ダンジョンマスター
アレから、更に数週間の時間が流れた。 ダンジョンを彷徨い、魔物を刈りつつ、アナライズでダンジョンマスターを探すが、未だに桁外れに強い魔力を持った魔物とは出会っていない。
「シュヴァリエ、聞きたいんだが、これだけダンジョン探索しておいて見つからないってことは、もうダンジョンマスターを倒している可能性があるんじゃないか?」
(ある訳ねぇだろ。 アナライズを使う前のお前が、ダンジョンマスターと出会っていたのならば、瞬殺されるわ!!)
魔王が即答する。 やけに自信がある声色だったので、本当にまだ出会っていないのだろう。
「そうかぁ。 じゃあ純粋にダンジョンが広すぎて見つからないのか」
これだけの時間を割いて、本腰を入れて探しているにもかかわらず、成果が出ないのは素直に堪える。
(確かに広いからな、見つからなくても仕方がないのかもしれないが、ただ広いっていうのがタチが悪い。 ゲームならクソゲー認定してやるくらいに手抜きで作ってやがる)
イベントぐらいあってもいいだろうと、毎度のことながら意味の分からない言葉を発する魔王に対してスルーを決め込む。 しかし、グチグチと文句を言っている魔王の言葉は止まる気配がなかった。 1人でいるときは魔王の声に救われた時もあったが、今は、ただただ、ウザイ。 なので、無理やり話題を変更する事にした。
「……ところで、ふと思ったんだが、これだけダンジョンが広いなら、ダンジョンマスターを倒しても、地上へ無事に出れるのだろうか? 下手したら、脱出するまでに、年単位で時間がかかるとかは……流石に無いよな?」
(ありえなくはないな)
「マジで?」
(いや、だって考えてみろよ。 ただでさえ同じような道しかないのに、方向感覚がマヒした状態で、無事に地上へ出れると思うか? しかも膨大な広さだぞ、簡単には出れんだろ)
「……そうだよなぁ」
ダンジョンマスターを倒してからも、この辛気臭い洞窟を探索することが続くのかと思うと気が滅入る。 思わずため息を吐くと、周囲を探索していたネクロちゃんが慌てた様子で戻って来た。
「お帰りネクロちゃん。 何かあったのかい?」
「師匠!! なんか凄いものを見つけました!! ちょっと来てもらえますか」
「凄い物?」
ネクロちゃんは、よほど興奮していたのか、俺の手を引きながら案内する。 何だろう、と思いながらネクロちゃんに、付いて行くと、案内された先には、見上げるほどの巨大な門があった。
「確かに、すげぇ。 何だコレ?」
今までに見なかったような異質の光景に思わず首をひねる。 見ると、ネクロちゃんも同じように、首をひねっていたが、初めての洞窟での変化に、どことなく嬉しそうだった。 そんな中、唯一違う反応を示したのは魔王である。
(なるほど、この世界の魔王もゲーム脳か)
魔王から聞きなれた、ゲームという単語が飛び出してきた時点で、嫌な予感しかしない。 また、よからぬことでも始まるのだろうか。
「シュヴァリエ、、コレは何なんだ? 大体のあたりはついているんだろ? 教えてくれ」
(ゲームだよ、ゲーム。 簡単に言うと、この先にダンジョンマスターがいるってことだ)
「何故? ダンジョンマスターとは閉じ込められているものなのか?」
(雰囲気作りだろ? そっちの方が盛り上がる)
意味が分からないが、ゲームというワードが関することに関しては、魔王の言うことは、大体正しい。 理解はできないが、そういうものだと納得するしかないだろう。
「師匠、この先にいるんですね」
俺と魔王の会話を聞いていたのか、ネクロちゃんは、大体のことは察したようだ。 表情が緊張で強張っているように見える。
「そうだ、ダンジョンマスターが、この先にいるらしいぞ。 心の準備は大丈夫かい?」
「大丈夫です。 どんなに強い敵だって師匠がきっと何とかしてくれます。 今までだって、そうだったんですから」
覚悟を決めた表情を向けて声を張るネクロちゃん。 その発言を聞いて、全面的に信頼してもらうのは嬉しいけど、今はその期待が重すぎる。 大体、俺はネクロちゃんに何かしたっけ? 心当たりが、全くないんだけど。
「分かった、じゃあ開けるぞ。 警戒は怠るなよ」
俺の言葉に強く頷いたネクロちゃんを見て、重すぎる期待でキリキリと胃が痛むのを感じながら、俺は巨大な門を開けた。
初めての異世界は、魔王と共に けんざぶろう @kenzaburou
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