3話 4月5日 春休み最終日
♦︎お出掛け 準備
「いよいよ春休みも終わりかぁ…早かったなぁ」
リビングのテーブルに頬を張り付けてそんなことをぼやく。
「私は入学式までが休み♪」
「ふん!狡いとは言わないが僕にだって羨む気持ちはあるんだぞ!」
結局、春休みこれと言って何もしなかった。これこそが愚民の骨頂!
だけど、せめて何処かしら出かけたかったとは思う。
「ショボンみたいな顔してどうしたの?」
「聞くな、妹よ。兄すけは今から東京湾に浮かんでるゴミを拾いに行ってくるのだから。いわゆる、ボランティアだ」
「そんなの、絶対に五分も続かない。だから今日、暇だし出かけようよ〜」
「それマジ!?うん。行くわ。いこうか」
妹。マジで感謝。これで引きこもりの言い訳が立つ!
「で、どこに出かける?」
「どこでもいいぞ〜」
出掛けられればどこに行ったっていいかな。だって引きこもりの言い訳!だし。
休みの日は遊ばないとね。
「じゃあさ!お寿司屋さんと本屋さんに行こうよ。理由は新巻を早めに押さえておきたいから。OK?」
「了解♪それにお寿司は久しぶりに食べるしマジでありだな…」
現在、9:30だから11:30くらいに寿司屋に行けばちょうどいいはず。本屋は、寿司屋の後で行くから帰りは午後になるな。
「それじゃ11:30くらいに家を出るよ。それでいいな?」
「いいよ!んじゃ準備してくる!」
おおっ、気が早いですね〜まぁいいか。僕にとっては最終日だし。
莉奈は家族の僕と春休み初めてのお出かけだし。まぁでも今から準備は早いかなぁなんて思う僕だった。
「取り敢えず、僕は学校の準備をするか」
と、僕も自分の部屋にもどった。
♦︎お出掛け 寿司屋
11:00になったから準備を始めた僕は持っていくものをワンショルダーバッグに詰めていた。
「財布と、タオルと、携帯と。僕はこんだけで10分かな?あいつがどんだけなにを持ってくかは知らないけど…」
そして、軽く洋服タンスからカートソーで黒の無地のTシャツと、またまた黒色のトップスでレギュラーストレートのジーンズを手にとりすぐに着替える。それとダメージジーンズってやじゃない?
アウター(上着などを指す)に灰色の生地が薄い上着を腕にかけ、荷物を持ってリビングに行く。
我が妹様はまだ準備をしているから今のうちに僕が部屋の片付けをしようと5分で片付けを終えソファに寝転がる。
「はぁ〜これで出かければ引きこもりにはならないはず!」
「良かったね〜」
うへ!?と驚いて顔をあげたら莉奈の顔と衝突!ダメージ10!。痛い。
「ちょ、痛いよ、なにやってるの」
莉奈が僕の事を上目遣いで睨んでくる。睨まれてる感じしないなぁ〜かわええ。
セミロングくらいの長さの髪が肩から降ろされていて、後ろの髪の毛はアップで縛られている。黒色の目はハイライトが入っていて少し上目遣い気味。鼻の形もよく
「柚和は顔悪くはないんだからもっと着飾っても…」
「これ以上のお洒落を求める妹が僕は…怖いよ。でも莉奈の服もこれまた凄いね」
ニットの生地で赤色のブラウスで、その上にカーディガンを羽織っている状態で下は、ハイウエストスカートで腰あたりにミニショルダーバッグがかかっている。
今の小学六年生ってこんなオシャレなの?
