跳び箱と赤ずきん①
僕にとっての転校というのはいつものことで、いく先々でいろんな不思議な出来事に遭遇することも当たり前のことだった。
だから、この出来事も僕が体験し続けている不思議体験の1つにすぎない。
だけど転校初日から不吉な匂いがプンプンするというのはその時点ではじめてのことだった。だから、まだ十歳だった僕にとっては気分が悪くて仕方がなかったのだ。
僕には生まれたときから人ならざる存在を感じることができる霊感とよばれるものが備わっている。それは突然変異でもなんでもなく、僕の家系が古くから続く陰陽師だったからだ。
父さんも母さんも陰陽師の家系だった。母さんは僕が幼い頃に死んだからどれくらいの能力者だったのかは知らないけど、父さんは陰陽師界でもかなり優れた能力の持ち主で次期陰陽頭になるのだと目されるほどだった。だけど、そんな期待を背負うのがいやだったのか、父さんは陰陽寮にも実家にも近づこうともせず、まるで組織から逃げるかのように日本中を転々としていた。
それゆえに息子である僕は何度も学校を変わることを余儀なくされていたのだ。だからといって不満はない。当たり前すぎて、普通のことだった。ゆえに僕は人とは深い関係になることもなく過ごしてきている。
まあ、僕の事情は置いとくとして、いまは奇妙な学校についてだ。
もちろん僕の感じた奇妙な気配は、陰陽師のなかでも優れている父さんが感じないはずがない。父さんも初日に学校へ訪れたのだから、異様さを感じていたはずだ。だけど、僕にはなにも言わなかったし、なにか行動を起こすこともなかった。
おそらく異様な感じがするのに、大概の学校にいるはずの“学校座敷わらし”さえも現れることがなかったからなのかもしれない。
とにかく静かな学校だった。
静かだ。
静かすぎる。
妖怪がいないからじゃない。
そこに通う人たちもおとなしい。
表情も乏しい。
まるで人形がいるだけのようだ。
人形たちしかいない教室にたった一人の人間の子供である僕がいて、先生がいるといった感じだった。
だけど、人形ではない。ちゃんと動くし、ボソボソなんだけど話はする。
でも、本当にボソボソ。
みーんなひとり
みーんな誰とも関わろうともせずにひとりでいる。
ここには繋がりがないのだ。
ただ先生だけが繋がりをつくろうとするんだけど、それを遮断しているんだ。
なぜこんなことになっているのか。
僕は先生に聞くことにした。
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