跳び箱と赤ずきん②

 先生の話を要約すると、ある日突然子供達から笑顔がなくなったとのことらしい。なぜそんなことが起こったのかはわからないがその発端となった子供だけははっきりしている。


僕のクラスにいる一人の少年だ。その少年は明るくムードメーカー的存在だった。


ちょうど一週間前、登校してきた少年の元気がなかったのだ。


 理由を聞いても答えずにブツブツと独り言をいうのみ。親御さんも突然のことで戸惑ったのはいうまでもない。


 そうこうしているうちに伝染するように少年のクラスメートから笑顔がなくなり、気づいたときには学校から子供の笑い声が消えてしまった。その代わりにブツブツと不気味な声だけが響き渡るようになり、先生たちは困惑するよりも恐怖心さえも抱くようになったのだという。



だからなのか。先生の顔色は悪い。相当参っているらしい。


 一週間前はまだ僕はいない。別の学校で過ごしていた頃だ。そういえば、あの学校はなにも起こらなかったなあ。ただちょっと気になる子がいたぐらいだ。見た目も性格も違うんだど、僕と似た感じがしたから興味をもったんだよね。またいつか会えるかなあ。


いまにも倒れそうなほどに顔色の悪い先生が一生懸命に話しているというのに、僕は不謹慎にもそんなことを考えたりしている。もちろん、先生に悟られてはいない。というか僕がどんな顔で聞いているか気にする余裕さえもないのだ。それほどに切羽詰まっている感じだった。


元気がなくなる現象に感染症を疑ったらしくて医者にみせたそうだ。だけど、原因はわからずじまい。


病気じゃないとすれば、霊的なものかもしれない。そう考えた僕は学校から帰ると早速父に相談することにした。


「うーん。話だけ聞いてもわからないなあ。とりあえず、現場へいくか」


そういうことになった。







 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る