人間に刃を向ける……。まったくもって、救いがたい人だ」


 剛刹が口になにかを唱えると、左手の出血が止まり、またたく間に傷が塞がっていく。傷口を覆う白い光から察するに、あれもまた「法力」によるわざなのであろう。


「ですが……救えない人・・・・・までも救うのが、私の理念でしてね。あなたもまた、私の法力ちからによって、救済してあげましょう。鬼の姦計かんけいを打ち破り、あなたをまっとうな人間・・・・・・・にするために」


 そうして、白袈裟の大男は、右手を疾風のように振り、空中に手刀を放った。その指先から、白い光をまとった半月状の「刃」が生まれ、まっすぐに飛翔しながら澪丸に襲いかかる。


 その一撃を刀で受け止めた瞬間、ギン! という甲高い音が生まれた。「法力の刃」は、確かな質量をもって、なおも澪丸の体を両断しようと圧を強める。ギリ、ギリと鍔迫り合いを続けながら、澪丸は剛刹に向かって叫んだ。


「なにが――救済だ! おまえは、宗派を破門されたのだろう!? そのうえ、こんな悪事にまで手を染めて……そのどこに、救いなどある!?」

「ありますとも! より多くの『人間』を、この世における苦しみから解放する……それが、私が変わらず持ち続ける、絶対不変の理念なのです!」


 続けて、二撃、三撃。大男が放つ手刀から「法力の刃」が生まれ、重なるようにして澪丸の刀へと吸い込まれていった。


 少年は鍔迫り合いの末に、それらを下へと弾き飛ばす。

 その耳に、男の高い声が響いた。


「私はかつて、毘言天門宗ひごんてんもんしゅうの僧侶でした! 戒律を守り、毎日の修行に耐え……数年の後に、他の者とは比べ物にならないほど強い法力を手に入れた。そして、その力で魔族に苦しめられる人々を救おうと、人里に下りる許可を大僧正だいそうじょううたのです! ……ですが、宗派を束ねる彼は、首を縦には振らなかった!『おまえはまだ未熟者だから、むやみに法力を使ってはいけない』と言って!」


 絶え間なく手刀を振りながら、剛刹は柔和な笑みから一転、その顔に修羅のような凄みをにじませて、叫ぶ。薄暗い地下牢を、まばゆい法力の光が照らした。


「――人を救わなくて、なにが法力だ……なにが信仰だ、と! 私は制止する大僧正を殺し、寺のあった山を下りました! 師を裏切り、宗派を破門されてでも、私は『人間』を救うため、旅に出たのです!」


 絶え間なく「法力の刃」が降りそそぐ中で、さばききれなかったものが、澪丸の腕を、足を切り裂いていく。少年の体から、勢いよく鮮血が噴き出した。


 剛刹はなおも、悲痛な声で嘆きを発する。


「……ですが、旅の果てに私は思い知ることになります! 『人間』を救うために、私が真に立ち向かうべきものは、魔族などではないということを!」「たとえ法力によって魔族の手から人間を救ったとしても……彼らの貧困が、生への苦しみがなくなるわけではない!」「力だけでは解決できない現状に、私は悩み、苦しみました。 ――そして出した答えが、『抜多組』というわけです!!」


 白袈裟の大男の動きが、いちだんと速くなる。もはや常人の目には捉えられないほどの速度で、無数の白い半月が澪丸を襲った。


「本来は間引きころされるはずだった貧しい家の子供を買い取ることで、その命を救い! 金持ちに売ことによって、その子の親……ひいては家を豊かにする!」「生への苦しみを感じる若者に、束の間の『安らぎ』を与えるために、快楽作用の強い薬を与える!」「町を荒らすゴロツキに職を与えることによって、彼らの居場所を作る!」「魔族を殺し、その体からとれる成分を使って薬を作り……病に悩んでいる人間を救う!」「私がやってきた……そして、これからやろうとする、その全てが! 力や信仰だけでは決して行うことのできない、本物の『救済』というものなのですよ!」


 ギン! ギン! ギン!


 凄まじい気迫で繰り出される高速の刃に、澪丸の反応が限界を迎えはじめた。五感のすべてを全力で駆動させても、襲い来る刃のすべてには反応できない。やがて少年の体のいたるところに刃がぶつかり、先ほどの数倍の量の血が、澪丸の全身から噴き出す。


(くっ……!)


 この男が掲げる「正義」がどれだけ歪んだものであろうとも、その意志と実力は本物であった。数多くの魔族を葬ってきた澪丸をもってしても、剛刹の法力の前では、まともに反撃の機会をうかがうこともできない。


 やがて――白袈裟の大男が、ひときわ大きく、その巨木の幹のような腕を垂直に振るった。


 そこから生み出されるのは、それまでで最も大きく、最も強い輝きを放つ、満月のような「刃」。それは空気のみならず、空間を両断するほどの凄まじい回転量をもって、男の体から解き放たれる。


(まずい……ッ!?)


 それまでに飛んできていた半月を撃ち落とすのに精一杯で、少年は襲い来るその脅威に対処することができない。一秒と経たぬうちに、自身の体が縦に両断される「未来」が、澪丸の脳裏に浮かんだ。


 時が、止まる。走馬灯すら、流れる暇はなかった。


 やがて、死の満月が放つ、眩いばかりの光が、澪丸の視界を覆いつくして――――




「――おおおおッ!!」


 横合いから飛んできた幼い少年の声が、その影が、澪丸を守るように前へと飛び出した。


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