第09話 クラシックなキーボードー02

「……」


「……うう」


先輩と葛城さんは、あのやりとり以来全くしゃべらない。俺は部室にいた時も、なんとか改善の手立てを考えたが全く思い浮かばず、

今も悪戦苦闘してる。


「いや~ テストも近いし頑張らなくきゃな、ねえ二人とも!」


俺はいつもの先輩のマネをして渾身の元気声を二人にぶっつけた。


「うう……」


「……」


「……あはは、二人とも勉強は大丈夫ですか?」


「……」


「あの……そ、その……」


俺はともかく少しでも何か話させようと、必死にしゃべりまくるが一向に二人はしゃべる気配がない。


「そそ、そのえっとえっと……はわわ!」


先輩のマネをする意識をしすぎたせいか、慌てた時の口調まで先輩のマネをしてしまった。


「……ぶ」


「え?」


「何、後輩君そんな変な口調しちゃって、ぶ!」


俺の自然に中途半端に似てない先輩の口調が刺さったのか、先輩は笑いを大いに吹き出す。


「先輩、何ですか変な口調て先輩の口調なんですよ」


「え、私?」


「ぷ……そうですよ」


「??」


どうやら先輩は自分の少し癖がある口調をすることを自覚していないらしい。

自覚してなかった先輩がツボにきたのか、葛城さんが笑った。


「え、え?そうかな……」


先輩は首を深く捻る。


「先輩………ぷっ」


「もう、柚菜ちゃんそんな事ないよ~」


「フフ、先輩ていつもはうはうて変な口調じゃないですか」


「もう恥ずかしいよお……」


「はあ……」


再び、楽しく会話しだした二人を見て俺は心からほっとして顔を綻ろばす。




「良かった二人とも!」


「え!」


「あ、ううん……」


「あ、あれ?」


俺が喜んで二人の戻った距離の間から顔を出すと、二人は意地を張ってかそれぞれそっぽを向く素振りをする。


「あ、あのその先輩……さっきはごめんなさい」


「え、ええ!いいよ、いいよ柚菜ちゃんの指摘は正しかったし……その……」


両者とも、改たまると申し訳なくなったのか二人とも謝り出した。しかし、どうも辿々しかったなので拉致が飽きそうになかったので俺は間に割って入った。


「ああもう、じれったいな!」


俺より少し小さめの茶色身のある葛城さんの腕と少し大きめで白身掛かった先輩の腕を無理やり握らせた。


「はい、おしまいです、おしまい!おしまい!」


俺は珍しく顔に筋を立て、勢いよくぷんすかとさせな二人の間で手を叩いて強制的に二人のぎこちなさを失くそうとする。


「茂明…」


「後輩君…」


「え、エエ…」


俺が手を叩きしばらくすると、二人は俺を初

めて見たみたい顔で見てくる。


「な、なんなんですか!!」


訳が分からず、マンボウの口みたく何回もポカーンとさせ、またお約束で理不尽に怒らせてしまったのだろうか…

俺は変に身構えて、目をぐっと瞑る。


「い、いや…そのありがと」


「え…」


と、思ったらまず葛城さんから改まってきて

視線を下げモジモジしながら礼を言われ、予想よりいい意味で斜め上の反応が返ってきたので俺は拍子抜けした声を出す。


「後輩君、ありがとーぎゅうう」


「ふ、ふえ!!」


そして、先輩は感謝を表したかったのか突然背中から抱きついてきた。それをされると俺はまたまた違う意味で拍子抜けした声をあげた。

俺はともかくこの状況が落ち着くまで落ち着く事にした。


「よし、二人ともテスト勉強も頑張るよ!」


「お!」


「お、お……!」


俺が落ち着こうと思った瞬間機嫌が二人とも直ったのか、スイッチが切り替わりなぜか熱血スポーツ漫画みたいな乗りになり無理やり大きな声を出ささせれた。

別に悪くはないのが、スイッチの入れ替わりが激しいのも少し考えようである。

俺の中の女子の謎はこれによりどんどんと深まるのであった。


「よし、テストも部活も両立させようね!」


謎が深ま中、先輩は頭に八巻でも巻いてそうな握り拳と声の圧で俺をさらに引き込もうとしてくる。


「そうですね頑張りましょう!」


そのふんと高鳴り闘志に燃えてる先輩に萌え、もう俺は謎とか自分の考えなどどうでも良くなり思い切り先輩の姿で反射的に返事をしてしまった。

すっかり俺はいつも通り先輩の虜だ。


「まあ、部活は明日からないんだけどね」


「むむー…」


「ぐぐっうー…」


俺たちは葛城さんに痛い所を突かれたと、新喜劇のようなオーバーリアクションをする。


「ま、まああれだよね、自主練習もおものれとの戦いだしそ、そのあれだよね!」


「そうですあれですあれ!」


「あれだよね!」


「あ、あれです!」


なんだろ勢い任せに乗りすぎたせいで微妙な感じになってしまった。それでも、俺と先輩は必死にテンションを保とうとする。


「はあ…二つとも自分との闘いたがら必死に頑張るまたいなそんな感じじゃないの?」


葛城さんが呆れてどうでもよさそうな声で、俺たちに適当な声とは裏腹で的確な答えをくれた。


「そう、それそれ!」


「うん、それですね先輩!」


「あたんら調子のいい奴らね」


俺と先輩が会話を弾ませ合い、葛城さんはそのテンションに呆れながらも合わせてくれてその姿は本当にすっかりいつもの俺達だ。



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BEAT of DAYS  @tomu363

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