26話 活用しよう!
「よし、続いて動詞の活用ですね〜。それじゃ頑張っていきましょー。おー!」
一人で勝手に話して終わる。勿論、杏菜はポカン?としている。いや、「おー」とだけ反応してくたけど。
「動詞の活用をやるにあたってまず動詞とは?ってなるんだけど、それはさっきやりました!さぁ!覚えてますか?」
図書館なので杏菜さんに聞こえる程度のボリュームで聞いた。答えは動作や状態を表す言葉だけど忘れてなければ答えられる筈。
「動作や変化を表す言葉でーす」
「はい、合ってます。…You got it!」
「ねぇ、今更だけどYou got itって正解って意味でいいの?」
「まぁ、そう捉えていいよ。本当はその通りって意味だけどね」
多少の言葉の違いは仕方ない。その通りも正解もある意味、意味は一緒だ。
「で、この動詞の活用には5種類あるわけですよ。流石にまだ習ってない筈だから僕が今から挙げるから聞いててよ」
「わかった〜」
伸び伸びとした「わかった」ですね。
「まず、五段活用、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用、サ行変格活用とこの五つが動詞の活用形。取り敢えずオーケー?」
「オーケー」
「おし、んじゃまず五段活用は五十音図で、ある行のアイウエオの五つの段にわたって変化する活用のこと。上一段がイ段。んでもって下一段活用がエ段」
「え?どうゆうこと?もう最初からわからない」
「オーケーオーケー。五段活用を知るためはまず一つ。これを復唱しよう!せーのナイ、マス、マル、トキ、ば、びっくり、うー。これ全部語尾にくるやつだから」
「ないますまるときばびっくりうーでいいの?」
「イェス。それ復唱」
「ないますまるときばびっくりうー」
なんか、側からみたら頭可笑しい子だよね。勿論、心の中に仕舞っておく。
「そして、なんかさっきもやったと思うけど「やる」を基本形にしてやらない、やります、やる。やるとき、やれば、やれ!やろうってなるんだよ。そして、うーん口頭じゃこれは伝えづらいからルーズリーフ貸して」
そう言うと、スッとルーズリーフの紙一枚を渡してきてシャーペンを持った僕は動詞の活用表を書き始めた。
や''ら''ない、や''り''ます、や''る''。や''る''とき、や''れ''ば、や''ろ''う。この''の間の文字を並べたら、らりるれろ。となる。そして全部の文字の母音は必ずあいうえお、になる。だから、らを伸ばすとら〜ぁってなるわけだ。り〜ぃ。この調子でやっていくと、らりるれろを全部伸ばしたら、あいうえおとなるわけ。
五段活用=あいうえおの音。
紙ににでかくそう書いたら杏菜が「おぉ!すごいすごい」なんて言ってたけど理解できたようでこちらとしてはなにより。
「ん?でもそしたら五段活用と上一段活用って混じらない?」
ようやく僕は杏菜が何をわからなかったのか理解できた。これは仕方ない。
簡単にまた紙の余白にさらさら〜と書いた。
動詞に「ない」を付ける。そしてそのすぐ上の語尾で見分ける。と書く。
書「か」ない→ア段→五段活用
起「き」ない→イ段→上一段活用
読「め」ない→エ段→下一段活用
「」内のそれぞれを伸ばすときちんとその段になる。かを伸ばすとアになるよね。
「これでわかった?」
「…すご」
「あ、おい。シー」
慌てて口を抑えて、静かにしろと促す。一応ここは図書館なんだ。大声はやめい。
「ごめん。それとすごくわかりやすい。「やらない」は五段活用になるってことで「できない」の場合だと上一段活用ってことだよね?すごい、すごい!勉強してるって感じがする!」
ポワンポワンと覚えていくことが嬉しいのかめっちゃ肘を曲げて腕を上下に上げ下げして「よし、よし」と言っている。その仕草を見るだけで助けになってることが実感できて僕は嬉しくなった。
まぁ、まだ終わりじゃないけどね。
「さーて。次はカ変、サ変やるぞ〜」
「了解であります」
サ変、カ変はどちらも特殊な活用。テストなんかだと省くためにサ変、カ変って書いてもバツにはされなかったはず。
「カ変が、「来る」だけの活用で、サ変が「〜する」が付いてできた語だけの活用なんだけどどちらも特殊なんだよね。「来る」っていうのと「する」っていうのを活用したら「こない」「きます」「くる」「くるとき」「くれば」「こい!」「こよう」で全部カ行だけどバラバラだよね?これが変則的だからカ行変格なんて言われてるんだよ。サ変も同じ」
「えっとえっと、「ない」を付けた時に一文字?しかな言われ動詞はなんか…なんだろう区別がない気がする…」
おー!拍手。その通り。一音しかないと、語幹と活用語尾に区別がないんです。
「合ってるよ。語幹と活用語尾に区別はないんだ。「みない」だったり「こない」だったりとかね。まぁ、こんなのテストにはでないけど。取り敢えず、これで動詞の活用は終わった〜♪」
はーーー疲れた〜と蹴伸びをする僕を見て杏菜も手を組んで上にぐーと伸ばしていた。今日はこの辺で切り上げかな?もう3時過ぎだしね。
「さて、と。今日はお開きだ。僕も家に帰らんと。おつかれおつかれ〜」
「ほぇ?あ、もうこんな時間だったんだ。軽く2時間ぐらい勉強してたんだね。初めてもっと時間があればって思えたよ。一人じゃ捗らないから…」
お開きと言った直後の杏菜さんの目が一瞬落胆?いや、名残惜しい感じで俯いていたけどすぐにニコニコ笑った。ダチュラかなんかだと一瞬勘違いしてしまった。
「んー。なら僕の教科書持って行きなよ。杏菜さんの!よりはいい教科書だから」
「別に、教科書は使わないからいいかな」
まぁ、僕も使わないけど。
「そう?なら別に構わないけど。何かあったら言えよ〜。今は杏菜さんのお手伝い期間だからね。勉強に限らず相談よろ。ちなみに、授業料は出世払いな」
出世したら払えということにしておいた。まぁ、そもそも要求するつもりもないし出世しなけりゃ払う必要ないからね〜(笑)
「……うん。岐阜駅まで柚和君は戻るの?私も駅だけどね」
「いや、流石に徒歩で瑞穂はだるい。できないことはないけどやりたくない」
やってみれば分かる。隣町だからって距離をなめるなよ?意外とあるんだからね?
「おし。机に忘れ物はありません。杏菜さんはもう先帰っててもいいよ。お、僕は本を返してから帰るよ」
危うく、一人称が変わるところだった。学校のやつらと相対する時はこっちの性格は露見させちゃ少々不味い。僕は自重した。
「ん。わかった」
まだダチュラみたいな顔したよ。この人。仕方ないと割り切り、捨てられても構わない覚悟でリング式タイプのB7サイズのメモ帳の紙にスラスラと急いで書いてビリっと切った。
「おーい。あんな、ちょっと待って」
さん付けから呼び捨てにして反応呼びやすくして、僕は小走りで杏菜の元に行って下げてある手を掴んで手のひらにポンっと破いたメモ用紙を置いた」
「え?えっと、これは?」
「俺の家の電話番号。何かあったらここに電話かけるか履歴をつけてもらえれば気づくから。一応、折り返しはかけとく。まぁ、捨ててもらって構わないよ。うん」
一度言葉を区切り、僕は別れを告げた。
「また、明日。杏菜さん。気をつけて帰るのだよ」
お気楽様様。僕も本を返すためにその場を離れた。「…う…て?」と呟いたのに僕は全く気づかなかった。
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