「そう?ありがと…あ!そろそろ、家でないと席が埋まっちゃうよ!」
「え?あ、ああ!ヤバ。急ぐぞ!えとえと鍵、鍵」
「ここだよ!おし!窓も閉めた!食器も片付けた。コンセントも抜いた。電気系統ものの電源は落とした。よーし行こお兄ちゃん」
襟を掴まれて、玄関までひきづられる。酷いなぁ。自分で歩けるわ。
鍵も閉めてくれたので、歩きでいざレッツゴーとなった。
電車に乗って、すぐのところにあるので20分くらいで着いた。
因みに家から駅までは5分もかからなかった。
オマケに一駅挟んだところなのでとんだ僥倖だった。ラッキーラッキー。
「お寿司屋の店名を見るとどれも一緒に見えるよね」
「そんな事より、早く食べよ」
急かされて店内に入り、「いらっしゃっいませ〜何名様ですか〜?」と聞かれたので「2名です」と答えたら「こちらの席がお空きになっいるので着いてきてください」と言われたので言われた通り着いてくと4名ぐらいの席で301番とあるコーナーに案内されそこの机に会計表のようなものを置いて店員さんは行ってしまった。
「何食べようかな〜」
「決めないの?んじゃお先に失礼してさっそく!僕は連続サーモン!サーモン!オニオンサーモン!焼きとろサーモン!そしてコーン!そしてあおさ汁」
「莉奈はね〜…たまご…たまご…たまご…いくら…たまご「サーモン!」いらない「コーン!」いらない「とびこ頼んでなかった」?それ何〜?私も食べる!」
「ほいです。んじゃ今頼んどくね。他は?てかたまご多(笑)」
「お!う〜なぎ!やんけ!ひょいと」
はは、この空腹感が今にもうなぎを求めている。その前に小皿を二つ用意。小皿に醤油ともう一つの小皿に甘だれを投入する。
「んじゃ、春休みの寿司屋で初めての一口!いただきます!」
そう言って、甘だれをうなぎに付けて口に含んだ瞬間美味かった。ただそれだけ。
僕には食の美を語るスキルなんてない。けどただ一言美味い!と表現することはできる。ただそれだけ。
「莉奈にも〜♪」
「え?はい」
元々二つあったうなぎのもう一つを皿ごと莉奈に渡す。
「莉奈もいっただきます」
莉奈も口にいれて、「美味しい〜♪」と頰が緩んでいる。
はぁ、パクチーを食って美味いと叫んでいた時代が懐かしい。
「ほら、そうこうしてるうちにたまご4兄弟が登場したよ」
「たまご4兄弟って、ふふっ。おもしろくないけど?」
ていうか僕の方が早く注文したのに来ないってどおゆうことだよ!と文句を言いたい気持ちを押さえつけて莉奈の食べる様子を眺める。
「…コホン!いや〜、お財布が今日で寂しくなるな」
「私に貢いだと思えば気が楽だよ」
「いや〜そう思えれば楽なんだけどね」
それからと食いまくって、僕は16皿。多いでしょ?これでも食べるのよ。莉奈は9皿。青さ汁を莉奈が二つ(僕の分も含めて)呑んでも5000円以内で収まったから助かった。
ご要望通りそのあとは本屋さんに行った。自費で本を買って帰る莉奈は喜んでいて僕はエンタメ小説を一冊だけ気に入ったから買ってきた。後で推理小説で東野圭吾の本を買おうと決めた。
「今日はありがと♡楽しかった~また来ようね」
「…うん。そうだね」
こういう時、今頃父親は何してるんだろう?ふざけてるか。
父が仕事でいない日しかないから、殆ど莉奈と二人で過ごしいる。
今は少しでも、僕が親の代わりになってやれたらと頑張って節約してお金を貯めて偶にこういう所に連れて来てやりたい。
今年の春休みも一回も帰ってこなかった父のことを思い、複雑な心境になる。
莉奈は、本物の親から愛情のこもった行為を全くされてなくだからせめて僕が、行動して莉奈に親の愛情を知ってもらいたかった。
それでも偶に思う。莉奈は満足できてるのかな?不満がなければいいんだけどな〜なんて思ってしまう。
明日から、僕は学校だ。入学式は一週間後。
そして入学式に、母も父もこさせてやれないのが僕の今の、苦痛だった。
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