藍斗【仮】

ヤドリギ

第1話

7月9日。木曜日、午後三時二十五分。

「やべぇ!飛んでるみたいだ!!あ。落ちてんのかw」

「えっ?俺死ぬの?」

彼の最後の思考だった。

藍斗は都会の海へ飛び降りた。空は狭く、影は長かった。


青空の澄み渡るまだ海開きには早い六月。早めにあけた梅雨。

「俺から行くーーー!!!」

藍斗は崖から海へ飛び込んだ。

「お前らも早くしろ!ビビんな!」

出せる限りの大声で叫ぶ。

少年たちが着の身着のまま次々と海へタイブしていく。

少女たちは「馬鹿だねぇー」と言いながらも内心はその男子特有の馬鹿さ加減に憧れる。


小林藍斗は高校二年生。成績は中の中。クラスの中心的グループのリーダーでいつも何やら騒いでいる。彼の周りは常に人がいる。故にトラブルも多い。教師は毎度、藍斗を筆頭に叱るが彼の事を可愛がってもいる。


藍斗はそんな奴だった。

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