スワロウテイルの残影

「それじゃあ、かんぱーい」

  きらびやかな宴会場のムードを背景に、キンっという音を立ててグラスがぶつかり合った。

 岱山高校同窓会一同様と書かれたボードが出入口に置かれているのを横目に、儀礼的な仕草で杯をあおる。

 初めてビールを飲んだのは昨年の六月だった。誕生日に気の早いビアガーデンに連れていって貰ったのだが、お酒そのものよりもビルの屋上に設えられた灯りと夜風のほうに酔ってしまってあまり覚えていない。覚えていないということは、酒の味自体は特筆すべきものでもなかったようで、それきりビールは飲まなかった。

 人生通算二回目のビールも、あまり美味しいとは思えない。こびりつくような苦みとアルコールがのどを焼く感覚を無視して飲み込む。一瞬脳が摩耗するような心地がして気持ち悪い。これを美味しいと思えるようになるまで、舌も脳もすり減らす必要があるだろう。

 いくつかのテーブルに分かれて座っている元同級生を見やれば、成人して初めての同窓会ということもあって、酒に手を伸ばす彼らの仕草もまた新鮮さを残していた。各テーブルに並ぶ料理もそこそこに、皆が思い思いの相手との会話に興じている。卒業してから出会った人のこと、現在の生活、学生時代の思い出。高校生だった時間は未だたった数年前のことだろうに、遠い昔を懐かしむような話し方をする。

 私も同じように大して遠くもない「高校時代」に思いを馳せ、現実から切り離す。今日ここに集まっている者たちは、皆様その時代に良き思い出がある人間ばかりだ。あの頃は良かったと思えるようなメモリーを積んでいる。想像していたよりもありきたりで、安定の代わりに興奮も少ない現状と比べて、もう戻れないからこそ煌めく「青春」を呼び起こす。当時にもあったはずの、今と地続きの退屈も、汚い気持ちも失敗も、全て綺麗な思い出に話し替えられていく。そんな儀式が行われている。

 場違いにもその中に入り込んでしまった私は、居心地の悪さに早速同窓会へ出席したことを後悔していた。

 本来なら今日ここに来るつもりはなかった。

 ここは私の居るようなところではない。

「そういえば、玲香いないね」

 ふと、隣にいた女子が思い出したように声を上げた。

 小木玲香、クラス内にとどまらず、校内においても美人で有名だった女の子。活発で、クラスの仕切り屋に不思議と収まっているような子だった。この同窓会という場に最も似合うであろう人物が、どうしたことか姿を見せていない。その事実に気づいて、テーブルの話題は一気に彼女についてのエトセトラへと流れ込む。

「そう言えば卒業してから連絡とってないなぁ」

「大学一緒だけど、相変わらず元気そうだったよ? 」

「この前会った時、今度同窓会でねって言ってたのに」

 どうしたのかなあ、と不思議そうに隣に座っていた子に話を振られ、私も曖昧に頷く。この手の話題の正しい対処法がこの年になってもわからない。

「ああ、小木さんなら出席予定だったんだけど、来てないんだよね。連絡もつかないし」

 各テーブルを回っていた幹事が、折よく名簿を。確かに出席のところに丸はついていたものの、受付の欄は空白のままになっている。

「ええ、玲香ドタキャンっだってぇ」

「連絡もないのは心配だよね」

「もしかして、なんかトラブったとか?」

「いやいや、単純にすっぽかしちゃったんじゃない? あの子割と抜けたとこあったじゃん」

 事実に憶測を交えて話は盛り上がる。曰く、高校時代から付き合っていた彼氏と最近別れたから出づらかったのではないか、それとも大学の友人関係のほうを優先して別の用事にでも行っているのではないか。

