国際結婚

勝利だギューちゃん

第1話

俺の父方の祖父母も、母方の祖父母も、明治生まれの人間。

つまり、戦争をリアルに経験している。

なので、アメリカに対する憎しみは凄く、よく聞かされえいた。


他の3人は、「もう昔の事」と割り切っている部分もあったが、

母方の祖母の、アメリカに対する憎しみはひとく、

「アメリカ人女性とだけは、結婚しないでくれ」と、言いきかされた。


当時の俺は、頷いていた。

そういうことは、あり得ないと思っていたからだ。


その祖母も、もういない。


でも、自分の事を心から愛してくれる女性がいたら、

国籍は関係ない。

誰でもいいというわけではないが、互いが幸せになれるのなら、それでもいい。


但し、日常生活に支障のない、日本語は話せるようになってほしい。


で、そんなのは女性に縁のない俺には関係ないと思っていたのだが・・・

運命の歯車とは、どこで組み合わされるのかがわからないもので・・・


現在、俺の家には、外国人の女の子がホームステイをしている。

親父の知り合いの娘さんだ。

仕事がら、外国人の友達も多く、俺も小さい頃からふれてきた。


彼女の名前は、マーガレット。

スペインからきたようだ。

日本語は悠長とまではいかないが、それなりに会話は出来る。


ただ漢字は弱いところもあるようで・・・


「ねえ、ひろし、この漢字は何て読むの?」

フランクに声をかけてくる。

まあ、俺もそのほうがいいのだが・・・


彼女が見せた漢字は蝶。

「ああ、これはちょうと読むんだよ」

「ちょう?それはなに?」

「スペイン語なら、マリポーサだよ」

「おう、マリポーサ」

マーガレットは、感激している。


それほどのことか?


フランス語では、蝶と蛾はパピヨンでひとまとめにされているが・・・

スペインはどうだろう?


「なあ、ひろし、いいか?」

「どうした?親父」

「お前、マーガレットと結婚しないか?」

いきなり何を言い出す?


「そんなの、彼女の両親が承諾しないだろ?」

「よろしく頼むだと」

「マーガレットの意思は?」

「ふつつかものですが、よろしくお願いしますだと」

どこで、覚えてきた?


「でも、戸惑うだろ?」

「もう、慣れたらしい」

いや、それは無理だから・・・


「で、お前の意見は?」

「拒否権はないんだろ?」

「ああ」

勝手に決められた。


政略だ。


でもまあいい。

これも縁だ。


マーガレット、いや、奥さん末長くよろしく。


マーガレットは両頬にキスをしてくる。

「スペイン風の挨拶だよ。ひろし」

「ここは、日本だ」

「キス、嫌い?」

俺は、考えずに答えた。


「毎日、お願いします」




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国際結婚 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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