俺が好きな人の目の前でウンコを漏らした話をしよう。

HGM

俺が好きな人の目の前でウンコを漏らした話をしよう。

 タイトル通り、俺が好きな人の目の前でウンコを漏らした話をしようと思う。


 さて、みんなは…中学生以降にしよう…人前でウンコを漏らした事があるか?

 俺は、今回を含めて三回ある。

 様々なシチュエーションはあると思うが、好きな人の目の前という…何か悟りを開きそうな場面は中々無いと思う。


 実際、俺の周りには居なかった。

 それは俺の交遊関係の狭さに起因するのかは解らないけれど、経験しているけど言わないのかは解らないけれど、居なかった。


 ここで語る事により、俺の心が少しでも晴れる事を祈って…




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 十数年前のある夏の日、俺は急いでいた。

 焦っていたと言うべきか。

 そう…お察しのアレだ。ビックウェーブだ。



 当時は中学三年生。

 授業が終わり、ホームルームが終わりを告げる。

 直ぐには走らない。

 ウンコを理由に走るなんて、年頃だから恥ずかしさの方が上だった。友達の少ない俺にとって、それは重要な事。

 次々とクラスメイトが出ていく中、俺はそれに紛れてトイレを目指す。

 ごくごく自然に、ナチュラルに、爽やかに。


 木造の古い校舎。

 古い校舎特有の、トイレは遠いという…今の俺にとって気分を落ち込ませる条件は整っていた。

 少し古い木の匂いが懐かしい気分にさせ、歩くとギシギシと床が軋み、その振動、音、少し沈む感覚が俺の五感を刺激する。


 下から伝わる刺激。

 クーラーなんて無い古い校舎だから、窓から射し込む陽の光が肌を焼く。


 しかしまだ大丈夫だ。

 そう言い聞かせたその時…

「あっ小林君!ちょっとこのフタ開かないんだけど…開けてくれない?」

 通り道にある保健室。

 ドアが開いていて、保健室の先生が俺にフタを開けてと頼んで来た。

 なぜ今のタイミングなんだ?

 ウンコをしてからでは駄目なのか?

 力を入れたらアウトだろうに。

 今、ウンコが激しくドアをノックしているんだ。

 開けろー!今すぐ開けろー!と俺を責めているんだ。

 しかし、保健室の先生は若い美人な先生だ…ウンコをしたいから嫌だとは言えなかった。


 謎の液体が入ったビン。

 少し力を入れるがビクともしない。

 なんて事だ…これ以上力を入れたら決壊する。

 ふぬー!手とケツに力を込めながらビンのフタを開ける。

 歯を食い縛り、冷や汗を流しながらケツのお菊さんに力を込め…


 __っ!来た!来た来た来た!

 開いた!開いたよ先生!

 保健室の先生のありがとうを貰い、何か話し掛けてこようとしたが、俺は振り切りトイレを目指す。

 もう限界だ…いや…

 実はもう…二センチぐらい、こんにちはしていた。


 トイレまでは角を曲がり、廊下の奥にある。

 __角を曲がった!

 __トイレまでは二十メートル!

 __十五メートル!

 __十メートル!

 __勝った!

 __「あっ、小林君!作文の件で先生が呼んでるから来てー」


 あん?作文?

 聞き覚えのある声に振り向く。

 そこには、クラスメイトの鈴木さん。

 俺の…好きな人だ。

 冷や汗をかいている俺に首を傾げ、近付いてきた。

 やめろ、来るな、来るんじゃない!

 今、こんにちはしているウンコが脱出しようとしているんだ!


「ト…トイレに行ってからで良いかな…」

「ん?良いんじゃない?」

 勇気を振り絞り、鈴木さんに返答する。

 まともに話すのは久しぶりなので、どもってしまった。


 まぁ、それは仕方無い…先ずはトイレだ。

 そう思い、トイレの方向を向こうとした時…

 こんにちはしていたウンコが脱出に成功した。

 __まずい!

 俺は手をケツに持って行き、ウンコが逃げない様に学ランの上から押さえ付けようとした。


 だが、ウンコは重力に従い


 俺のトランクスの隙間を通り


 太もも、膝、すねをかけ降りる


 そして、__ポロン。とズボンの裾から飛び出て


 鈴木さんの所へコロコロと転がった。


「……」

「…何か落ちた…よ__ひっ!」

「__うわぁぁぁ!」


 俺は無我夢中でトイレへと駆け込んだ。


………


………


「……」


 その後、事件現場に戻ったが…誰も居らず…


転がったウンコは…ポツンとそのまま残っていた。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 その時の、鈴木さんの顔は今でも忘れられない。


 結局、俺が言いたい事は…みんなには、ウンコがしたくなったら振り返らずに突っ走れという事だ。


それでは、ご武運を!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺が好きな人の目の前でウンコを漏らした話をしよう。 HGM @Hagima

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