28 イズルの浮気?いやいや、嫁候補です!(笑)

結婚披露宴と言う名の宴会は朝方まで続いていた。

お陰で庭には酔っ払いが死屍累々と横たわっている。

その中には領主・ナグドリアもいるのだなら、この街は大丈夫かと少し心配性になるが、逆に市民よりのナグドリアには好感が持てる。

流石に女性陣を庭で寝かす訳にも行かないのでルナ達や義母・ルカ、ミネルバ婦人等の女性達には店の中の空部屋で寝て貰った…っと言っても遅くまで女子会と言う名の夜の営みについての伝授が行われていた様で朝起きた時に目が合ったら真っ赤な顔で挨拶された。

何の話を聞かされたのやら…。


さて、現在は店の奥のリビングにあるテーブル横のソファーに座っている。

何時の間にか復活したナグドリアが俺の前に座っている。


「この街は良い街ですね、領主からして市民に寄り添っている…けど、こんなに身近で他の貴族関係とは大丈夫なのですか?」


流石に少しは敬語を使ってみるがイマイチ使い慣れて無いからかおかしな言い回しだと自分でも分かるが諦めだなと思いつつ疑問を投げ掛ける。

ナグドリアも俺の問いを不思議そうな顔で聞いていれば笑みを浮かべた。


「何、こんな田舎の街だ…領主だ貴族だと言っていたら何もかも出来ないし、誰も力を貸してくれはしない…それなのに遠く離れた貴族を気にしていたら何も出来ない…所詮、貴族なんて言うのは肩書きだけだ…イザとなったら市民一丸となってやらないとダメだからな」


笑みを浮かべていたナグドリアから当たり前の様と言われた事を考えるが、それは実際は難しい。

何故なら、それでも貴族は貴族の付き合いと政策をしなければ、他の貴族にメンツも立たないだろうに。

この男は大したものだと思う。


「そうですか、大変なんですね?なら、俺も市民の一人として精一杯頑張らないとダメですね?」


俺は少し真面目な顔をしながら返事を返しつつキッチンで楽しそうに料理をする二人と義母・ルカ、ミネルバ婦人達を見る。


「守るべき人も出来ましたし…気合いも入れないとダメですね?」


渇いた笑いをしながらナグドリアを見て言う。


「そうだな、お互い守るべき相手がいると言うのは、それだけで力にもなる…君は更に此れから子供を作り更に守るべき人が増えるだろう…だから、今以上に強くならなければならない…君の使う不思議な技…魔法でもスキルでも無い、だからと言って純粋な技や力でも無い、不思議な力…見た感じ、使いこなせていないようだが?」


昨日、使って見せた金剛鎧の事を言っている様だ…あれだけ見て未完成と見抜くのは大したものだ。


「そうですね、あれは…いや、あれ以外も全て未完成ですね…完成は…出来る自信はありませんが、何とか頑張ってみますよ」


そんな話をしていると、朝食が出来たのか四人が料理を運んでくる。

手作りベーコンに店の裏の柵で囲われ内側に飼われているコッケー鳥の目玉焼き、硬いパンにコーンスープとオレンジュースだ。


ミネルバ婦人はナグドリアの横に、ルナとルルは俺を挟んで両側に、ルカはルルの横に座る。


「ほらほら、男達は朝から難しい話なんてしてないの…さぁ、冷めない内に食べましょう」


ルカが持ってきた朝食を食べる様に促す、そして自分は早々とベーコンに手を伸ばす。

手作りベーコンを更に厚切りにして焼いた物だ…最早、ベーコンステーキだな。

フォークで刺して持ち上げたそれは旨そうな肉汁を垂らしている。

それに齧り付き食べているルカは本当に美味しそうに食べている。

ルカのその姿を見て我慢出来なくなったのかルナとルルも食べ始める。


「はい、貴方…ベーコンをどうぞ…♪」


ナグドリアはミネルバに切り取ったベーコンをフォークで食べさせて貰っている…朝からお熱いことで…


「はい、イズルさん…ベーコンです♪」


「イズルはん、飲み物どうぞやっ♡」


かく言う俺も何だかんだと二人からベーコンだパンだ、目玉焼きだと運ばれ食べさせて貰っている。

この世界では男は女に食べさせて貰うのが当たり前なのか?


