奇襲
スキルの熟練度がペルが見せてくれた様に、修得の有無が行動や生活にかなり影響を及ぼす事がわかり、ワシは今あるスキルを最大まで上げる事を目標にした。
なに、上げ方の目星は大体付いとるでな。
それから暫くの間は研ぎすぎてショートソードになってしまった朽ちた剣(元ロングソード)を装備し、森の中で太く長い枝を何本か集め、たまに遭遇するミイラ擬きを倒し、朽ちた剣を研いだり短くしてナイフ(長さ的にはサバイバルナイフかの)にしたり、折った剣先を研いで枝に付けて槍にしたりして装備を整え、食料を集めつつ、他の人達が集まっているであろう場所を探すというのを何日か行った。
「しかし、この森は広いのう。」
今日、滝の上の側でキャンプする予定で、そこから景色を眺めておるのじゃが、目算でしかないが30~40mぐらいかの?もしかすると50あるやもしれん滝の上から眺めても森しか目に入らん。
川もかなり先じゃが山向こうまで続いとる。
後ろを向くと森の木々しか目に入らんからここがとんでもなく広いと分かる。
「ま、川を下ればその内に人里に辿り着けるじゃろ………」
眺めるのを止め、落ちると流石に死にそうなので少し離れた森の側でキャンプの設営をする。
明日はこの滝を降りる道を探すからの、早めに休んでおくんじゃ。
そうそう、ついでにステータスも確認しとくかの。
Lv9トミオ・ヤマベ 年齢:18
職業:放浪者 種族:アポストロス
HP 55/55
MP 37/37
SP 46/46
筋 23 5+18
体 23 5+18
知 14 5+9
精 14 5+9
器 35 5+27+3
敏 32 5+27
運 30 5+18+7
スキル:サバイバル10
直感力10
生活魔法5
時空魔法初級2
加護:女神ディニティコスの加護
眷属:ペルセポネー
PT:ペルセポネー(熊)
職業:放浪者
ステータス修正:筋+2体+2知+1精+1器3
敏+3運+2
女神ディニティコスの加護
女神の加護により確率0であろうとも可能性が発生する。
アポストロス
使徒。使える神の恩恵を潜在的に宿す。他者を女神に代わりテラペウテース(信徒)へと変異させる事が出来る。
サバイバル 10/10
生存率を上げる為にあらゆる事に効果を発揮するスキル。何にでも効果を発揮するが本職には負ける。
熟練度MAXボーナス:器+3運+2
直感力 10/10
あらゆる出来事に対し感覚的に判断できる様になる。
熟練度MAXボーナス:運+5
生活魔法 5/5
熟練度ボーナス:火の火力UP
水の水力UP
土の硬力UP
風の風力UP
光の光力UP
時空魔法初級 2/10
修得:クイック・スロウ
ふむ、弓でも使えと言わんばかりのステータスじゃな。
そして3・5・7レベル毎にスキルを修得出来ると言う事が分かった。
ワシの予想が合っていれば次は10で修得じゃろう。
そんな気がする。
一番驚いたのは熟練度が上がりきるととステータス修正が入った事じゃな。
これはスキルを極める事に意味が出てくるのう。
初めはレベル毎に色々と取得していこうかと思っとったんじゃがな。
次に生活魔法は便利すぎる故かステータスは上がらなかった…………
実際、ワシ等はこの魔法のお陰で飲み水にも困らず、雨の中でも火を使え、土壁のテントに住み、ずぶ濡れであっても直ぐに乾かせ、今では辺りが暗闇で包まれていても、ワシ等の周りは蛍光灯位には明るい。
これではサバイバル生活と言うよりキャンプじゃの。ボーイスカウトとかの。
そして覚えた時空魔法じゃが、有ると思ったんじゃ、無限収納的な奴を。
初級では覚えないのかそれとも無いのか分からんが無かった事に少し気落ちしたが代わりにこの魔法がやたら使える。
クイックでワシ等は速く動き、スロウで相手を遅くする。
これだけで狩りの効率が格段上がったわい。
他の魔法とかも見てみたいが、これを極めるのも面白いのう………初級じゃがな。
ペルに至っては特に変化は無く、現状維持と言った所かの。
レベルが同じにはなったが、ワシはペルに勝てる気がせんのじゃ………使徒より信徒の方が強いってどう言う事なんじゃろう?
