第9話 出会い 『ボランティア部』
「はーい、みんな。来てくれてありがとう。まだドリンク頼んでないけど、先に挨拶だけやらせてね。これより、ボランティア部の新歓コンパを始めまーす!」
部長の掛け声で、新歓コンパは始まった。
記念にすると言って、片手にはビデオカメラを持っている。
会場は、駅の近くにある居酒屋の宴会用座敷を貸し切って行われていた。
これで一年生はタダなんだから、大学生ってすごいと思った。
「俺は部長の
「副部長の
ムギさんは陽気な人で、元気の良さなら信二といい勝負になりそうだ。
コメさんも明るくて、ショートカットが似合うきれいな人だった。
第一印象では、本田たちにあった違和感を感じることはなかった。二人とも三年生で、ムギさんが僕らと同じ日本文学科。コメさんは、外国語学科だそうだ。
「えー、みんなも知っての通り、この部は部員もボランティアで成り立ってる、ゆるい部です。つまり、ほとんどの人がかけ持ちってことね。だから、べつに気負うことなく気軽に入ってくれていいから! ま、今日は先輩や同級生と仲良くなるいい機会にしちゃってくださーい!」
来ている人は先輩も合わせてだいたい三十人くらいか。
あのときの経験からつい、怪しい人がいないか警戒してしまう。
「大丈夫だよ。なんかあったら、あたしらが守るって」
正面に座るアキラちゃんが、ずいぶんと頼もしくて男らしい言葉をかけてくれた。
悔しいが、すごくかっこいい。
「あ、ありがとう。そういえばアキラちゃん、どうして誘ってくれたの?」
「だって、あんなことがあったし。サークルに自分から入ろうなんて思わないでしょ? でも、せっかくだったら見れるもの見といたほうがいいじゃん。みんなが一緒なら安心だし、ここの部長と副部長は、信用できると思うから」
なんだ、そんな気遣いまでできるのか。
惚れそう……っていうか惚れる!
「ときめいてるとこ悪いが、ドリンク決めてくれ」
人が恋に落ちかけていると、衛が横からメニュー表で遮ってきた。
「はい、じゃあみんな飲み物は来たかな? そんじゃ、乾杯!」
「「「かんぱーい」」」
「おれ、永犬丸信二! よろしく!」
信二はさっそく席を回って、周囲の人と乾杯をしていた。
「コミュ力高いな~」
信二のこういうところは、本当に尊敬する。
「みんな、かんぱーい」
ムギさんとコメさんは、両端から順にグラスを当てていった。
席は、長い二つのテーブルに男女で向かい合って座っている。最初に先輩の誰かが「合コンかよ!」とツッコんでいた。
「鳴水さーん。友達誘ってくれてありがと~」
コメさんがグラスを持ったまま、アキラちゃんのところへやって来た。
「いえ、みんなが優しかっただけです」
「あ、超絶美人アキラちゃんだ!」
「……なんですか、それ」
いつの間にか、僕の後ろにムギさんが立っていた。
「あはは。いいじゃんか。それより、はい! みんなカメラに向かって自己紹介!」
照れながらも僕と衛、いづみちゃんとアキラちゃんが名乗っていると、離れていた信二も戻ってきてムギさんと熱い握手を交わした。
「いいねぇ、みんないいキャラしてるねぇ。ま、入るか入らないかは別にして、今日は楽しんでよ」
「はい、ありがとうございます」
ムギさんとコメさんは手を振ると、他の新入生にもカメラを向けてまわった。
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