「イズル、諦めろ…」


どうやら違うらしい?

此れも昨日の夜の女子会の影響か…おかしな方向に走らないと良いのだが…。

ルナ、ルル…顔を赤くしながらやるなら、無理しなくても良いんだぞ?

俺も意外と恥ずかしいんだから…。

俺に一生懸命食べさせている二人は顔を赤くし頑張っている…良く見るとルカが笑いを堪えながら食べている…おかしいなら止めてやれよ!


しかし、俺も男だ…可愛い嫁達が頑張って愛情表現してくれているのだから甘んじて受けよう。

…そうしないと、今夜に影響が出る…。

昨日は宴会で人がいたからダメだったが、今日には皆、帰るだろう…なら、するべき事は一つ!

前世でも経験出来なかった、脱・童貞!


誰だ?考えが下賎だと言ってる奴は?

結婚したのだから問題無いだろ?

んぅ?ロリコン抹殺?

いやいや、彼女達は成人だよ?

種族的、俺より遥かに年上だ…うん!見た目は可愛い子供だけど、間違いなく大人…大人だよな?


兎に角、誰が何と言おうが彼女達は大人で問題無い!

…っと言う訳で、今夜はお楽しみだ…。


「イズルさん?何だか顔がニヤけてるよ?どうしたの?」


「イズルはん、もしかして…今夜の事でも考えてたんやろ…エッチ!」


イカン、イカン…思わず顔に出てしまったみたいだ…此では威厳が最初から無いかな?


「んぅ?何の事だ…俺はこの店で此れから頑張れる事に思わず顔が綻んだだけだぞ?そんな事を言ってるルルの方がエッチ何じゃないのか?」


俺は思わず誤魔化しながら逆にルルをからかう様に責めてみる。

するとルルが顔を真っ赤にする。


「な、なんでや!イズルはん、ひどいわ…ウチ、ウチ…」


途端に泣き出すルル、イカン…ルルは感情が直に出るタイプだった…


「ご、ゴメン、ゴメン…ほら、俺が悪かった…な、ルル?ほら、泣き止んで…ルルはエッチじゃないな…うん、俺がエッチだな…ほら、今にもルルを食べちゃうかも知れないぞ?」


俺は慌てて、泣き出すルルを抱き寄せながら頭を撫でつつ宥める。

そのまま手を下に下ろすと腰に手を回し撫でて見るとルルが驚き泣き止むと目を見開いて此方を見るとドンドン顔を立てる赤くしていくが抵抗する事も無く、寧ろ体を擦り寄せて来る。


「オホンッ! そう言う事は誰もいない夜にしてね?」


おっと、義母・ルカがまだ居ました…横では流石にナグドリア夫婦からのニヤついた目が…って一番怖い目が…


「ル、ルナ……忘れて無いからね……」


逆真横で頬を膨らませて睨んでいるルナに空いている手を使い抱き寄せながら言う。

まぁ、頬を膨らませている顔も可愛いのだが、流石にそんな事を言っている場合じゃないな。


「イズルさん、ボク何か放ったらかしでルルとばかり…ズルい…」


如何、此方も潤目だ…二人同時に平等にって大変だな…。


「そ、そんな事無いよ?俺はルナだって好きなんだなら…じゃなきゃ、最初の時にだって頑張れなかったよ?意外かも知れないけど、初めて会った時から二人には引かれていたんだ…」