 不在にもかかわらず彼女は当たり前のように場の中心にいる。私も適当に相槌を打っていると、一つの予感が頭をよぎった。

「あ、もしかしたら」

 勢い余って擦れた声が漏れた。途端に一斉にこちらへと視線が集まる。それがひどく不躾な色を孕んでいて、思わず息が詰まった。きっとこの人たちには根拠を話してみたところでわかってもらえないに違いない。真っ白になった頭でそれだけ確かに感じた。続ける言葉は一つだった。

「ちょっと飲み物もらってくる」

 いたたまれない。聞こえているのかどうかわからない声でそれだけ言って、席を立つ。テーブルの面々の表情が見れない。簡単に言えば、逃げた。雰囲気を壊したような気がして、後悔と気持ち悪さに眩暈がする。ああ、私はこういう人間だった、と久しぶりに思い知った。だから同窓会には来るつもりはなかったのに。高校時代を知る人間には会いたくなかった。それでもここに来たのは彼女を見るためだったのに。それすらも空振りに終わってしまった。

 早く帰りたいと思いながらも言い訳した手前、配膳のスタッフに声をかける。グラスに入った水をもらうと、元いた席には戻らず、しばらくテーブルの間に立って会場の様子を眺めることにした。喧騒が遠くに聞こえる。嫌な胸騒ぎを落ち着かせながら、私は玲香のことを考えていた。

**

 彼女のことを思い出す時、決まってそこは夕暮れの教室だった。あの空間以外に彼女と私の接点はなかった。

それでも、私は他の誰も知らない彼女の一面を知っているという自負を持っていた。二人だけの秘密、何か特別なことをしていたわけでもない。しかし、彼女と世界の色々なことについて日が暮れるまで話したあの時間が確かに私の鮮烈な思春期の思い出だった。

 いつだったか、彼女が話していたことがある。

「あやめは、私を見つけてくれたんだ」

 いつもと同じ夕方の空き教室。他の誰にも見つからない二人の会合場所だった。彼女は、そこで私一人を相手に、突然思い付きを話すのだ。

「見つけた? 私が玲香ちゃんを? 」

 今回もよくわからないことを言い出したと思いながら、私はオウム返しに言葉を投げる。要領を得ないまま読んでいた本から顔を上げると、彼女は照れくさそうに笑った。

「うん。パパもママもイツメンのみんなも、多分––私も見つけられなかった私を見つけてくれたんだよ」

「また面白いこと言ってるね」

「面白い私を見つけてくれたのがあやめなんだ」

 ずいっと机を挟んだ反対側から身を乗り出して玲香は力説する。その様子が可笑しくて、私はたまらず噴き出してしまった。パタリと本を閉じて彼女の前に負けじと顔を突き出す。数センチ先の彼女の目に夕日の光が差し込んで、私の姿を映し出していた。その虚像が歪む。彼女が目を細めたのだ。

「じゃあ、私を見つけたのもきっと玲香ちゃんだね」

 息のかかる距離で内緒話をするように口に出す。この時、私たちはきっとどこまでも近い距離にいた。

 そんな日のことを思い返しながら、ボーっと会場の様子を眺めていると、にわかに出入口の扉のほうが騒がしくなった。遠目から伺っていると、バタバタとクラスメイトの一人がこちらへと駆け寄ってきた。先程、同じテーブルにいた子だった。

「神崎さん、もう聞いた?」

 顔面蒼白の彼女が続けた言葉は、現実感もなくつるりと胸の間を滑り落ちていった。

「小木さん、さっき亡くなったって」

 今、親御さんから連絡来たらしいよ。軽くパニックになっているのか、それだけ言うとその子は私の返事も待たずに人だかりへと駆けて行った。私は何も返せず彼女が走り去った方向を見つめる。あけ放たれたままの出入口の向こうに見えるロビーのガラス窓。その更に奥で、いつの間にか雨が降り出していた。


