7話 4月10日 アザレア

「はぁ…」


朝っから溜息を吐く僕。2時間目が終わった頃だけどね。

昨日は、入学式の片付けが終わったら即刻帰って寝てしまった。


「次は、体育か〜。ちょっと休もう」


教室でイスに寄りかかってる僕はそんな事を言った。

体育は休まないよ?この休み時間中に休むって意味だからね。


「はぁ…」


何故、こんなに溜息を吐いて幸せを逃しているかと言うと…ただ単に学校がだるいから。だらけていたらチャイムが鳴って「もう少し、長ければいいのに」と呟いて僕は教室を後にした。


体育は。合同で1組2組と一緒にやるのだー。他クラスにも仲良いやつはいるけどそれでもあまり嬉しく無いルールだと思う。


「ラジオ体操第2のテストをしまーす」


女性の体育の先生が大きい声で言った。

皆んながそれに続いて「はーい」と言ったのも聞こえた。


テストは難なく終えて、残った時間はドッチボール。

僕?僕は即当てられて外野行きさ。女子のプレイを見てたことは内緒だよ?


4時間目ともなれば、お腹がすいてくる時間帯。給食の献立を覗いてなかったから今日は何が出るかまだ僕は知らない。けど「今日、カレーだってよ」と戸谷塚とやづかの糞野郎が行ってきたので知ってしまった。


4時間目の数学をきっちり乗り越え、きちんと献立を見た。


「マジでカレーかよ」


思わずそう行ってしまった。

他は、アセロラゼリーとシーザーサラダ。ワカメの味噌汁と書いてある。

入ってきた一年生がいるからやっぱし初っ端はカレーなのを忘れていた僕だった。


手を洗い終えた生徒に廊下で先生が「早く準備しろ!ふざけてないで行け!」なんて騒いでるけど皆んな華麗にスルーして喋りながら教室に戻ってる(笑)ドンマイ


お腹が痛い僕はトイレではなく、保健室に。

その時先生にきっちり「早く教室はいれ」と言われたけど僕も華麗にスルー。


コンコン「失礼します。えっと先生いますか?薬取りに来たんですが」


「あ、柚和くん。いらっしゃっい、いま出すから待っててね」


別に食いもん食いに来たわけじゃないんだけど(苦笑)


「はい、今日の分」

「先生、いつも思うんですけどなぜ僕に薬の所有権がないんですか?」


「うーん…無くされちゃいけない薬だから?」


「それ、言外に僕には管理能力がないって言ってるようなもんですよ」


「あらそう?でも柚和くんの薬は特殊だから、他の人が飲むとどうなることやら」


「別に、覚醒剤じゃないですし取締法施行規則においても触れてないんですし僕が持ってても問題ないと思うんですけど、そうですか、先生は僕を信用してないんですね…うっ」


「そうね、今日はカレーらしいから食べておいで。またね〜」


「チッ、また流暢に流したよ…はい、分かりました」


教室に戻った僕は、ある女子から「給食準備中サボってどこいってるの?」なんて言われるから僕が管理するって言ってるんだ。


あらぬ、嫌疑をかけられ給食は今日も苦い味だった。

美味しかったけどね。



♦︎アザレア



「ふんふんふーん♪」


放課後僕は、何故か…サッカー部の顧問の手伝いをしていた。

それが終わったから、荷物を取りに教室に行こうとしたら鼻歌歌いながら何かしている女子がいて現在教室に入れないでいた。


「ふん♪ふん♪ふふん♪ふん♪ふん♪ふふん」


ファミマ?

鼻息荒いぐらいにしか聞こえなけどまぁ鼻歌といえば鼻歌にはなっている。


「一度出直そうかな…」


このような状況で取るべき行動は…


「トン。トン。トン。トン。」


一度出直す!そしてわざと聞こえるように足音立てながら教室に入る事だ!

で、教室に入ったら鼻歌女はいなかった…は?


「もういいや。荷物持って帰ろ」


鞄を自分のか、確認して僕は教室を出た。

廊下を突き抜けた辺りで、渡り廊下の陰に隠れていた女の子が、教室に入っていく姿を、僕は見逃さなかった。



家までの帰路を歩いていると同時に僕はこんなことを考えていた。


(夕焼けってこんな真っ白だったけ?)


今まで、夕焼けはオレンジ色で境界線を示すかのような眩しさがあったのに。

今は何故か、真っ白だった。夕焼けは太陽が沈む


地平線を照らすものも、夕焼け雲もない。でも不思議と違和感もない。僕、ついに頭いってしまったのか…


夕日は静かに消えていく。今日あったことを忘れさせるように。

そして、段々と真っ白からアザレアに変わっていく空を僕はただ何も言わずに見つめていた。


「やっぱり明日、頭診てもらおう!」


夕日の反対側には、薄ぼんやりと月が昇り始めているのがわかった。




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