「さて、ペルや。未修得の分はどうする?」
「グルル………」
何を取るかで悩んでいるらしく、頭を抱えて唸っとる。ペルが取れるスキルに幅がそんなに無いらしい上に今取っても意味が無い物が選択肢に出とるらしい。
「ふむ。何が出とるか教えてはもらえんか?何かしらの助言はできる筈じゃ。」
「クゥン………」
「良い様じゃな。では、まず数は幾つじゃ?」
ペルは地面に爪で線を2本引く。
「2つか……その内の1つは戦闘用かの?」
「グル」
ペルは頷きながら自身の手をペシペシと叩く。
「格闘か爪か。」
するとペルは伏せの状態から座る態勢になり自身の後ろ脚を指す。つまり蹴り……か?
と言う事は格闘じゃな。
これが爪ならば悩みにくいのじゃが、格闘となると話は変わる。
確かに熊は後ろ脚で立つ事は出来るがその状態から蹴りは出せん。出来たらそれは全く届かんし威力も無い。拳だけなら意味があるじゃろうがアッパーとフック、裏拳以外の攻撃方法を熊の骨格では流石に無理がある。
つまり微妙なんじゃな。
「ふむ、もう1つは戦闘用以外か?」
「グル」
「それは何じゃ?ワシの生活魔法みたいに役立つもんかの?」
ペルは少し悩むと自分の喉を指差す。
どうみても自分の喉を突いとる様にしか見えんが………もしや?
「ハズレたらすまんが、それは言語かの?」
「ガウ!」
どうやら当たりみたいじゃが格闘と言語、綺麗に分かれとるし確かに悩むのう。
戦闘用を覚えると中途半端でスキルを活かしにくいし、会話できれば意思の疎通がしやすいが正直無くても今の所、問題ない。
「ふむ………どうしても悩むならLv10まで待ってからでも遅くないのではないかの?」
「クゥン…………」
ペルは渋々諦めて10レベルになるのを待つみたいじゃな。
後は謎のスキル??じゃ。
「ペルや、??はどうじゃ?何かしら分かったかの?」
「グルル………」
やはり分からんか。
これが何か判別できれば取り様もあるんじゃがの。
「まぁ、仕方無いのう。それは分かるまで…………!」
何じゃ!今、背筋が凍りつく感じがしたぞ!ペルも感じたのか既に戦闘態勢………いや!あれは逃げ腰になっとる!
な、何じゃ………このおぞましい感覚は!
「………ガウ!」
「うおっ!」
ペルがワシを急に咥え、自分の背に乗せると同時に走り出す!
この方向は………川か!
その背の上でそう理解すると同時にワシ等がいた場所が爆ぜた!
「なっ………!」
何が起きたんじゃ?
気が付くとワシは地面に這いつくばって倒れていた。体の至る所が痛むが、歯を食いしばって無理矢理起き上がる。
辺りを見回すとさっきの爆発の余波でワシ等は弾き飛ばされたみたいでさっきまで森の側に居ったのに直ぐ側に川が流れ後ろには滝がその存在を主張する様に轟音を立てていた。
「………10m近く飛ばされたのか……そうじゃ!ペルは!」
慌てて辺りを見回すと、森の方に倒れておったので直ぐ様ステータスを確認すると少しHPが減っとるが大した事は無い。むしろワシの方が割合的にダメージがでかい。
とは言え、ペルが大した事は無かったのでほっと胸を撫で下ろす。
「ペル!今向かうからの!」
そう言ってペルの方に向かおうとした瞬間、眩い光が視界を端に見えた。
いかん!今ペルがワシの方に来ると共倒れになってしまう!
「スロウ!」
ワシは空かさずスロウの魔法をペルにかけた。
動きが鈍くなったペルは困惑した表情を浮かべた。
「クイッ…………」
ペルがこの後直ぐに逃げられる様にクイックをかけ直したのじゃが、発動と同時にワシは光に飲まれた。
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