アレンジver 某CM風

登場人物

・私(十七)美術部員

・後輩(十六)美術部員

※登場人物Mはモノローグを表すものとする。


〇高校・美術室(夕)

   美術室の中には私(十七)と後輩(十六)の二人がいる。夏服を着た二人は部活の後片付けをしている。そんな中後輩が机の上にあった未使用の鉛筆を落としてしまう。

後輩「あっ!」

私「もう…おっちょこちょいだな……」

   思いの外大きかった声に反応した私が落ちた鉛筆を屈んで拾おうとすると、後輩も同タイミングで鉛筆に手を伸ばす。結果として二人で一本の鉛筆の端っこを握ることとなる。そのことに気づいた二人が顔を上げて見つめ合う。


〇「文房具×高校生[青春]」のロゴ表示


私M「私、十七歳」

〇電車(朝)

   電車の窓際、手すりにもたれかかるようにして立っている私。立ち並ぶビルを感情の薄い瞳で窓から眺めている。耳にはイヤホンをはめていて、いかにもつまらなさそうな表情を浮かべている。

   周りにいる人たちは皆クールビズ系のファッション。太ったサラリーマン風の男の人がハンカチで顔を拭っている。


私M「過ぎ行く日常は単調で、越え行く境界は曖昧で……」

〇高校・教室(午後)

   頬杖を突きながらも大人しく授業を受けて板書をしている私。周りには寝ているクラスメイトもいる。教室の上で扇風機が回っている。

〇高校・美術室(放課後)

   私が美術室のドアを開けると既に後輩がキャンバスの前に立って絵を描いている。尚この時後輩の背後には丸められた紙屑がたくさんあるが、私はそれに気づくことはなく、手を上げて挨拶しながら部屋へと足を踏み入れる。

〇家・自部屋(夜)

   机のライトに照らされながら黙々と鉛筆を動かしている私。復習の傍らで、空いたスペースに七夕や夏の星座の絵をかき込んでいる。


私M「青春って、もう始まっているのだろうか?」

〇電車(朝)

   以前の電車と同じ状況だが、私は窓から外を見上げるように首を動かす。

   また周囲が着ている服が違っている。男女ともに長袖のシャツを着ている。

〇高校・教室(午後)

   私、席替えと衣替えをして窓際の席に移っている。電車のとき同様、窓から外を見上げるように視線を動かす。

〇高校・美術室(放課後)

   私、後輩のデッサンに対してアドバイスをしている。途中三度窓から外を覗くと、紅葉がひらりと落ちて風に流されていくさまが目に映る。


〇高校・美術室(放課後)

   私、後輩共に首元にマフラーを巻いている。二人とも黙々と絵を描いているが、私の手は少し赤くなっている。

私「寒ッ!もう暗いし、そろそろ終わろうか」

後輩「そうですねー」

   後輩、私の意見を受け入れて片づけを始める。私、その様子と後輩のキャンバスを見ながら感慨深げに呟く。

私「しかし、随分と上手くなったもんだね……」

   私、机の上に置いていた手を動かした拍子で後輩の鉛筆を落としてしまう。

私「うわっ、ごめんごめん」

   私、慌てて鉛筆を拾おうとして屈む。すると後輩もまた同じように屈み、同じように鉛筆に手を伸ばしてくる。ちょうど最初のシーンの焼き直しのような状況だが、あの時と違って落ちた鉛筆は使い込まれて小さくなっている。少し動かせば、手と手が触れる様な距離が二人の間には存在している。

   私、顔を上げて後輩の顔を見る。すると後輩は満面の笑みでこう告げる。

後輩「近づきましたよ、先輩」

私「えっ……」

   私、至近距離でそんなことを言われてドキッとする。赤面した私を見て後輩、続けて声を大にして叫ぶ。

後輩「絶対認めさせますからね――!!」

   後輩のキャンパスには美しい鉛筆での下書きが描かれている。そして後輩の机には、色鮮やかな絵の具が散りばめられたパレットが存在している。

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君との距離 宮蛍 @ff15

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