第7話 ルシアーノ

 青を溶かして混ぜたような銀色の髪をした女の子がCランクにいた。

 彼女の名はルシアーノ。常に無口で何を考えているのか理解が苦しむほど無表情だ。

 周りからバカにされるように言葉を投げかけても決してルシアーノからの言葉を聞き流している奴らがいた。


「やめろよ! かわいそうじゃないか!?」


 と止めたのが最初の結末だ。


 ルシアーノと同じルームシェアであることとチームメンバーであったことをクロナから聞かされた。

 ルシアーノは、外見から見て美人なほどで、胸は小さいながらもスタイルがよく、よく告白されることがあるそうだが、本人は無表情で無言のため、嬉しいのか悲しいのか嫌なのかはっきりとわからず、結局空振りだったと愚痴る日々だ。


 空振りだった男子たちがルシアーノを標的にしたのもこれが原因だったのかもしれない。

 ルシアーノは決してからかわれていることに微動としなかった。というよりも気づいていない様子だった。


 自分に声を掛けられている=うれしい。

 と、最近かすかに頬が赤くなっているのが分かるようになった。


 悲しい=目がかすかにしょぼんとしている。

 悔しい=無表情でよくわからないが、肩が震えている。

 怒っている=ふるふると全身を振るえている。

 うれしい=無表情でわからないが、いつもより明るい。

 照れている=頬がかすかに赤くなっている。


 と、特徴を見切ればわかるようになった。


 ルシアーノと親し気になれるかと思い、魔法バトルに誘ったが、


「……」


 怖がっていた。青ざめていたからだ。


「そんなんじゃ、ルシアーノの気を引けないよ」


 クロナに冷やかされる。


「せっかく同じチームだし、仲良くしておきたい…と思って」


 クロナは両腕を組み、ルアに一言提案した。


「今度、キャンプをやることになっているんだ。他のメンバーも誘ったけど、試験やらで忙しいって言われから、もしかしたらどうってね。あっ、ちなみにエレナはOKだよ」


 キャンプかと過去のことを思い浮かべた。

 ブルーノたちとよく行っていたなと。親に内緒で子供だけでキャンプしようと飛び出して、山中でキャンプしていたときに転送魔法でいきなり親が召喚されて。あのときは、非常に焦ったな。さんざん怒られたっけ。


「いいね。ぼくからも誘っておくよ」


「OK。許可がもらえたら報告してね」


 クロナと別れ、ルシアーノを誘いに向かった。

 ルシアーノはちょうど教室の中でからかわれていた最中だった。


「またか…」


 ルシアーノはなんの悪気もないし、むしろ怒ってもいいレベルなんだけど、嬉しいのか自ら誘いに乗っていくみたいで、見ていて辛くなる。


 魔法で氷を水に変えたものを飲めと男子たちが命令していた。

 水に口を近づけると、水は凍りに戻った。

 ルシアーノは驚くほど無表情で男子たちを睨みつけていた。


「な、なんだよ。少しは怒れよ!」

「……痛い」


 ボソっと聞こえないレベルだ。

 男子たちは慌てているが、ルシアーノは相変わらずの無表情で何を思っているのかさえ分からない。


「ルシアーノ、ちょっといいか…」


 口元に氷が張り付いている。

 魔法で氷を溶かして、ルシアーノを喋れるようにしてから誘った。


「……」


 無言の頷きだ。

 頬がやや赤くなったのが見えた。

 OKの合図だ。


「部屋で待っているよ。クロナにOKのサインしてくるけど、一緒に行く?」


「……」


 ルシアーノが頷いた。


 部屋に戻り、クロナにOKの返事が出たのを告げた。


「よし決まりね! 明後日に出かけるわよ。一泊二日。もちろん食材や布団などは持参よ」

「楽しみです」


 エレナは嬉しそうだった。

 あの虐めの事件から一変して変わったんだ。

 ルシアーノもいるし、四人そろってのキャンプだ。

 どうなるのかさぞ楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る