観測的文芸部

まめいちご

プロローグ

頭上でぽつぽつと嫌な音がし始めた。

どこまでも薄暗い空の灰色は、

先程までの青色は気に入らなかったと

言わんばかりに覆い尽くした。



誰の前にも決して主人公は現れたりしない。


なんの本で、いつ読んだのかわからないが

よく覚えている一節だ。

人の思想は千差万別だ。僕の目を通して見えている世界と、他人が見ている世界、必ずしも同じものとは限らない。

見えている世界に齟齬があるなら、共有することも不可能だ。だったら、他人の前では他人として、友達の前では友達として、家族の前では家族として振る舞わなければならない。でも、もし、相手が僕達に主人公として振る舞うことを望むのならば、違う世界の住人だと知っていて、自分の世界をぶち壊してでも主人公を確立させたいと望むのならば。


僕達は、君の世界の主人公になる。


僕達は雨に濡れることすら

叶わなくなった少女の前で、そっと誓った。





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観測的文芸部 まめいちご @Mameichigo

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