第2話

鈍行列車で三時間。空気は汚い。

東京千代田区オフィス街。藍斗にはとても似合わない街のビルの一角から彼は飛び降りた。空は灰色、曇りの日だった。


藍斗の葬儀は、酷く盛大で人で溢れており、とてつもなく悲しいものだった。地元で一番の会場にも関わらず多くの人で皆入りきらないほどだった。


幼稚園、小学校、中学校、高校の同級生たちにその保護者。盛大な同窓会に皆、涙を堪えきれずに泣いていた。制服を着崩す者は誰もいない。数えきれない黒い人々に藍斗は送られる。


その涙を全て集めたら湖一つくらい出来るのかもしれない。藍斗はそんなことを想いながら葬儀を見ていた。


藍斗の死体は酷かった。内蔵は飛び散り。顔面から落ちたものだから顔と認識出来きようがなかった。

当然。棺の扉は開かれない。誰も開けない扉のなか菊の花に囲まれ藍斗は永眠している。


藍斗の仲間の健太郎はグシャグシャの顔で、「あいつ馬鹿だから、タイムリープでも試したんじゃねの」

祐希も泣きながら絞り出すように同調した。

「そうかもしんねぇな。あいつ馬鹿だもんな...。」

少年たちの精一杯の強がりだった。


別れの言葉を担った優介のあいさつは怒りに満ちていた。

「藍斗。なんでだよ?!何死んでんだよ!おい。そっから見てんだろ?みんな...。みんな泣いてるぜ。お前仲間大事にする奴じゃなかったのかよ?!ここにいるみんなお前が泣かしてんだぞ!何やってんだよ?冗談なら早く種明かししろよ。お前のとうちゃんとかあちゃん見てみろよ...。ふざけんな。何かあったんなら言ってくれよ。俺ら何もわかんねぇよ。お前明日から居ねぇの?信じらんねぇよ。何でだよ?!答えろよ!藍斗!!!」

泣き崩れる少年を藍斗の親父さんだろうか?抱きかかえるようにして壇上から降ろした。


『 なんで。』『 なんで?』『 なぜ?』


その場にいる全員がそう思っていた。


藍斗も泣きじゃくり、

「俺もわかんねぇ...。ごめん。ごめん...。皆、ごめん。」

と、蹲った。



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藍斗【仮】 ヤドリギ @yadorigimituketa

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