第12話 出会い 『ボランティア部4』
「はいはーい。みなさん、お疲れ様でした。電車の人は気をつけて帰ってねー。歩きの人は集合! 私たちが車で送っていきまーす」
楽しい時間はあっという間に過ぎ、外はすっかり暗くなっていた。
先輩のほとんどは酔っ払っていたが、コメさんをはじめ何人かはお酒を飲まず、しっかりしていた。
「よっしゃ、カラオケいくぞぉ!」
頭にフォークスを乗せた酔ったムギさんは、フラつきながら一人で歩き始めた。
「こらっ、危ないぞ。だれかこのバカ、カラオケに連れてってあげてー」
「あははは。面白いな、あの人」
信二が指さして笑った。
「コメさんもいい人だしな。他の先輩たちも、気を遣ってくれた」
「だな。楽しかった」
「じゃあ、入る?」
振り向くと、アキラちゃんといづみちゃんが笑いながら顔を覗き込んできた。
「……うん。入ってみようかな」
「おれも! かけ持ち大丈夫だし」
「俺もそのつもりだ」
「なら、誘ったのあたしだし、あたしも入るよ」
「アキラちゃんが入るなら、わたしも」
こうして、僕たちはボランティア部への入部を決意した。
先輩たちの車がいっぱいだったので、僕たち五人は歩いて帰ることにした。
たまたま、途中までみんな帰り道が同じだったので、男子三人で女の子二人を送って帰ることにした。いづみちゃんはアキラちゃんの家に泊まるらしい。
静かな住宅街を、僕たち五人だけが歩いていた。
人家の明かりと頼りない街灯が道を照らしていた。
でも、雲のない夜空では、浮かぶ月ときらめく星が闇の世界を作ることを拒んでいた。
「あたしは一人暮らしだけど、みんなは?」
「僕は一人暮らし」
「おれも」
「俺もだ」
「あ、じゃあ実家通いはわたしだけなんだね。いいなぁ、わたし大学まで一時間もかかるんだよ?」
この辺りの出身はいづみちゃんだけだった。
しかし、違う土地で生まれ育った五人が出会って、同じサークルに入るなんて、考えてみればすごいことだ。
これも、大学の魅力のひとつだろう。
住宅街を抜けて、広い道に出た。昼間は車が行き交う大きな道路だが、夜はほとんど通らない。道幅が大きい分、夜の静けさが濃くなった気がした。
「っていうかさ、出会って二週間なのにもうお泊りなんて、仲がいいんだね。なら、おれが泊まってもいいんじゃ」
「却下」
「はやいね……」
冗談を言い終わる前に、信二が撃沈した。
「従姉妹なんだよ、あたしといづみは」
「え!」
男子は全員驚いた。
「まぁ、あたしが親の仕事で引っ越し多かったから、そんなに会ったことはなかったけどね」
「そうだねぇ。最後に会ったのは、中一のときだったかな? 同じ大学に入ったって聞いたときは、びっくりしたよぉ」
あまり似ていないのは、アキラちゃんがハーフだからか。
それにしても驚いた。
「仲がいいといえば、あんたたちもだろう。息ぴったりじゃん」
「チェックマンとか?」
「やめてよも~」
「止まれ」
楽しく会話をしていたのに、衛が低い声で遮った。
きょとんとした僕らが立ち止まると、衛は怖い顔で振り向いた。
「いい加減、出てきたらどうだ。これ以上後をつけてくるな」
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