第4話 デスゲームの始まり
「んぁ、寝てたの……か?」
ぼんやりとする意識の中、目を擦り玲は起き上がる、地下発電所に電源を付けに行こうと歩き出してからの記憶が無かった。
何をして居たのか全く思い出せない、一先ず辺りを見回して見るが真っ暗だった。
メニューを開こうとするが何も起こらない、身につけて居る物も無ければ先程まで持っていた銃も無かった。
「なんなんだ此処は?」
辺りをキョロキョロと見回すがやはり何も無い……その時何か大きな物に当たる感覚があった。
「ん……?なんだこれ」
壁にしては凹凸がある……少し背伸びすると何やらツルツルする感触があった。
「誰だ俺の頭触ってる奴は」
「うぇ!?」
突然声がした事に玲は驚きで尻餅をつく、だがよく聞くと聞き覚えのある声だった。
「アド……ルフ?」
半信半疑ながらも名を聞いてみる、するとアドルフと呼ばれ男は嬉しそうに反応した。
「その声はレイか!まさかこんな所で再開するとはな!」
そう言い手探りで握手をしようとする、だが彼の手はアバターの胸を掴んだ。
「ちょ、アドルフ!」
思わず手を払いのける、だがその時違和感を感じた。
胸を触られた感触があった……このゲームはR18行為は禁止されて居る、アバターとは言え女性の胸を触るなど勿論垢バン対象……と言うかそもそも触る事すら出来ないはずだった。
だがアドルフは胸を触った……運営の管理下にあるゲームでは有り得ないはずだった。
先程からメニューが開けないのも不可解……少し嫌な気がした。
『全世界400名のβ版プレイヤー諸君、アンデットゲームへようこそ!』
謎の音声と共に辺りが明るくなる、ふと周りを見るとそこには日本だけでなく各国のβ版プレイヤーが真っ白な空間に集められて居た。
「なんだよこれは!早くゲームに戻せよ!!」
一人のプレイヤーが謎の声にヤジを飛ばす、すると謎の声は笑った。
『そう焦らずとも直ぐに戻してあげるよ、君達には人質となって貰います』
各国の言語に同時翻訳され言い放たれたその一言にヤジが止まった。
「人質……?」
『そうです、と言ってもただこの空間に囚われたのでは貴方方も面白くないと思います……なのでアンデットゲームの世界でサバイバルをして貰います』
「さ、サバイバルってふざけんなよ!向こうの身体はどうなるんだよ!!」
『ご安心を、向こうの身体は政府が責任を持って管理し延命措置を行います……とは言え死ぬ危険性がない訳ではありません、ゲーム中に死ねば向こうの世界の身体が死にます、後痛覚の機能とちょっとしたサプライズを付け加えたので楽しみにして下さいね』
そう言い音声は途切れる、あまりにも突然の出来事に皆それぞれ困惑し、恐怖に嘆いて居た。
無理もない、かく言う自分も絶望して居た。
ただのゲームの体験版をプレイして居た筈なのに気が付けば生死を賭けたデスゲームになって居る……勘弁して欲しかった。
死ぬのが怖い、だがそれと同時に現実さながらのゾンビワールドで生き残りを賭けたサバイバルが出来ると言うワクワクも何処かにあった。
「アドルフ、あんたは信用出来る……手を組もう」
「お、おう……だがどうする?このゲームひたすらサバイバルするだけのゲームだろ?終わりが無く無いか?」
アドルフの言葉に少し唇を噛む、確かにその通りだった。
謎の声は人質に取るとだけ言った、特に何をクリアしろとも言って居ない……ひたすらサバイバルをさせるつもりなのだろうか。
だが何の目的で……身代金目的は世界を敵にした時点で違うはず……一介の高校生に過ぎない自分には全く見当も付かなかった。
『ロードが完了しました、それじゃあアンデットゲーム……スタートです!』
謎の声と共に身体が光る、そして次の瞬間、玲は街中に立って居た。
辺りを見回すがアドルフの姿は無い、ふとポケットに手を突っ込むと絆創膏が入って居た。
「嘘……だよな?」
完全に忘れて居た、主人公気取りで色々と考えて居たが自分の役職は医者、初期装備は絆創膏……サバイバルに最も向かない役職だった。
背後から聞こえてくる唸り声に後ろを振り向く、其処にはゾンビが大量に迫って来て居た。
「マジか……幸先悪過ぎだろ!!」
玲は絆創膏を握り締めると全力で走り出す、メニューは開けるようになって居た。
ふとレベルを見ると4レベになって居た。
恐らくマンションで倒した分が加算されたのだろう……其処が引き継がれて居るのを考えると拠点にしようとして居たマンションにまだ物資が残っている筈だった。
一先ず筋力にステータスを全振りすると走るスピードが上がる、後ろから迫るゾンビ、鳴り響く銃声……何でこんな事になってしまったのだろうか。
日頃の行いが悪い訳では無い筈、運が悪いのだろうか……こんなデスゲームに巻き込まれしかもアバターは女性のまま、胸が邪魔でとても走れた物じゃなかった。
しかも役職は医者……ワクチンを作ろうにも知識レベルが低く作りかたが分からなかった。
「今は生き残るのが先決か……」
東京の街を走り抜け路地を上手く通り抜ける、そして少し高い位置にあるハシゴへ飛び手を伸ばすと何とか掴み這い上がった。
一気に身体を上げて足を掛けると下を見る、ゾンビが自分の事を食べたそうに手を伸ばして居た。
「そう言えばさプライズって何なんだろうな……」
謎の声が言って居たサプライズ……プレイヤーに有利な物では無さそうだった。
その証拠にゲーム開始当初とメニューも変わって無ければアイテム欄も増えて居ない……恐らく声の主はドSなのだろう。
こんな鬼畜ゲームを作っただけで無く閉じ込めて……生き残ったらぶん殴ってやるつもりだった。
玲はハシゴを上がり建物の屋上へ行くと辺りを見回す、街の至る所から煙が上がりまさに世紀末……と言った感じだった。
「取り敢えず……アドルフ生きててくれよ」
玲はグッと伸びをすると建物の屋上を伝い、20階建てのマンションへと向かった。
アンデットゲーム 餅の米 @mochi_nokome
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