跳び箱と赤ずきん③
早速僕は父さんと一緒に学校へ向かうことにした。
「確かに変な感じだな」
あたりはもう暗い。校門も完全に閉ざされている。
校門の前にたった父がグラウンドの向こうにある校舎を見ながらつぶやいた。
「どうやって入るの?」
「そんなもの決まっている」
僕が怪訝な顔をしていると、突然父は僕を抱え上げた。
「うわうわ」
僕は驚く。
「乗り越えるだけさ」
「ええええ」
父はそのまま僕を学校の仕切っている塀の上に乗せた。
そして、持ってきた荷物を投げ入れて、軽くジャンプすると、あっさり塀を乗り越える。
「ほらよ」
あいかわらずの運動神経だ。
僕もそんなふうになれるのだろうか。
でも運動能力に関しては、母親似で僕の運動神経はさほど良くはない。
「ほら、父さんが支えてやるから手を伸ばせ」
そう言われて片手を父のほうへと伸ばすと、身体が塀から落ちそうになった。それを父が僕の身体を抱きしめるように支える。
少し怖かったけれど、降りることができた。
「久しぶりだなあ。塀を超えるのも」
「父さん。もしかして、よくサボってた?」
「そういうことかなあ」
父はのんびりとした口調で言いながら、校舎へと歩き出した。
校舎へと近づくほどに募るのは不安。
どす黒い空気が漂ってるような気がして、背筋が凍る。
父は平然として顔をしていた。
校舎に入るための玄関前。
父が足を止めて、じっと玄関ガラスのほうをみつめる。
「どうしたの?」
父は自分の唇に人差し指を立てて、静かにするように促した。
どうしたのだろうかと首をかげていると、父が耳をすましてみるように促した。
いわれたように聞き耳を立てると、なにかが聞こえる。
泣き声だ。
すすり泣きが校舎のほうから聞こえてきたのだ。
「とにかく入ってみるか」
「どうやって?」
父は玄関の扉に手を触れた。
すると開いた。
おかしい。
普通は施錠されているはずなのに、難なく開いた。
もしかしたら、閉め忘れだろうか。
「たぶん、あの子が開けてくれたんだよ」
「あの子?」
「聞こえるだろう。あの子が呼んでいる」
泣き声の子?
僕はそう思った。
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