まぁ、待て

謎のミイラを倒したのじゃが、特に忌避感や吐き気なぞは特に感じなかったの。

多分じゃがサバイバルのスキルの恩恵かと思うんじゃ。

いくらワシが元老人とは言え、戦時中はまだ5歳じゃったし田舎に疎開しとったからの。

そう言うゲームもしてはいたが、ゲームと現実は別じゃからの。

つまり生き抜く為には吐いてなんぞおれん!と言う事じゃな。


「ふむ………刃こぼれは酷いが研げば使えるかの?」


倒したミイラの持っていた剣を拾い、ワシと熊はミイラの死体(?)を埋めてキャンプを再開する。


「さて、試してみるかの。」


テーブル代わりに使っている石に生活魔法をかけ、更に固くなだらかにすると水を出しつつ剣を研いでいく。

シャー……シャー……と森に剣を研ぐ音が響きわたる。

どれ程経ったのか、何時の間にか日はどっぷり暮れていた。


「あ……いかん、集中し過ぎたわい。熊よ、すまん。今から飯を………お?」


そこには血抜きと内蔵処理が終わった魚とウサギが熊によって物干し台にぶら下がっとった。

よく見ると魚は尻尾にウサギは足の方にそれぞれほじくった様な穴が開いており、そこに何時も血抜きの為に枝で作った物干し竿が無理矢理通されておった。

ワシが唖然としとると全身ずぶ濡れの熊がのっしのっしと帰ってきよった。

熊は体をぶるんと震わせ体の水気を至る所へ飛ばして体を乾かす。


「これはお主が………?」


熊は肯定するかの様に首を縦に振る。

よく見ると干し台とかに咥えた跡があったり魚の開かれた切り口は牙や爪で引き裂いた跡がくっきり残っている。


「大変じゃったろうに……すまんのう………よう頑張ったの。」


ワシが研ぎに集中し過ぎた為に此奴には難しい(と言うか動物には無理に近い)事をさせてしもうた。

熊の奴は何て事無いみたいにしとるがの。

せめて濡れた毛を乾かしてやろうと生活魔法を掛けると獣臭や血の臭いが殆ど立ち込め無かった。

普通、獣は毛繕い以外は自身の体臭はマーキングや自身の存在を知らしめる為に消す何て事はしない。


「お前さん………何故水浴びを?」


「クゥーン………」


少し乾いた頭部を熊は甘える様な声を出しながら擦り寄せよった。

こんなに甘えてきた事は出会ってから今日まで無かったのじゃが………


「もしや、甘えたくてかのう?」


しかしこれはたまらん。

可愛いすぎじゃの。

ここまでの下準備をしてくれた此奴に何かしてやりたいんじゃが………今のワシに出来る事………仲間に、と言っても既にPTじゃし今の手持ちじゃあのう………


「うーん、なぁお前さん、提案なんじゃが、ワシの眷属にならんか?」


「クゥン?」


熊に提案とかどうかしてるとワシも思う。じゃが此奴はこっちの言う事を理解しとる様じゃし、問題は無いと思ったんじゃ。


「どうかの?」


熊は特に何を言うでもなくワシの膝に頭を乗っけてじっとしとる。どうやら良い様じゃ。

さて、後は眷属化の仕方じゃが……。

熊の頭を撫でながらステータス画面の時と同じ様に眷属化を意識しながら熊を見つめる。


〔この者を眷属にしますか?〕


お。アナウンスがでよったな。

勿論YESじゃ。


〔眷属化します〕


〔対象に名前が無い場合に限り命名する事ができます〕


〔命名しますか?〕


な、名前か。

考えとらんかったのう………

うーん、熊………冬眠……………春に起きてくる………お、そうじゃ!


「ペルセポネー………とかどうかいの?」


熊がピクッと反応し此方を見てくる。


「これはの、死者の国のじ………」


「ガァ!」


死者の辺りで熊が抗議らしき声を挙げたがワシは熊の頭を撫でて制する。


「まぁ、待て。最後まで聞け。」


「クゥ………」


「良いかの?この名は死者の国、冥界の女王の名での。冬の間は冥界に居るんじゃが春になると地上に出てきて豊穣を司る女神になる死と豊穣の女神の名じゃ。冬は地下で冬眠し春になると起きてくるお主等熊の生態と良く似とると思わんか?」


そこまで聞いて熊は嬉しかったのか再び顔を擦り寄せて来る。


「ん。問題無さそうじゃの。では、名前はペルセポネーじゃ。」


〔名称をペルセポネーに変更します〕


〔ペルセポネーを眷属として登録します〕


〔完了〕


〔ステータスにて確認してください〕


ふむ、では確認してみるとするかの。

ステータスを開くとちょっとした変化が確認できた。

何時の間にかワシのレベルが上がっとるの。多分、あのミイラみたいな奴を倒したからじゃな。

と言う事はこの世界、レベルが上がりやすいのでは?熟練度が5になるとレベルが上がり敵を倒しても上がるから、職業を変更できるならレベルが際限無く上がるかも?

ま、無理じゃろうが。

さて、眷属の項目に意識を集中して…………おお!ペルのステータスがわか……る………




なぁにこれ?




Lv9ペルセポネー 年齢:人間換算19

職業:熊 種族:熊

HP 93/93

MP 45/45

SP 72/72

筋 36 9+27+4

体 48 9+36+6+3

知 16 2+9+5

精 20 2+18

器 22 4+18

敏 14 5+9+4

運 15 4+9+6+2

スキル:野生10

    サバイバル2

    未修得

    ??

加護:テラペウテース

PT:トミオ・ヤマベ


職業:熊

ステータス修正:筋+3体+4知+1精+2器+2

        敏+1運+1


種族:熊

基本ステータス:筋+9体+9知+2精+2器+4

        敏+5運+4


テラペウテース(信徒)

女神の使徒の信徒。加護は使えないがステータスに修正が入る。

修正:全+アポストロスのLv/10


野生 10/10

熟練度MAXボーナス:筋+4体+6敏+4運+6


サバイバル 2/10


?? 1/1

熟練度MAXボーナス:知+5


嘘じゃ!

このステータスじゃとワシより頭が良いではないか!

………つまりあれじゃな。

どんな生物であってもレベルさえ高ければ人間なんぞ軽く凌駕できると言う事じゃな。

………いや、レベル差と言うのもあるのじゃろうな………良くみれば熟練度のレベル数と大元のレベルに違いがあるのは、戦闘での経験とスキルレベルの上昇との差なんじゃろうな。

………と、言う事はじゃ。

初級とは言え殆どのスキルを修得できるワシが熟練度を上げれば同じレベルであっても格段の差が生まれるのではないか?

後はどのタイミングでスキル選択が出来るかじゃな。

レベルの上限値も知りたい所じゃがそんなに先を気にしても仕方ないしのう。

しかしこのステータスは………



殴られたらワシは一発で死ぬのう………



それに野性があるのにサバイバルを修得しとるの………ふむ、じゃからか!見様見真似でワシがしとった事が拙いながらもあそこまで出来たんじゃな。

しかしこのスキルはなんじゃろうな。

1/1と言う事はかなりのレア物なんじゃろうが、知を上げるだけで効果もわからんとは何なんじゃ?


〔??は現在発動条件を満たしていません〕


集中してみてもコレじゃ。

謎じゃのう………

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