8・恨み声(2)

樹里きさと? 樹里どうしたの?」


 麻美あさみは、すぐ異変に気付いた。


 呼吸が荒い。


 瞳孔が開き、額から冷や汗が流れている。


「樹里がおかしいの」


「え?」


 部員たちが樹里の周りに集まっていく。


「とにかく、保健室へていこう」


 麻美が樹里に肩を貸して立ち上がらせると、すぐさま保健室へと駆け出そうとした。


「渡さない」


 樹里の口から声が漏れる。


「え?」


 確かに樹里から漏れる声だった


 けれど、違うような気がした。


 いつもの樹里の声じゃない。


 別のだれかの声。


 聞き覚えのない少女の声。


 麻美は、樹里を見る。


 真っ青な顔。息も荒い。とても、言葉を話せる状態には見えない。


 ならば、気のせいだったのだろうか。


「麻美。急ごう」


「うん」


 そんなこと気にしている場合じゃない。


 親友が死ぬほど具合悪そうにしている。


 急いで保健室に連れて行かないと……。


 麻美は、自分の耳に残る少女の声をいったん別の場所において、急いで校舎へと向かった。

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