ヤンチャ坊主と勇者③

「蓮司!?」

 

 また蹴られる。そう思った瞬間に朝矢の声が飛び込んできた。返事は視線だけを声のする方へと向ける。朝矢だ。朝矢が驚いた顔で蓮司を見ている。


「おいおい。ガキがまた来たばい」


 すぐに先程まで蓮司を殴るけるを繰り返していたガラの悪い中学生たちのほうをみた。


「げっ中学生だ。朝矢くん」



「あれって、問題ばかり起こしているやつらじゃなか?」


 朝矢のすぐ後ろには勇と泰の姿がある。


「なんだ?このガキ。文句あるか」


 中学生の一人が朝矢たちを睨みつける。


「朝矢くん。まずいかよ。逃げよう」


「だれが逃げるかよ!

 」

 勇が朝矢の腕を掴んで逃げようとするが、それを振りほどくなり、突然中学生のほうへと駆け出した。みんなが驚いたのも言うまでもない。朝矢は、中学生の一人のとびかかるなり、押し倒してしまった。


「朝矢君。なんしょっとね」


「うるせえ」


 周囲の声も聴かず、朝矢が中学生を殴ろうとした。しかし、別の中学生によって引きはがされ、思いっきり投げ飛ばされる。朝矢は、草むらの中へと落とされる。


「びっくりした。なんだよ。このガキ」


 中学生が驚いたのは言うまでもない。


「なんだよじゃねえ! よくも俺のダチを痛めつけやがったな!」


「はあ? なにいっとるとや。このガキが悪いんだよ」


「さっさとどければよかったんだよ」


 朝矢は立ち上がるなり、自分よりもずっと大きな中学生に突進してくる。


「ふざけんな」


 けれど、あっけなく倒され、殴りつけられる。


「朝矢君」


 先ほどまで見ていた勇と泰たちが朝矢をなぐりつけている中学生の腕を必死につかむ。


「このガキども……」


「これ以上、朝矢君を殴らせんけん」


「そうだ。そうだ」


「離せ」

 勇たちを振り放そうとした瞬間。中学生の局所に強烈な痛みが走る。そのまま、のたうち回り、局所を押させなが、土下座の態勢をとる。


「立垣。大丈夫か?」


 周囲の友人が心配そうに話しかけている。


「いてえ」


「へへへえ。ざまあ見ろ」


 いつの間にか、朝矢が立ち上がっている。


「このガキ……」


 立垣と呼ばれた少年の友人の一人が朝矢の胸ぐらを掴み持ち上げた。


「ふざけんじゃねえ!」


 そういって朝矢に殴りつけようとした。


「いた」


 すると朝矢を掴んでいた腕が緩み、朝矢の体はストンと地面に落ちる。


「だれだよ! こら!」


「こんなところでケンカするのやめてくれんか?」


 振り向くと中学生のすぐ近くに高校生らしき少年が竹刀で肩をトントンと叩いていた。



「なんだ? おまえ?」


「あっ!?」


 中学生と朝矢の声が重なる。


「なんだとはないだろう? 俺はあんたらよりも年上ばい。目下には優しく目上には敬意を払うべきだとは思わんと?」


「うるせえ! わけわからんこというな!」


 すると中学生たちは高校生に襲いかかった。


 しかし、少年は竹刀を構えると次から次へと中学生たちを叩き倒してしまった。


 地面に倒れた中学生たちは悔しそうに高校生を睨みつける。


「まだやるつもり? これでも俺は剣道で全国大会編でとるとばい」


「ちっ! 覚えてろ!」


 そういって、中学生たちは去っていった。


「なんか定番の捨て台詞いって去っていったなあ」


 高校生は朝矢たちを振り返った。


「やあ怪我ないか?」


「俺は大丈夫。ばってんが、蓮司が怪我しとる」


 朝矢はぐったりとして倒れている蓮司のほうをみる。


「それは大変たい。すぐに病院連れて行こう」


 高校生は蓮司を抱えあげると病院へ向かって走り出した。



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