俺は、ルカの苦言を気にせずルナの腰も撫でながら、取り敢えずは口説いてみる。

二人とも顔を赤くしながらも擦り寄り甘えてくる。

女の子って柔らかいし良い香りがするな…。


最早、三人以上世界に入った俺達を他の三人の白い目から気にせず甘えていたりもする。


朝からイチャラブ全開でいてもやるべき事はやらないと1日が始まらないのでキリの良い所で終わって食事を再開。

食べ終わる頃にようやく庭の屍…もとい、祝い客達が起きてきた。

俺達は前もって片付けて置いたテーブルの上にパンやらベーコンやらを並べ全員に朝食を勧める。

二日間酔いの連中はオレンジュースに手を伸ばしたりしていたが、大半は普通に食事をしていた。

しかし夜通し宴会をしてるとは…余程に娯楽が少ないんだな…。


「イズル、君は今日はどうするんだ?」


俺が庭をしみじみ見ているとナグドリアが後ろから声を掛けてきた。


「んぅ?あぁ、今日まではゆっくりするよ…昨日までバタバタだったからな…ようやく落ち着けると思うと何もする気が起きない…っとは言っても初級ポーションの幾つかは作っているとは思うけどな?」


俺はバタバタした毎日から普通の日常に戻れるからゆっくりすると言いつつも、此れからが忙しくなるのだろうと思えば、今日位はゆっくりすると言う。

余談だがルナ達も子供が出来るまでは冒険者を続ける…っと言っても、今まで見たいに無理はせず無難な依頼に切り替えるそうだ。


グランとガイルには申し訳無いが収入が減ってしまうと昨晩謝ったら、何れは訪れる事だったから気にしてないと言われてしまった。

二人ともルナ達の事を本当に喜んでいてくれていたのは感謝だ。


時間も過ぎ、人も散り始めた所を残っている人で片付けを始める。

そんな中、アルとエルを見付けた。


「二人ともどうしたんだ?」


二人は浮かない顔をしている。

特にアルの方は…何か言いたげだが、言うことが出来ないと言った感じの…。


「あ、あの…その…この度はおめでとうございました…そして、ありがとうございました…私達親子は貴方に助けられてばかりで、何も返せてはいません…かと言って体でと言っても、可愛らしい奥様も得られては、逆に失礼になってしまいますし…」


困惑気味に話を始めるアル。

あぁ、アル達にしてみれば俺は恩人か…それなのに恩返しも出来ないから困っているわけだ。


「気にしなくても良いよ、俺がやりたい様にやっていただけだからさ」


俺は困り顔のアルを慰める様に言う。

実際、成り行き任せの行き当たりばったりだったしな…アルを助けれたのも偶然だ。


「お兄ちゃん…ボク、お兄ちゃんの事が好きだよ…大きくなったらボクとも結婚してくれる?」


俺とアルが話をしていると、間に入る様にエルが首を傾げながら話をしてくる。

思わずうんっと言いそうになってしまう程に可愛い仕草だ。


「エルちゃん、そうだね…エルちゃんが大きくなって今の気持ちがまだ残っていて、俺の奥さん達が良いよって言ってくれたら、その時にまた話をしようか?」


俺は問題の先送りをしてみる…いや、ハッキリ断ると泣かれそうだからであって惜しいと思っていぞ?

うん…俺はロリコンでは無い…無いよな?


俺の言った事が分かったのか傾げた首を戻すとコクコクと首を縦に振りながら笑顔を見せるエルに思わずドキリとしたのは黙っておこう。


「…っで二人とも、此れからどうする?スラムの家に戻っても直ぐには仕事が見つかるのか?」


アルの体調は昨日までの療養である程度完治している。

普通に生活するには問題は無いらしい。

スラムもガダリオン達が改善を始めたので前ほど危険もなくギルドから簡単な仕事を斡旋して受ける者達が増えて来たから仕事は幾らかあるだろうが、それでも女手で親子二人となると大変なのは変わらない。