**


 小木玲香が死んだ。飛び降り自殺だった。

 突如として飛び込んできた訃報に騒然とした同窓会から数日経って、彼女の通夜が行われた。遺書は残っていなかったが、状況に不審なところもなく自殺だと断定されたらしい。彼女の人脈の広さは大学でも健在であったようで、通夜には用意された斎場の収容数を超えて多くの人が訪れていた。読経の声が響く中、人が次々と焼香に立つ。列の流れに従って私も祭壇に近づくと、棺の前に置かれた焼香台の正面で居ずまいを正した。遺影を見れば、笑顔の玲香が映っていた。おそらく大学生になってから撮られたものだ。記憶の中のどの彼女の笑顔とも一致しなかった。

 棺にチラリと視線を投げると、真っ白い顔をした彼女が見えた。頭部の挫傷が激しかったと聞いたが、綺麗に整えられていて遺影よりも穏やかでむしろ健康的な雰囲気を醸し出していた。

 眠る彼女は美しかった。

 大勢の人に見守られる、箱の中に眠るそれは、私の知る小木玲香でなかった。それが虚しい。抹香のついた指先を拭うと、それ以上見ていることができなくて、目をそらすようにして、白い花で埋め尽くされたそこを去った。

 遺族席には、年齢に反するように青い黒髪の背筋の伸びた女性と少し顔のやつれた男性がいた。目を合わすことなく、声も交わすことなくその人たちと頭を下げ合って、ああ、これ玲香の「ママとパパ」なのだと初めて彼女の両親を認識した。顔を上げたその一瞬、彼女の面影を二人に探して、急に悲しくなった。

 通夜は恙なく、何の波乱もなく終わった。斎場の外に出ると数日前と同じように雨が降っていた。傘を忘れたことに気が付いてどうしたものか考えていると、雨音に混じって誰かの話し声が聞こえた。

「小木さん、なんかもう少し美人なイメージだったんだけどな」

 かぁっと頭に血が上った。弾かれたように人のいるほうに顔を向けるが、途切れることなく出口へと向かう波の中にそれを言った人物を見つけることはかなわなかった。束の間の怒りが去った後の頭に悲しみが詰まっていく。見知らぬ人の言葉が自分の何に刺さったのかわからない。だが、それは聞いてはいけない言葉だった。世界は、誰も彼女のことを見ていなかったのだろうか。

 だから彼女は死んだのか。

 どうして、今更、玲香ちゃんは死んでしまったのか。私は行き場を失ったようにしてその場に立ち尽くす。雨に紛れて、彼女の亡霊がセーラー服姿で斎場の駐車場に立っているような気がした。

**

 彼女と私の出会いは衝撃的だった。少なくとも、私にとっては話したこともないクラスメイトが教室の窓から身を乗り出している光景は、たいへんショッキングなものに映った。

 高校二年の六月、小木玲香は窓から飛び降りようとしていた。

 ちょうど私が学校に置き忘れてしまった傘を取りに昇降口に向かっていた時だった。期末テスト前で部活動生も見当たらないグラウンドからふと目線を上に移すと、何かが風を受けて翻っているのが見えた。それがスカートだというのに気づいた途端、身体が強張った。一体どういうことなのだろうか、とその窓の奥に目を凝らせば、スカートの主がこちらに気が付いた。視線が一直線に結ばれる。遠くからでもハッキリと彼女と目が合っているのが分かった。

 それをクラスメイトの小木玲香だと認識した瞬間、箍が外れたように手足が動いた。私はよくわからない衝動に突き動かされて、彼女のいる教室を目指して走り出していた。

 土足のまま校舎に上がり込んで、階段を駆け上がる。彼女の姿が見えた教室は四階、滅多に使われることのない空き教室のはずだ。人生で二度とない程の必死さで足を前に押し出す。二段飛ばしがまだるっこしい。速く、速く。

 酸素の足りない頭が軋む。どうして、私は傘を忘れてしまったんだろう。どうして、あの窓を見てしまったんだろう。どうして、あんなところから、明け放たれた窓から全身を乗り出して、今、正にあの子がそのサッシから手を放そうとしていたところに出くわしたのだろう。それなのに、何故私は走っているのだろう。

