28話 ウィステリア

僕は杏菜あんなと別れた帰り道にフラッと見せる杏菜 あんなの表情。言動について未だに考えていた。勿論。本は返したよ。もう暗いし杏菜あんなさんは早めに帰らせとくことを第一に考えて僕は切り上げようと提案した。


「きっと、何かあるんだろうけど…うーむ。僕の良心が気になっている…」


そういえば、僕の家の電話番号教えたけど僕は杏菜あんなの知らない気がする。


「家に帰って、誰かに聞くしかないか〜」


そう言って僕も図書館から出た。


岐阜駅から瑞穂まで軽ーく移動して、適当に5分くらい歩いてたら家に着く。15分電車も合わせて15分。勿論、約15分だ。


玄関を開けて中に入ると妹の莉奈りなの靴があって帰ってきてるとすぐにわかった。


「ただいま〜莉奈りな部活お疲れ。今日は早い切り上げだったんだね」


「おかえり。今日はね。それと遅かったね。何やってたの〜?」


「勉強教えてた」


間違ってはいない。うん。


「ふーん…。はい。ホットココアだよ。買っといたから出世払いでね」


「いいよ。出世しないから」


「うわ、クソ人間だ…」


誰がクソだよ。出世なんて紛らわしい!出世しなくも金は稼げるんだぞ?…出世できるならしたいなぁ…。あ、ホットココア美味しい…


「あ、テーブルの上にあるスマホをライン開いて取って」


「あいよ」


ツートンカラーのソファに座ってる莉奈りなはテーブルに手を伸ばしてスマホを手に取った。そのスマホを僕に向けてポイとぶん投げた。おい。


「あぶなっ!おい!投げるな!一応高いんだぞ!?」


「はいはい」


こいつ。スマホの重要性と利便性それに値段をバカにしてる。

ま、それはいいとして。


「うーん…杏菜あんなのラインを持ってそうな奴って俺のラインの友達にいたっけ?」


杏菜あんな?誰ですか?お兄さんや」


「お兄さんの恋人です。かっこ、お兄さんが自称している恋人。かっことじ」


「馬鹿じゃないの?」


ケラケラと笑いながら罵倒された!嬉しい!心の中、客観的に見たら僕変態じゃん。


「それはそうと…うーん………あ!ふつうに持ってそうなやつなんているじゃん。さーてと早速パシってやろう!」


宇内弓月うないゆづき。のアイコンをタップして電話を掛ける。プルルルルと着信音が鳴りおわる前に応答された。ん?誰?まぁ、わかりやすく言うと部活勧誘の女で説明は終わり。


『はいはーい。何用ですかな?柚和ゆわよ」


『ムカつくからそれやめて。一生のお願い」


『はーい。要件はなんだ!?急用か!?デートか!?部活申請か!?それとも別件かな?あ、私も含めていいよ♡』


あざとい言葉は華麗にスルー。これぞ男です。


『要件はその他。杏菜あんなのラインをこっちに紹介してくれないか?』


杏菜あんなちゃん?理由は聞かないけど私実は杏菜あんなちゃんのライン持ってないです!』


なぬ!?事は重大かもしれぬ…と言うわけでもなく。僕は弓月ゆづきに次はこう聞いた。


『家は?知ってる?』


『どゆこと?家の場所?家の電話番号?』


『家の電話番号。知らないならいいさ。今度僕から聞くから』


弓月ゆづきでも知らないのか。コイツが持ってないラインって戸谷塚とやづか莉奈 りなぐらいと思っていたのに以外と身近にいたことに驚いてるのは置いておいて、弓月ゆづきが知らないと言ったので要件は伝えたとばかりにお礼を言って電話を切ろうとしたら


『でも家は知ってるよ〜。遊びに行ったことあるもん!何か用事でもあるの?』


『ふっ、ちょっと家まで押し掛けてデートの約束をっていうのは冗談で、今日渡した電話番号実は間違ってたから正しい電話番号を伝えたいだけ』


『あっそ。なら今から行く?久しぶりに私も柚和ゆわと話したいし。ふ・た・り・で』


『あーわかった俺の家の前で。ブチ』


待ち合わせを僕の家の前にした。あいつならすぐに来るだろうと思ったら案の定!ピンポン!と鳴った。早すぎ。


「…お兄さんや。あんた女誑しやん」


「へいへい」


妹の皮肉に適当に相槌を打って玄関まで行く。

そして鍵を開け、扉を開けた先にいたのは!はい。勿論弓月ゆづきでした。


「お前。もしかして電話しながら来てた?」


「ありゃ。バレちゃった」


ダメだコイツ。病院に連れて行ってやりたいがもう手遅れだな。ごめんな弓月。来世は鶏にでもなるんだぞ。


「はーい。行くぞ〜。そうえば貸し一つ作るハメになったけどこれでチャラね」


「えー!部活入ろうよ。ん?それと今のこの現状もしやデートか!?これが俗に言う放課後デートか!?」


莉奈りな。帰りにアイス買ってくるよ。何食いたい?」


「ハーゲンダッツのイチゴ〜」


「あ、柚和。私はキャラメルね」


「俺はバニラ。一応言っておこう。気づいてるからね?一番高いハーゲンダッツをわざと!選んでるのは!まあ、いいや。じゃあ莉奈行ってくる」


「はいよー。行ってらっしゃい」


手を振る可愛い妹を背後にして、僕は戦場に赴くのだった。っていう展開も置いておいて!さっきからほんとに鬱陶しいですよね。弓月ゆづきさん。


「サザンの涙のキッスなんて歌って楽しいか!?」


「いい歌じゃん。ほら!涙のキッス!もう一度〜誰よりも愛してる♪」


「知らん!」


以外と上手い弓月ゆづきを置いておいて、最後のキッス!もう一度だけでも♪なんて僕も歌ってるのだから馬鹿なんだろう。因みに僕は歌は下手。


「ところで、杏菜あんなちゃんとどういう接点なの〜?」


「だから!恋人以上!恋人未満だよ!」


ん?自分で言って気づいたけどこれって普通って関係じゃ…


「普通ってこと?」


こういう時こそ馬鹿も仕事しろ!と思う。


「まぁ、本当のこと言うと?」


「勉強を教えて欲しいって赤城あかぎから聞いたんだ。で、気になって直接聞いたら以外と真面目な理由で、それに基本拒否しないポリシーなので受諾したという訳」


「なるほどね。柚和ゆわも頑張ってるね〜部活やらないかわりに人助けだもんね。あんたはエライ!エライよ」


「僕は善良で誠実で優しいという言葉で構成された人間だからね」


「虚言癖ですか?悲しい…柚和ゆわいつのまにか現実見れなくなっちゃったんだね」


「お前…ぶっ飛ばすよ?」


「そしたら私は柚和ゆわを蹴っ飛ばす!」


あー!そうだ?コイツ実は強いんだった。前蹴りなんて食らったらお陀仏だ。


「あははは。楽しい。うん。で、柚和ゆわ。喉乾いた」


「うるせぇ」


こんなウィステリアな雰囲気の会話が自販機まで続いた。


これが弓月ゆづきと感じて、見て、思う色なんだ。


ウィステリア。藤色で藤色と言えば藤の花だ。そして藤の花の花言葉は。


優しさ、歓迎、決して離れない、恋に酔うだ。


うん。似合わんね。

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