「そうですね?何とかしようとは思っています…これ以上、皆さんにご迷惑も掛けれませんし…」


アルは伏せ目勝ちにしながら申し訳無さそうにし呟く様に言う。

幾らスラムが改善されたとは言っても早急な改善では無い、言うほど簡単でも楽でも無いのはアル自身が一番良く知っているだろう。


「あぁ、そう言えば相談なんだから…何処かに、三食・住み込み・子持ちでも可、1日5ゼクス大銀貨で働いてくれる人を探しているんだが、知らないか?仕事は店の手伝いと家の中の掃除、調理補助何だが…心当たりがあったら教えて欲しいんだが…」


落ち込むアルを余所に俺は自分の事を話始める、俺が必要なのは住み込みで働ける従業員兼家政婦みたいな物だ…そう、ちょうどアル達(・・・)見たいな親子を…。


俺の言葉に今にも泣きそうな顔をしていただろうアルが勢い良く顔を上げ俺を見る。

その目の端には涙が溜まっていたが、その目も大きく見開き両手で口を塞ぐ様にしながら今にも叫びそうになる自分を押さえている。


「い、良いのですか…わ、私…達…も…ご、ご一緒…に…」


溜まっていた涙を流しながら嗚咽混じりに話始めるアル…しかし、その顔は悲しみよりも驚きと嬉しさが入り交じった顔だ。


「お母さん、どうして泣いてるの?お兄ちゃん、何か変な事を言ったの?」


エルが分からないと言った顔で居れとアルを交互に見る。

まだまだ子供のエルには難しい話だろうな。


「あぁ~イズルはんが結婚早々、浮気て女の人を泣かせてるやん!」


「イズルさん…ボク達だけじゃ満足出来ないの?」


店から出てきた二人が口々に言う、ルルは笑いながら分かっていて言ってるのが分かるが、ルナは何故か本気で涙目をしている…何故だ?俺は疚しい事は何もしてない筈なのに、何故、責められるのか?理不尽だ…。


そうは言っても嫁が泣いてるなら宥めるのも夫の努め…必死に宥める説明する事30分…


「そうだったんだ…ボク、てっきりイズルさんがボク達の事を遊びか義務で結婚したのかと思って…だってアルさん…体つきが…ねぇ?」


確かに、子供体型の二人に比べてアルの体はムチムチだが、それだけで靡く程、俺は節操は無いつもりだが…無いぞ?

何より、未亡人とは言え人妻何だから手は出さん!


誰だ?エルなら良いだろう等と言ってる奴は?

まだ子供だと言ってるだろ?


「分かって貰えて良かった…っで、部屋も沢山あるし、あの隙間風の多い家に帰すのも違和感があるし…何より店も家も手伝いが欲しいから、住み込みでお願いしようと思ってね…俺が薬草とかの採取に出ている時にも店を任せられるし…って思うのだけれど…どうかな?」


ぶっちゃけ此のまま帰しても碌なことにならないのは目に見えるし、そうしたらそうしたで後悔するのは自分だって分かってるからな。

結婚翌日に別の女を囲う訳では無いが嫁に言う話でも無いのを承知で話してみる。


「別に良いよ?アルさんもエルちゃんも悪い人じゃ無いし、二人ともイズルさんの事を少なからず思ってるみたいだがら、ボク達も知らないとダメだと思うもん!」


んぅ?ルナから何やら別の解釈をされたような?


「そうやな?別の所にいたんじゃ分からないもんな…一緒なら分かり易いんや…特にエルっちはイズルはんの好みに育てたらええんよっ」


もしも~し、お二人さん?何やら不穏な話をしてませんか?


「あらあら、お二人のお眼鏡に叶う様に頑張らないダメですね、私?エルは…イズルさんにお任せしますわ…お好みに育てて頂いて構いませんから…」


アルさん?俺、言いましたよね?子育ては親の仕事だって…クスクス笑いながらエルの背中を押さないでくれません?

エルも嬉しそうに抱き付いて来ない!


何だか、結婚翌日に早々と嫁に次の嫁候補だと言わんばかりに女性と女の子を宛がわれた気がするのは気のせいでしょうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界に来たので今度こそ、ゆっくり過ごしたいと思います!だからポーション屋を始めました♪ 百面猫 @hyakuneko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