 ようやくのことでたどり着いた四階。長い廊下がもどかしい。苦しさに鼻の奥がツンとする。兎に角、顔がひしゃげて元に戻らない。何かが胸からせり上がってくる痛みに耐えながら廊下の突き当りにたどり着いた私は、息を整える間も惜しくて目当ての教室の扉を開け放った。

 果たして、彼女は身を乗り出したままだった。ガン、と引き戸が滑る音が廊下じゅうに響く。彼女は信じられないものを見るような目でこちらに振り返った。夕日の色に染まった長い黒髪がなびくのが綺麗だった。息が今度こそ止まった。それどころか、時間さえ止まったように彼女の姿が目の中いっぱいに収まる。。

「よ、よかったっぁ。ま、待っててくれた」

 静寂を破り、私の口から出たのはそんな陳腐な言葉だった。息も絶え絶えに窓際に近づくと彼女の細い腕をつかむ。乱暴にこちら側に引き落とすと、思ったよりも抵抗なく彼女は足から教室の中へと着地した。その落下時間、恐らく一秒。落下距離は一メートル未満。

 目の前の女生徒と自分が一切話したことがない間柄だと言う事実はこの時の私の頭の中からは消えていて、ただ、大切なものを取りこぼさずに済んだという安堵で満たされていた。

「貴方、確か同じクラスの?」

 腕を掴まれたまま彼女が口を開く。じんわりとその手に触れているところから熱が伝わってきて、その熱さに慄いて手を放す。

「わ、あっ。えっと。かっ、神崎あやめ」

 急に気恥ずかしくなって自分の名前を答える。

「私は小木玲香」

 ふわり、と彼女が笑った。私たちはそうして出会った。

 それにしても、と彼女は肩を震わせる。

「土足のまま飛び込んでくるなんて思わなかったわ」

「ひっ、必死だったんだよ、そんなことっ、きっ気にしてなかったから」

 気づいてみれば、慌てていたとは言え校舎内を靴のまま走り回っていたことになる。バツが悪くなって靴を脱ぐと、その姿が更に面白かったのか彼女は耐え切れずに笑い出した。普段見ていた顔とは違う、弾けるような笑い方だった。鮮やかな笑顔だった。それを見ているのが私だけだということに嬉しさがこみ上げてくる。泣きたくなって、つられて私も笑った。

 ひとしきり、二人分の笑い声が静かな教室に響き渡った。

「死ねるかな、って思ったの」

 ツバメがきれいだったから。

 笑いが収まったあと、彼女はポツリとそう言った。

「でも、すごい勢いで走ってくる子がいたから」

 そう言って彼女は私に手を差し出した。私はその上に自分の手を重ねる。触れた手と手はまるでそれが最初から一つだったかのようにピッタリとくっついた。

 私はその不思議な熱に飲まれて、結局彼女の言った言葉の意味を聞きそびれてしまった。彼女と度々空き教室で話すようになってからも、尋ねる機会は訪れず、私たちは卒業し─そしてそのまま彼女は帰らぬ人となった。あの時と同じように空へと飛んで。今度は誰にもその手を掴まれることなく。


**


 通夜の翌日、私は彼女がその屋上から飛び降りたというビルを訪れていた。なんの変哲もない雑居ビルの下、歩道の脇に献花がいくつか積まれていた。私も持ってきた花束を一つ、そこに供える。そのまま上を見上げると、一匹のツバメが滑り落ちて、私の横をかすめて飛んで行った。玲香ちゃんもあんな風に飛んだのだろうか、と想像する。ツバメのように、冷たい雨と共に落ちながら、彼女は何を思ったのだろう。

