27話 私の変化 杏菜
「おーい、あんな」なんて言われて手に渡されたメモ用紙…そう電話番号を渡されて私は「どうして?」と呟いた。
一駅なのですぐに瑞穂に着いた電車から降りてホームから出る。
夕暮れの空が私を歓迎していないように見える。学校から徒歩で20分くらいの距離にある私の家は駅からだと10分くらいで着く。走れば5分で着いてしまう距離だ。
そんな家に向かう足の歩調は同じ体重の人が乗ってるシーソーのように重かった。
力を入れないとどちらかに傾かない。そんな歩調。何が原因かなんて理解してるしわかってる。
けど、わかってても怖い、辛いし、泣き出したい。
今日は何をされるんだろう…また怒られるのだろうか…痛い思いはもう怖いなどとプロの演奏家がピアノの鍵盤を弾くように次々と思い浮かんでくる。
そんな思い足取りでもいつのまにか家についていた。
普通の家ならドアノブを握って捻るか、引っ張るか…はたまた横に開けるか…するだけで平穏な我が家にご帰宅のはずなのに…私は今すぐにでも逃げ出したかった。
「ただいま帰りました」
「おかえり。4:30からすぐにやるよ。何をやるかはわかってるね?」
「ぅ…はい。すぐにやります」
「よし。じゃあやろうか。君の両親は仕事だしね」
私が家に入った途端話しかけてきたのは家庭教師の
「ほら早くあがりなよ。ここは君の家だよ?それに勉強しないと成績落ちるよ?」
「はい。わかりました」
リビングど同室になってる居間で勉強をする。だけど当然必ず一回は言ってくる。
「君の部屋でやろうよ。ほら、早く」
「ごめんなさい。こっちの方が色々と近くて捗るので部屋じゃなくて大丈夫です」
「そんなこと言わずにさぁ。まぁ、いいや。はいここ。適当に解いておいて」
ほら言ってきた上にこれだ。解いておけ?ふざけるなよ?家庭教師の分際で生徒を放置してお前仕事してないじゃん。何で金貰ってるの?ホント意味わかんない。
「そこ間違ってる。そこは解けるだろ?学校でやった範囲だろ」
もうすぐ変貌するな。コイツの変わりようは知らない人に会った犬並みに早い。
「習いましたが、わからないので…その教えてほしいです」
「習ったんだから解けるだろって言ってんじゃん。言ってる意味わからないのか?お前さぁ、ちゃんとやれよ。やる気あんのかよ!とっととやれよ!」
バンっと机を引っ叩いた。動画に収めでもして流したらすぐにバイバイできるのだけどそんな日常用品は親が所持している。而も、両親は娘には何をやってもいいと言ってるのだ。どうしようもない。
「せめて解き方だけでも教えて…」
「うるせぇよ!とっととやれ!少し勉強教えならお前で遊ぶんだよ!」
え?今なんて?私で遊ぶ?どうやって?ぶちのめすよ?なんて言えたらいいのだけど非力な私には無理だ。すぐに襲ってこないのは少しでも両親にやった証拠を見せないといけないからやってるだけで1ページでもやると私はビッチに変身。
いやだなぁ…これでも好きな人ができたら一途に愛せるつもりなのに…でも、色んな人に勉強を教えてと言っていた時は体を求められるのも何回もあったからあながち間違いでもないのかも。
「あーも!イライラするな!ちゃんとやれ!」
バンっと私の頰に痛みが走った。今度は何で引っ叩いたの?あー手で叩いたのね。
「すみません。でも、わからなくて。教えて貰えませんか?」
あー痛いな〜でもこんなのは慣れちゃえば普通だよね。律儀にお願いしてんのにまともに教えてくれないし…。こんなのできるわけないじゃん。何?これ?不定積分って何?こんなの習ってないけど?
「ムカつくなぁ。なんで習ってるのにできないんだよ。できるだろ?」
「えっと、習ってないので…」
バチン!教科書が飛んできた。痛い…。あれ?なんか涙が出てきた。思い出し泣きだよね。なんの記憶の思い出し泣きだろ…。
「習ってないのでって理由にならないんだよ。やります以外にないの」
「やります!じゃあ質問ですがここはどうやればいいんですか?」
バン。今度は引っ叩いた。確か…
だから…
「二度もぶったな?親父にもぶたれたことないのにー!」
と言ってやった。なんでだろう。初めて反抗した気分は恐怖よりも楽しさだった。
急にお腹に痛みが走った。蹴っ飛ばされたらしい。うー痛いなぁ…。なんか視界が濡れてる気がする。あくびなんてしてないのに。
「ふざけんな!ちゃんとやれ!もう一回蹴っ飛ばしてやろうか?」
「でも、やり方がわからないのではやろうにもできません!だから、教えてと」
「!はい。やろうか。教えてやるから」
痛いよ…痛い。殴ってきた。私何かした?コイツと前世であってたっけ?悪いことしてたつもりないんだけどなぁ…。而もさっきから雨漏りが止まらないし。
「f(x)の形にして求める。この場合はインテグラルとタンジェントも使え。以上の説明でわかるな?教えたからな?」
「あの…インテグラルとタンジェントってなんですか?」
「自分で調べろよ。そんぐらいできるだろ?」
いや…調べろって。できるわけないじゃん。そもそも何?この文章に書いてある積分するって。意味わからないんだけど?は?雨漏り止まらないな〜。
「もういいや。勉強やらなくて。お前犯すわ。そして帰る。娘さんは成績がすごく伸びてるのでもう家庭教師やめますと言えばヤリ逃げできるしよ」
そう言って、お腹を蹴っ飛ばして来た。
「ケホッケホッ。うぅ…」
ヤバイ。保てない。壊れそう…。
痛い痛い…。なんでコイツ家庭教師になってるの?
どうせ私のクソみたいな父親の弟とかなんかでしょ。
意味わからない。痛いよ…。まだ蹴ってくる。
さっきから雨漏り激しくなってるし。もう前見えないよ。
「おらよ。うちの兄貴がよろしくと言ってきた時はあれだけど何してもいいって言われてすぐにオッケーしたよ。だから勿論、そこには性行為も含まれてるんだぜ?兄貴は構わないの一言だったよ。可哀想だなお前。ま、俺としては万々歳。女子中学生とできるなんて最高だからな」
「お父さんと兄弟なんで、すか?」
「そうだよ。気づいてなかったの?バカだな。ま、いいや。おらよ」
バンとまた蹴ってくる。背中に当たって転んでしまった。もう前が見えないや。
「涙たくさん流して可愛いな。ま、初めてありがとうございますとだけ言っとく」
こんなのいつもあるけど今日はまた激しいなぁ…。
而も涙?え?涙?泣いてるの?私。何に感動したんだろう…。雨漏りじゃなくて良かった。家が水浸しとかほんとに勘弁。バン。また蹴ってきた。もう痛いよ。うっ…。痛いよ。痛い。きっとギックリ腰…だよね。うん。だからもう動けないや。
もう無理だよ。
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