 きっと、考えても仕方ないことを考えている。でも、そんなことを考えているのは私だけだ。

「ツバメがきれいだったから」

彼女の言葉を聞いていたのはこの世界で私だけ。

「あれ、もしかして神崎さん?」

後ろから声をかけられて振り向くと、同級生の菱木さんと園川さんが花を持って立っていた。高校時代、玲香と同じグループにいたのを覚えている。

「やっぱり、神崎さんだよね? 玲香に花持ってきてくれたの?」

ありがとうね、とまるで自分たちのことのようにお礼を言う二人に愛想笑いを返す。

「うん、クラスメイトだったし」

「そっか」

 じゃあ、私たちもちょっと花上げるね、と二人はしゃがみ込んで手を合わせた。私はそれを黙って見ていた。合掌を終えると、菱木さんがポツリとこぼした。

「ねぇ、やっぱり玲香さ」

「もう、そうと決まったわけじゃないじゃん」

「でもさぁ」

 私がその場に居合わせていることに気が回っていないのか、二人は神妙な顔つきで話し始めた。

「ど、どうしたの?」

 咄嗟に、いつもなら黙ってやり過ごしただろうに私は口をはさんでしまった。それに反応して、二人は悪いことをしたかのように顔を見合わせる。目線をそらしながら、しかし誰かと話題を共有したかったのか菱木さんが答えた。

「玲香の彼氏だった谷口くんって知ってる? 高校の頃から付き合ってたんだけど」

 知っている。彼女との会話でその名前が出たことはないけれど、学校でも生徒の間では有名だったと思う。私は頷いて続きを待った。

「ソイツと玲香さ、三ヶ月くらい前に別れたっぽいんだよね。原因は谷口くんの二股だって」

「酷いよね」

 園川さんがたまらずといった調子で語気を荒くした。

「それで、二人同じ大学だった、というか二股かけてたもう一人の子も同じ大学で。それで結構噂になっちゃってたんだよね」

 それで参ってたんじゃないかなって、とそこまで言って二人は口を閉じる。嫌な沈黙がその場に流れた。

「そう、だったんだ」

 それだけしか返せなかった。それはきっとこの二人や、名前しか知らない谷口くんや、二股相手に対する失望でもあったかもしれない。全員が全員、その一件で彼女が死んだと思っているのならば失笑ものだ。可笑しくてたまらない。彼女が死ぬ理由がそんなものであるはずがない。もっと、きっと違う理由で彼女は死んだのだ。

 何故それがわからないのだろうか。

 私の沈黙をどうとらえたのか、二人は

「じゃあ、ね」

 と手を振って連れ立って去っていった。後に残された私は地面をジッと見つめる。そこに薄っすらと染みが残っていた。それに気づくと私はぎょっとして立ち退く。

「ああ、その血の染みね。なかなか落ちないんだよねぇ」

 いつの間にか傍らに立っていた清掃員らしきおじさんがため息混じり私に声を掛けた。

「まぁ、じきに見えなくなるから」

 そう言い残しておじさんは仕事道具を片付けに戻っていった。

 ポツリ、ポツリと彼女の遺した染みの横に雨粒が落ちていく。やがて激しい雨へと変わって、その輪郭がわからなくなるまで私はそこに立ち続けていた。頭が冷えていく、彼女は死んだのだとはっきり自覚した。私は彼女に置いて行かれてしまった。

 彼女はもう、私を待ってはくれなかった。


****


 季節が少し逆戻りして肌寒い六月の午後、仕事場から早上がりする私の肩の横をツバメがかすめていく。振り返ってその影を追うと、いつか彼女が飛んだビルの前だった。

 今でも高いビルを見るとその上に、彼女が飛び降りていく様を幻視する。彼女はきれいに飛べたのだろうか。もしかしたら、そんなにきれいじゃなかったのかもしれない。ただの恋人に裏切られた傷心に耐え切れなかった弱い女の子だったのかもしれない。私の知っていたあの子は、私の頭の中にしかいなかったのかもしれない。

 それでも、私の想像の中の彼女はとてもきれいで、黒いセーラー服の少女のままだった。それが、今でもまだ生き続けている私には、とても眩しく思えた。


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ピース・オブ・ジャンク 槇灯 @makitou_fuko

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